キックバック問題を考える
安倍派のパーティー券収入のキックバック(還流)問題。安倍派幹部まで問題が及び大規模な政治事件となる可能性も出てきた。発端は政治資金収支報告書の告発のようだ。
野田元首相は11月22日の予算委員会で「政治資金の不透明な動き、不記載の問題などについて、私は総理からは危機感を感じられませんでした。適切な対応の内容は、要はミスをしたならばそれを修正すればいいという、うっかりミスが続いているかのような言い方ですよね」と岸田首相を追及している。
告発で岸田派に加え、茂木派と安倍派が、収支報告書に記載が必要な20万円を超える支出をした団体などの名前の記載漏れがあったとして、収支報告書を訂正。政治資金収支報告書の訂正は頻繁で(それもどうかと思う)この時点では大きく報道はされていなかったようだ。
総務省が発表した2022年分の政治資金収支報告書では、自民党の6つの派閥の収入総額はおよそ11億8400万円で、そのうち政治資金パーティーはおよそ9億2300万円となり、最大の収入源である。6つの派閥のうち、最も収入が多かったのは麻生派で、岸田派、二階派、茂木派と続く。安倍派は2018~22年に年1回政治資金パーティーを開き、計約6億6000万円の収入が報告書に記載されているが、直近3年間の収入は1億円前後で、100人を超える最大勢力の安倍派は告発された5派閥で最も少ない。この時点で派閥の勢力と収入が比例していないのは不思議と感じる。
キックバックが一斉に報じられたのは11月30日頃。
12月1日の毎日新聞で
安倍派の塩谷立座長は11月30日にキックバックの慣習があるのか記者団から問われ「そういう話はあったと思う」と述べたが、同日中に慌てて撤回。お粗末な展開となった。
12月5日には二階派の桜田義孝元五輪相が11月22日に派閥の退会届を提出したことが報じられる。それによると「パー券さばくの大変。財政的に厳しくて。ノルマが300枚。あと月5万円の会費と。私にとってはね、貧乏人にとっては大変なこと」とし、300枚の販売ノルマを達成するのが難しいことを理由だという。 政治資金パーティー自体については「極めてクリーンでいい制度だ」と評している。
キックバック自体は認めている議員がほかにもおり、この制度は常態化していたのだろう。正直者桜田氏の発言は実情に近いとみられ塩谷座長の撤回はただ混乱を招いただけではないか。
自民の各派閥の政治資金パーティーの券は1枚2万円が相場で、若手で数十枚、大臣経験者などになると数百枚のノルマともいう。ノルマを達成できなかった分は、議員が自腹で補填もあるようだ。
秘書の証言として
安倍派では少なくとも5人の議員がノルマを超えて集めた額を政治資金収支報告書に記載せず裏金にしていたともいわれ、数十人が関与という話もある。特に萩生田政調会長に近い池田佳隆元文科副大臣がキックバックの多数を占めているともいう。ノルマを超えるか超えないかは議員の人脈が大きく営業成績を競っているに近いのであろう。
これについて安倍派の実務を担う事務総長を務めていた松野官房長官、現在の高木毅事務総長も回答を避けているあたり深刻である。
最大派閥に権力や富が集中するのは容易に想像できること。過去ロッキード事件やリクルート事件での構図に近い。安倍であれば大丈夫という長期政権で積み重なった奢りとも思われる。また寄らば大樹とばかり安倍周辺に集まっていた議員も多数いるはず。
一連の問題によって更に派閥や自民党への金権政治が深まるだけに根が深いことである。統一教会、東京五輪汚職にしても安倍一強が招いたことで安倍の死によってすべて明るみとなった。安倍派は清和政策研究会が正式名称で政清人和(清廉な政治によって人民を穏やかにした)という故事が由来である。全容が明らかとなるか不明だが全く名称・精神に反する問題ばかり起こる自体、安倍政権の負の側面は大きい。
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