初場所の行方

中日終る。星争いは色々と動いた。まずは全勝の朝乃山敗れる。やはり大雑把な面が出てしまった。押しの玉鷲相手にのど輪を堪えて右を差したまではいいが、十分に組み止めず焦って前に出たか土俵際で玉鷲の掬い投げを食らい土俵下にゴロリ。玉鷲には何か余裕も感じられた。

横綱を目指す霧島も照ノ富士戦で騒がせた翔猿に飛び込まれあっけなく土俵を割る。これで2敗。今場所はあまり力強さを感じないながらも相手の力も利用して勝っていた印象。以前の霧島に近かった。横綱は厳しくなったか。

照ノ富士は竜電相手に長い相撲の末何とか勝った。しっかり組み止めての勝利は今場所初めてか。勝つには勝ったものの長くなっただけ膝や腰の消耗を感じる。これで6勝2敗。勝ち越しが見えひとまず引退の可能性はないか。

それ以上に6日目翔猿戦。照ノ富士は翔猿の引きいなし、けたぐりに慌てながらも抑え込み、最後は小手投げから体勢を崩し押し出した。 ダメ押し気味になり土俵下の翔猿をにらみつけた。

昨年名古屋場所3日目に腰を痛め、4日目から休場したが負けた相手が翔猿。 それだけに因縁の相手。照ノ富士としては膝を蹴られることより、張り手が目に入ったことがカチンときたようだ。「熱くなった自分が恥ずかしいなと思う」と冷静になっていたが照ノ富士も必死。翔猿は昨年の夏巡業で熱中症によって救急搬送されたが、その時の稽古相手が照ノ富士であった。


翔猿の相撲に近いのが1960年代の海乃山。腰が悪いため全く手をつかず、一気に突進する立ち合いが特徴で、相手に出ると見せかけてひくなどかなり老獪な相撲ぶり。土俵態度もふてぶてしかった。幕内ではけたぐり、けかえしを25回決めている。海乃山の場合足を飛ばして相手のバランスを崩してからの突き落としの合わせ技が見事だった。大鵬柏戸北の富士などが分かっていながらこの奇策に何度も苦杯をなめている。まさに名わき役。比較すると翔猿は足を飛ばすタイミングも今一つだった。昔の力士は技を繰り出す一瞬までタイミングを図っていた。まさに職人芸。

翔猿戦が若干物議をかもし、翌日どうかと思ったが正代に二本差されあっさり放り投げられた。正代の立ち合いもよかったが前日の相撲を引きずっていたのではないか。照ノ富士はやはり評価を気にしてる。正代もここのところ凡々たる土俵だったが久々に真価を見せた。やる気モードの正代は最強クラスなのだろう。

これで1敗が4人。大関を狙う琴ノ若もいるが話題にあまり上がらないのはどういうことか。霧島の横綱もそうだが場所の目玉となるべきものがあるのに陰に隠れている。朝乃山ばかりクローズアップされているようだ。元大関で富山県というのもあるがどうなのか。朝乃山の場合、懲戒処分を受けたことへの同情もあるのだろうが少し異常にも感じる。

近年は番付や成績よりも力士個人ばかり注目するようになった。これはやはりアベマテレビでの中継が大きいのだろう。同チャンネルはクイズや幕下以下の力士の人気ランキングなども特集するが、特に幕下以下は取的、養成員でありあまり表に出るべきではない。NHKもその傾向に乗るのか、ひたすら特定の力士の話題を持ち出すことがある。酷い時は土俵の力士の話をほとんどせず無関係の話題をしている。以前と比べ過去の名勝負や解説の親方の現役時の取組の放送は減った。どこかゆったりとテレビ桟敷という雰囲気はなくなってきている。本来番付の地位やそれに見合う成績、内容があってこそである。

7日目の行司の転倒などアクシデントも多々あり、どこか相撲界全体が歪んでいるのではないか。今場所休場が相次ぎ既に不戦が5つ。新入幕大の里の奮闘はめざましいがいまこそ引き締めてほしい。

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