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目が悪い女はキャリーになれない


メガネ女子という言葉は流行って久しいが、これは一定の度数を超えるとこの呼称を与えてもらえなくなる。視力Dの私の方が、Bごときの女よりよっぽどメガネ女子なのに、分厚いレンズを通して、中の視界はゆがみ、目が通常時よりも小さく見えている私は、かわいげのないただの眼鏡所持者だ。
眼鏡所持者の一日はまずメガネを探すことから始まり、コンタクトを外して終了する。もしもあなたがこの生活に共感を覚えるのなら、もうSATCのキャリーに憧れるのはやめなさい。

SATCの見どころは彼女たちの華麗なる男性遍歴だ。タリバンが見たら腰を抜かすほどのほぼ裸のような格好で出会いの場に繰り出し、様々な男性と恋をする。初めて見たのは高校生の時だったが、朝起きて昨晩クラブで出会った男と起き抜けにキスをする、というようなシーンには憧れを覚えた。しかしすぐにこれは私の人生には存在しえないと分かった。私はメガネをかけているからだ。
目が悪い者の最大の障壁はワンナイト・ラブだ。クラブへ行き、いい感じの男の子に出会い、「今日はそのまま家に行こうかしら」なんて思ったとき、裸眼女ならなにも考えずにおうちへ行くだろう。しかし、悲しいかな、コンタクト女は一度コンビニへ寄る必要がある。コンタクト洗浄液とケースを買うためだ。クラブへ行くバッグなんて携帯がギリ入るぐらいの大きさだろう。洗浄液とケースなんぞ入るわけがない。5円払って半透明のプラスチックバッグを買い、手首にひっさげながらおうちへ向かわなければならない。絵にならないことこの上ない。
おうちについてコトをすませてからは、いそいそと洗面所へ向かい、目ん玉ひんむいてコンタクトを取り出し、大事そうに洗浄しケースの中に入れる。エッチしてそのまま入眠なんてしようものなら、翌朝目はパリパリ、充血し、昨晩の魔法から彼は目が覚めるだろう。

コンタクトは女のラブライフに休符を置き、流れるような男女の旋律を途切れさせる。
もっとも、一点だけコンタクトが有利に働く瞬間がある。朝、昨晩のお楽しみから目が覚め、横には輪郭がぼやけた男が眠っているとき、このときばかりは少しぼやけた景色の方が都合がいい。朝日の中、コンタクトをつけてくっきりとした視界の中で昨晩の獲物を見ると、こんなものを食してしまった自分に腹が立つからだ。
これがコンタクト女が裸眼女に勝利する唯一の瞬間である。彼の目が覚める前にコンタクトケースと洗浄液をもって家を出、外でコンタクトをつけましょう。見たくないものは見なくできる目を、私たちは賢く使わなければなりません。


P.S. あらかじめ替えのコンタクトをもっていけばという人もいるかもしれません。でもあらかじめお持ち帰りを予想してる女なんて眼鏡所持者より可愛げがないと思いませんか。

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