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ココロココニアラズホリディ

 鎌倉の円覚寺を訪ねる。坐禅修行のため舎利殿拝観は叶わず。そのままライブ会場へ向かうことになった。ライブである。誰のライブかというと、インドから来たタブラ奏者のライブ。といっても三日前に友人に知らされるまで、存在すら知らなかった。遠くに住んでいて忙しい友人Sは、関東付近に住む僕に羨望の眼差しを向けた。彼の言う音楽に間違いはないということで、行くことにした。

誰が落としていったのか。


 歩いていた。目の前のベビーカーが段差を乗り越えるとき、衝撃でバキバキとタイヤのあたりが破損した。子供は無事なようだが、荷物が散乱したので、拾うのを手伝った。隣の男性は、あきらかにベビーカーのパーツとは思えないものまで拾って手渡していた。ベビーカーをひく母親はそんなことは気にせず、ペコペコとお辞儀をし、又された方は誇らしそうにして、円覚寺を出たところの人混みに紛れていった。何でも無い風景だった。一体どこに向かっているのか分からず右向け右して橋を渡る。さらに隣の趣ある石橋は門の正面にあるのに渡れなくなっていた。北鎌倉駅の混雑解消のためらしい。この橋の入口にかかる竹の竿には、カラスに注意と書いてあった。上は大樹の枝葉が空を覆っていた。一本にして鬱蒼とした雰囲気を醸す大樹にみぞおちのあたりがスッと冷えた。大樹を舐めるようにみ、振り返ると男性がカメラを構え、連れがそれをじっと覗いていた。この風景をどう捉えるか、大層こだわっているのかと思いきや、紫陽花を撮るのに僕が通り過ぎるのを待っているだけだった。通り過ぎると前から多くの人がやってきた。僕の存在を認めてもなお2列で歩いて来るので、僕は体の半分を茂みに埋めながらかろうじて避けるほかなかった。耳に虫が入って体が小刻みに震えた。ライブでも震えた。タブラとシタール。終わったあと友人にメッセージをくれというと、真摯に対応してくださった。アルナングシュ・チョウドリィ、演奏は素晴らしかった。演奏している表情がいい。僕は愛想が悪いので、せめて撮影をお願いするときだけでも、笑顔で反応もしっかりしようと思ったら、インド人とニヤニヤしながら微動する日本人といういまいちピンとこない動画が取れてしまった。友人Sには僕を切り除いて送った。

押す?引く?それともスライド?

 これが土曜で、日曜は映画を見て献血をして、買い物をした。大したことはなかったので特に書かないが、『関心領域』を観た。ナチス・ドイツについての本など、書店で物色して、服を買って帰った。しかし、一人で買い物をするのは物悲しい。高校にもにた感情を覚えたことを思い出した。せめて誰かとあーでもないこーでもないと言って過ごすほうがいいな。あな哀し。


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