沈黙する女性
ぎゅうぎゅう詰めの働き盛りの女性たちは誰一人声を出すことはない。
沈黙を保ちながら、揃って体を揺さぶられている。
誰かに見せる顔ではない、終始、無表情、無防備な顔、顔、顔、顔。
まぶた、頬、口角は重力に抗うことなく、必要最小限の表情筋を使い、かろうじて目を開けている。
戦闘前の顔に違いない。
朝の通勤時間帯、地下鉄に乗ると、隣の女性専用車両との間の扉が全開になっている。
男子禁制の秘密の空間が垣間見える。
女性たちは沈黙しているが、脳内は盛んに活動している。
これからのこと、個人的なことを思い思いに考えている。
たぶん
いくらでも言いたいことはある、お喋りしたいことはある、愚痴りたいことはある、でも、沈黙を守っている。
女性たちの頭上にマンガの吹き出しが浮かび上がり、言いたいことが読めたら面白い。
あ
それがnoteやインスタやXということか。
と、マヌケ面で女性車両を眺めているおじさんは考える。
美・サイレン~🎵
もう一丁
僕は今日も人波さけて
帰るだけですひとりだけで~🎵
かつて
「男子家を出ずれば七人の敵あり」
と言ったが、今は女性のほうがたくさんの敵と戦っている気がする。