海が怖くなったこと
私の好きなアーティストは、他人を救うために自分の命を犠牲にした方だった。
その方の没後から1年経った。
あの日を私はきっと、この先老いて認知症になっても忘れないだろう。
その1ヶ月以上前から、私は友人と海を散策しようと旅行を計画していた。
浜辺で拾える桜貝がどうしても欲しかったのだ。
ワクワクしていた、ドキドキしていた。
そしてあの訃報、頭から全ての言葉が消えた。
どうして? 何があったの?
心配させるわけにはいかないと、旅行には行った。
だが、海を間近にして私は鳥肌が立った。
まだ梅雨の名残りがある7月、曇って灰色の海が怖かった。
そして、しばらくして事のあらましを聞いた。
私が敬愛して止まない方が命を賭して救ったひとなのに、その人たちに強い憎しみさえ憶えた。
どうして? なんで? 嵐が近いはずだったよね?何で海に行ったの?
責めたって何にもならないけれど、今なお私はその人たちを許せていないのだ。
台風が近かったり、波の荒い海に入る人を見る度に私は
「あなた達の勝手な都合で、犠牲を出すつもりか」
と激しい怒りを募らせていくのだ。
結果的に何が言いたいかというと、海に行くときは必ず天候も体調も準備も万全を期した状態で、海のレジャーを楽しんでほしいとの事だった。
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