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04.適材適所――素材を生かすということ

                       (法隆寺の東院伽藍)
 法隆寺、薬師寺が作られたのが600-700年代、それから1300年が経っています。法隆寺はこれまでに何度か大改修が行われ、薬師寺は今でも継続中ですが、一大改築・再建事業が進行中です。
最近は、改築、再建で、耐震建築が課題になっています。寺社も同様で、そのために、鉄筋コンクリート造りなどが求められていますが、「1000年もたせる寺社を建てるならヒノキしかない」と西岡棟梁は言います。
 
 耐震と言っても、コンクリートや鉄はせいぜい100年で、1000年を持たせる建築素材となると、いまでも、ヒノキしかないそうです。
 
 石も、時代がたてば風化していきますが、ヒノキは使い方さえしっかりすれば、1000年経っても、生き続けて香りもなくならないといいます。
 
 鋸で切らずに、木のクセに合わせてナタで割り、ヤリ鉋(カンナ)で表面を仕上げ、山で生えていた方角そのままに木材を利用することで、法隆寺などの建物は1000年持っているとか。
 
 基本は、自然のまま、木に合わせて使う、つまり適材適所ということです。
 
 丸太をノコギリで切ってしまうと、木目を無視して製材することになり、乾燥させた後にクセが出てくるので、建物が曲がり、組み付け面に無理がかかる。
 
 電気ノコで仕上げると、一見きれいに見えるけれど、表面は木の細胞が千切られたようになり、風雨にさらされると水が蒸発せずに残り、そこから腐っていく。
 南を向いていた木は、太陽にあたって鍛えられているので、南向きに使っても問題ないが、北側を向いていた木を南面に使うと、太陽に照らされて乾燥が進み、すぐに傷んでしまうという。
 
 木のクセに合わせて木材を加工すると、ひとつひとつの部材は太さも長さもマチマチで、現場ではそれ調整しながら組み付けていく高度な技が必要になります。
 
 これは一人一人の技術者が高い技能を持っていないとできないことで、薬師寺を再建した西岡棟梁は、残念ながら規格化したパーツを仕上げて組み上げるしかなかったと残念がっています。
 
 見て分かる通り法隆寺の東院伽藍の蟇股(カエルまた:柱の間で上の梁を支える板)は、一つ一つバラバラなのですが、不揃いが故に強度も強く、規格品ではない落ち着きのようなものがあります。木造の建築物が1000年を耐えているのはそうした理由があるのですね。


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