映画『余命10年』(2022)

最近観た映画


『余命10年』(2022)
いやこれはさ、正直全然観る気がなくてでさ。
こういう余命ものって、なんかこう、泣かせるために作ってます、どうぞ泣いてくださいねみたいな目くばせがうっとうしいというか
あと、なんかひとの死が消耗品みたいになってるのが受け付けなくて。

けどだよ、この映画でちょうどいいなと思うのは、坂口健太郎が演じていた和人の存在の描き方だと思うんだ。
そらそうやんな、恋愛ものとして売ってるからな “he” は出てくるよな。
でもさだよ、彼の背景もあるから、桜吹ぶいて物語が動かされるんだけど、
彼が背負っているものをくちではほんのり語らせても、映像には一切出さなんだよ。
こういう居心地のよさったらないんだよね。

大抵この手の感動させにくるタイプはその物語内ですべての解決を試みるんだけどもさ、現実そうもいかんと思うわけで。
そのなかで、和人のうしろのものは何にも解決しないままに、茉莉(小松奈菜のね)に救われちゃって、その現実を生きることにするっていうのが、私はなんかいいと思うんだな。

あと、茉莉に関して言えば、
「ズルい。」
ってこの言い方しかないよなあとか、
同窓会の、その場にはいるのに、会話してるのに、輪の中にはいない、みたいのとかさ。
知ってるそれそれなんだよな。
久しぶりの友だち三人組にかけ寄られるのを受け止めるのとかさ、予告で綺麗な構図だなとか思うけど、でもなんでそういう構図になるんだ?とか、実はいつも飲んでいるのは麦茶だなとか、いろはすを必ず持ち歩いてるのは、それが350mlなのはなぜ?とか。
そういうこまかい作り込んでる部分がとてもうれしくて、なんかよかったんだよね。

あとは、茉莉が冒頭で贈られたカメラをずっと回してて、
それは彼女がとっておきたい記憶だからなんだけど、それもまたさっきの構図と同じように、カメラを回すからこその距離感もあったりとかするわけで。
その映像に収められるのは、めぐる季節で、風と舞う桜、落ち葉、つづいていく日々。そして繰り返される真上からのカット。いやもうさあ、そんなん風が吹くひと間のカットがとんでもなく素敵に見えちゃうよね。

蛇足になりそうなifがならないのは、画角とストーリーのつよさだとおもった。

あと洋次郎の曲がよかっただあああ
久しぶりだあ長い間聴いてなくてごめんなあ

でもって、この映画の写真集がめちゃくちゃによくて買ってしまっただ
この写真集、たあぶん花束の映画の写真集に関わってたひとが作ってると思うんだがたしかめておりゃせん


けどさあ、ひとっつだけざんねんなのは、なんでプロモーションに女の子が泣いてる映像ばっか使うのん。意図はわからなくもないけど、なんかそれだとちょっとなあ。かと言ってカップルで泣いてる映像出されても興ざめか。

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