見出し画像

執念の横綱

名古屋場所。6日目で照ノ富士が固いという状況から一転、最後の最後まで目まぐるしい展開となった。

優勝は照ノ富士隆の勝の両者に絞られ迎えた千秋楽。隆の勝は大の里が引くところ崩れながらも一気に出て勝利。照ノ富士を待つ状況。


そして照ノ富士。琴桜は6回とも負けたこともなく安牌であった。しかし照ノ富士はフワッと立って右左とも抱える形で無造作に組み止めて出るところ、琴櫻が土俵際でうまく回り込み上手から出し投げ。照ノ富士はまったく残せず脆く土俵に這った。これで決定戦。あっけなく敗れたあたりひざの状態が相当悪くみえた。これでは決定戦もどうかともいえたが…


そして決定戦。隆の勝のど輪気味に突き放しからもろ差しの形で、照ノ富士抱える形で組み止める。しかし隆の勝は構わず強引に寄って出た。照ノ富士も苦しく後退したがそのすきに右をすかさず巻き替えた、こうなると照の万全の形。赤房下方向に左上手をがっちりつかんで右の腕を返しながら寄り切った。照の執念が見えた。


隆の勝が優勝なれば初日から2連敗での優勝、13日目で2差をつけながら逆転での優勝(照ノ富士からみると逆転される)という新記録達成であったがならなかった。


元々この展開は豊昇龍休場によるものであった。出場であれば14日目に照と豊の可能性高く、8敗という対戦成績からみると勝利は予想しにくい。照がこのまま逃げきる可能性が高かった。しかし一転休場。これにより3敗で浮上した隆の勝が急遽抜擢となった。実力三役の上照には合口がよいだけ大一番に会心の相撲となった。しかし単なる独走の優勝ではなく、黒星を喫しながらも横綱が最後は締めるという劇的な展開となった。平坦に見えた今場所にスパイスを入れることになった。


照ノ富士は10回の大台。一つの目標だったようだ。進退の話もあるが大関以下がこれでは辞めるにやめられないのもあるか。しかし大関以下は潰しあいである。またもや大関は2人になった。

舞の海が「今場所に進退を懸けていたのかもしれないですね」「もしかすると進退を懸けたからこそ、ここまでできたんじゃないかなと思いますよね」と話していたが、先場所初日に大の里に敗れての休場で厳しさはあった。横審は秋場所まで静観というがそれを前に自ら…という可能性もあっただろう。


貴景勝は10敗。湘南乃海に変化気味の動きから上手投げ。腹ばいになり土俵の砂がべっとりついた。最後の2日は気持ちが抜けたようだった。

琴櫻は照ノ富士に初勝利となった。結果10勝にこぎつけたが中身は伴っているか微妙である。攻めが遅く相手の出方を待っているような相撲が多い。照戦も土俵際の逆転であった。

豊昇龍は優勝争いに加わりながら休場。柔道では一本のような相撲が多いが柔道の癖が抜けないようだ。性格的にも投げつけることで勝利感もあるのだろう。 照とは大関昇進後対決がない。

大の里は9勝。山あり谷ありの場所であった。勝ち越しとはいえかなりの苦杯も舐め、プロの厳しさも知った場所だろう。しかし照ノ富士に勝利など要所で存在感は示した。大関の足掛かりとなるのだろうか。

三賞は大の里殊勲賞、隆の勝敢闘賞、平戸海技能賞に。活躍力士もみられたが星が拮抗したせいか最終的に埋もれてしまった。隆の勝は13日目に霧島と当たるまでノーマークといっていいほど。6日目で星の差2という混迷ぶりも大きく影響した。平戸海は大型力士の中でスピードとキレで一服の清涼感となる。どこまでいけるか。

つづく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?