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7-9. 1尺のモノサシの真ん中は、左右から5寸のところではない。左右から4寸ずつとった、残りの2寸の間に真ん中がある。

本田技研工業創立者 本田宗一郎

 1尺の真ん中は左右から5寸のところだ。これは数学的な真実。
が、本田宗一郎は現実にはそうではないと言う。
その意図は、別のところにあった。
いわく「そう考えるから、まとまる話もまとまらない」。
つまり、人と人との商取引などでの交渉のあり方を言っているのである。

「左右から4寸ずつ行って、残りの2寸の部分に真ん中がある。そうしないと話し合いができない。仲裁に入ることもできない。5寸、5寸を正しいとすると、他に選択肢はなくなる。衝突しちゃう」

 お互いが納得する余地を残さないと、話は進展しないということである。
 そういえば、日本人の取引には悲愴感すらある。
それは、真ん中はここ、と線引きをして、それ以上行けば勝ち、少しでも譲歩すると負け、と勝負事にもっていってしまうからだ。だから、どうしても勝たなければと思ってしまう。
 もっと余裕を持って、幅を持って考えようというのが本田の意見である。

 本田は、もっとジョークを使うようになれと言う。ジョークは、1尺のものさしの真ん中に余裕を持たせることに通じているというのだろう。
 この助言、アバウトなようでこの話の中にはもう一つの合理もありそうだ。何より本田という人の包容力、余裕、大きさを感じさせるではないか。

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