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004.元横浜銀行本店別館(旧第一銀行横浜支店)

≪3.生糸貿易をささえた横浜の洋館・建造物004/馬車道通り≫
*大オーダーのバルコニーを持つ正面は昭和4(1929)年に建造された。
後ろの半分は解体し復元したもの。奥の高さ119メートルの高層オフィスビル「アイランドタワー」が建設された際に1階にはめ込まれた。
 
 横浜の中心部を元町-中華街入口-KAAT-県庁舎-第二合同庁舎と南東から北西にタテに抜く通りを本町通りと言いますが、この通りを南から上ると第二合同庁舎(旧生糸検査所)の前で、右:みなとみらい大通り、左:桜木町駅に出る本町通り(新横浜通り)に、Yの字に分かれます。
 そのYに分かれた間にどっしりと鎮座しているのが、現在はUR(独立行政法人都市再生機構)が運営する高さ119mの超高層オフィスビル、アイランドタワーです。
 アイランドタワーの超高層オフィスビルの低層階部分にはめ込まれているこの建物は、2,3階を通して吹き抜けのトスカーナ風の大オーダーのバルコニーを持つ、昭和4(1929)年に建てられた第一銀行横浜支店で、1980年以来、横浜銀行本店別館として使用されてきたものです。ビル群の中に突然現れるどっしりした存在感は圧倒的です。
 場所は、旧生糸検査所、帝産倉庫などの、向かい。
 平成14(2002)年、旧生糸検査所などのある北仲通り地区の地域開発に伴って、170メートルほど離れた所にあった横浜銀行本店別館のバルコニーなどを含む正面部分を、ジャッキアップして移動させ、現在の位置にもってきて、復元して改装し、超高層のオフィスビルの1階にくっつけたものです。
 バルコニー部分は、旧第一銀行当時の建物をそのまま移動させていますが、残りの部分は、かつての意匠を活かして、分解し、石造りの重厚な構えで大きな窓と付け柱のようなデザインを復元しています。そして、裏側に隣接して近代的な超高層オフィスビルを建設しました。
 その意味では、正面の先端部分は、歴史的な建造物だが、残りは、復元されたものと、まったくい新しい部分を複合した建物ということになります。バルコニー部分の設計は清水組の西村好時、高層部分は槙文彦。現在は通りを隔てて向かいに横浜市役所の新庁舎が建てられています。

内部は、床も柱も壁も天井も乳白色。3階まではオリジナルの様式をそのまま生かして吹き抜けに復元。まるでカトリック教会のよう。カフェやイベントスペースとして利用されています。

移転し、復元された平成15年(2003年)に横浜市の歴史的建造物に認定されています。
 復元された部分は、2階吹き抜けのホールになっており、現在はヨコハマ創造都市センター (YCC) の施設として、通常はカフェとして営業、また結婚式場などの催事などにも利用されています。ウエディングドレスがよく似合う施設、としても注目されています。
 ロケーションとして、みなとみらい線の馬車道駅に直結していて便利なのですが、三角形の両側を交通量の比較的多い道路が走っており、置き去られた島のようにぽつんと離れて建っていて、周囲と隔絶された、とってつけた感が否めないのは残念です。
違和感の原因は、存在感が大きすぎて、なかなか周囲の建物に溶け込めないことにあるのかもしれません。建物そのもののせいではなく、利用の仕方の問題でしょう。
 本町通りには、典型的な銀行建築として用いられている、神殿風の大オーダーのファサードをつけた銀行がたくさん並ぶので、違和感がなさそうに思えますが、さすがにトスカーナ風のバルコニーは、別格です。周囲とは隔絶されたデザインなので、Yの字の島に持ってきたと思われす。それでもあまりの存在感に浮き上がっていて、ここだけが別世界という印象を受けてしまいます。

正面は三方に出入り口を配して石造りながら、オープンなイメージを醸している。
扉の装飾や窓の周辺なども、シンプルな意匠だけに落ち着いている。

正面の円形につき出たバルコニー1階にある3つの出入り口ドアが、オープンなイメージを出しています。2階部分が、外に向って開かれたバルコニーになっています。このオープンナテラスは利用される機会がなくて残念です。前のすこしスペースがあるので、何かうまい利用法を考えたいと思いますが、通り道というわけでもないロケーション、アクセスが大きな課題かもしれません。
●所在地:横浜市中区本町6丁目50-1

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