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氷上の舞いに寄せて
はじめまして
羽風かおると申します。フィギュアスケートの鑑賞歴は20年です。
さて、フィギュアスケートの見どころは氷上で展開される回転や跳躍、スピード感のある流麗な身体表現にありますが、プログラムをじっくり鑑賞すると、世界の様々な芸術要素を取り込んだ多層的な舞踊といえます。魅力はどこからでも引き出すことができ、音楽、物語、多様なジャンルと融合する芸術作品となって観る者に何かを思い描かせ、悦びを与えてくれます。
スポーツ競技のフィギュアスケートでは、選手が技と表現力を競い、その得点で順位を争いますが、フィギュアスケートをアーティスティックスポーツと呼び、間テクスト性を指摘する研究(註1)があるように、フィギュアスケートは競技、芸術、エンターテイメントの要素で構成されているといえるでしょう。
古代ギリシアの弁論家ルキアノスは舞踊について、
”友よ、舞踊が観る者に悦びだけでなく恩恵をもたらすことを指摘しておこう”
“音楽とリズムの助けを借りて繰り広げられるいかなる踊りも、称賛されてしかるべきものなのだよ”
“ひねりや回転、跳躍や宙返りといった躍動感ある運動は、観る者にとっても楽しいものである” (註2)
と語り、その楽しさを伝えています。このような芸術論をたよりに、『氷上の舞いに寄せて』ではフィギュアスケートの競技の評価には立ち寄らず、芸術要素を鑑賞の中心とし、プログラム、パフォーマンス、音楽などの魅力を独自の視点で書いていきます。一緒に楽しんでください。
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註1:町田樹『アーティスティックスポーツ研究序説―フィギュアスケートを基軸とした創造と享受の文化論―』白水社、2020年、p.212
註2:
ルキアノス(120年頃-180年以降)ギリシアの弁論家・諷刺作家
佐藤真理恵「第6章 舞踊について ルキアノス」、加藤哲弘編『芸術教養シリーズ28 芸術理論古典文献アンソロジー 西洋篇』京都造形芸術大学東北芸術工科大学出版局藝術学舎、2014年、p.52、p.55
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