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詩「南瓜」


一番 切れる包丁を手にして
南瓜の厚い皮に挑む

オレンジ色の甘そうな南瓜
あの日の
母の美味しい手料理と
父の面白い話が
記憶の中の
南瓜の甘さと共に
滑らかに頭の中によみがえ

私の頭の中の
記憶の引き出し

硬い南瓜を切るのも苦にならない
純で
しあわせで
何も疑う事がなかった
あの頃の私が
今の私に
微笑みかける
足早に
過ぎ去って行った
時間のせわしなさを思い出させるかの様に…

三角コーナーに捨てた
沢山の南瓜の大きい種が
南瓜の行き着く先を凝視する

あの頃
母が作ってくれた煮物とは
違う味だけど…
台所に出汁の香りが充満する
もっと一緒に料理すれば良かったな…
今なら
母の気持ちが分かる

南瓜の甘さに顔がほころび
大きな口で豪快にたいらげる
その顔を見つめているだけで
しあわせとは何かが
分かる様な気がするから…

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