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歩く三蔵法師を身近に感じる 藤田美術館

はじめに

大阪の藤田美術館に行ってきました。
古美術の蒐集で知られています。展示替えも年に何回か行われるようです。
今回の展示で見ることができたのは、平安時代にお坊さんが行進するときに使った祭具でした。実際にどう使われたかを描いた絵巻物と一緒に見ました。

美術館への入り方

入館方法が現代的でした。
まず、建物に入るとカフェのようなものはあるのですが、美術館の入口のようなものがありません。チケットカウンターもありません。
蔵の厚い扉のようなものがあり、この中が美術館かな?と思い入ろうとすると、係の人がやって来ます。扉の前で係の人と立ち話をしながら入館手続をします。
初めてだとちょっと戸惑うかもしれませんが、斬新です。

左の黒い扉が美術館の入口。

美術館の中

中は明かりが限られた暗めの空間になっています。お客さんどうしの話し声が聞こえる以外は音もありません。そういう中で、展示品がスポットライトに照らされています。
落ち着いて鑑賞することができます。

屏風や茶釜など、さまざまな展示品がありましたが、今回興味深かったのが、こちら。
鎌倉時代に描かれた絵巻物です。

国宝 玄奘三蔵絵 第五巻第六段 鎌倉時代

玄奘三蔵とは三蔵法師のことです。唐の時代にインドから経典を持ち帰りました。この、玄奘三蔵が経典を持ち帰り唐に仏教を広めていった様子が絵巻物になっています。
日本の仏教の基礎は遣唐使によって唐からもたらされた仏典によって形作られましたが、その元をたどると玄奘三蔵の経典に行き着きます。そういう意味では、玄奘三蔵は日本の仏教にとっても重要な人物です。
上の絵巻物では、玄奘三蔵が宮殿まで歩いていく様子が描かれています。左側の赤い袈裟を来たお坊さんが玄奘三蔵です。

玄奘三蔵の前にあるくお坊さんは、花を撒いています(散華というそうです)。

また、後に続くお付きの人が旗のようなもの(幡といいます)を持って、玄奘三蔵が来るのを知らせています。

玄奘三蔵は唐の人ですが、この絵巻物が描かれたのは日本です。この風景は当時の日本の実際に様子に基づいていると思われます。

この絵巻物にも描かれたような、お坊さんが歩くときに散華で使う花籠やお付きの人の掲げる幡が残されていて、見ることができます。どちらもとても繊細です。

重文 綾張竹華籠 平安時代
重文 錦幡 (赤地蓮花蝶文) 室町時代

実際に残されたものを見ると、絵に描かれたことをより身近に思えます。
遠い時代と現在がつながっていることを感じさせられます。

おわりに

藤田美術館の庭園も素晴らしいです。かなりの広さで、お寺にあるような塔もあったりと、散策していると大阪の中心地にいることを忘れさせられます。

これぞ日本といった風景。落ち着きます。
この塔も美術館の蒐集品です。


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