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レプリカ? モドキ?


Remington R1306 Full size reproduction
Type : 1 blade lock back folder
Blade : RWL34
Bolster/Handle : Stainless steel / stag
Blade Length : 3 1/2" (90mm),
Closed Length : 4 9/16" (116mm)


こんにちは。ナイフモドキメーカーのslow madeです。

久々にRemington R1306 full sizeのレプリカを作りました。
最近では各国の法律、いわゆる日本の銃刀法的なシバリが世界的にどんどん厳しくなっているようで(サイズの制約が厳しくなっているようです)
オールドスクールなフォルダーの中ではけっこう大ぶりなサイズのこのR1306 full sizeはなかなか注文来なくなりましたね。
3/4サイズや3”サイズの方が人気があります…

私の作るR1306は、オリジナルと比較すると完全にモドキです。
(ここで言うオリジナルとは1920年代〜1940年代に作られたRemington R1306です。現在のものとは異なります。)

どこがモドキかというと…
見た目で違うところは…
チョイル-----オリジナルは三角形のチョイルですが、私のは半円形です。
キック-----オリジナルは尖った三角形のキックがありますが、私のはありません。
ボルスタのフルーテッド-----オリジナルにはありません。
ブレット・シールド-----オリジナルは表面がフラットなのですが、私のは
アールをつけて、ハーフ・レリーフ状にしています。


スパインのチェッカリング
スプリングキャッチ

ブレードスパインのチェッカリング-----私のはオリジナルと比較するととても細かいです。なぜなら、オリジナルと同様のチェッカリングにすると、
ブレードを横から見た時にそこだけアウトラインがスゴク凹んで見えるのがイヤだから。
スプリングキャッチ-----オリジナルは黒いマイカルタ?かエボナイト?製ですが、私のは金属です。厚みを合わせるのがメンドイ。

見えないところでは…
オリジナルにはないダブル・キックになっています。

…まぁ、ここまで違うと、もう "King of Modoki” ですね!
(MJの二つ名みたいでアガルゥ〜 ホォーーーーー♫♬
審査員のトオルさんに「ナイフモドキ賞」をもらいたいです。
(ありがとう、トオルさん!



ところで、先日、JKGナイフコンテストの審査会の模様が公開されました。

各審査員の総評の中、ある審査員のコメントにナイフ界隈のSNSが一瞬ザワつきましたね!私もちょっとゾワっとしたひとりです。
今回はこのゾワっとした感覚はいったい何だったのだろうか?について考察したいと思います。(別の誰かがまたゾワっとするかも?)

最初の導入部分の文章は、その後の文章にはとくに影響していないので省略します。
今回はゾワっとした部分、以下の文章にフォーカスして考察しようかと思います。

1.「…全てがナイフモドキを超えてはいない…」
2.「…外国人が造る日本刀、着物、和食、俳句のような感じ…」
3.「…原点に戻ってナイフとはなにか?を突き詰める必要がある…」


まずは1.「…全てがナイフモドキを超えてはいない…」の部分、いきなり
「ナイフモドキ」と一刀両断されました。これはなかなかに厳しいですね…
これは出品メーカーに対しての叱咤激励なのか? それとも出品作を貶める言葉なのか?
たしかに当たり障りのない評価だけでは成長がないのも一部事実だと思いますので、審査員氏流の叱咤激励だと思いたいのですが、そうとも思えない部分もあり、ちょっとゾワっとしました。

「モドキ」とは似て非なるもの、通常はネガティブな意味合いで使われることが多いと思います。
文字通りの意味だと解釈すると、今回コンテストに応募されたナイフは、
似てはいるがナイフにあらずということでしょう。
私が個人的に連想したのは、平時忠が言ったとされる(諸説あり)「平家にあらずんば人にあらず」です。
「◯◯◯◯にあらずんばナイフにあらず」ということなのでしょうか?
まずは、ご自身の考えるモドキではないナイフ論を、最初に説明して欲しかったというのが正直な気持ちです。



次に2.「…外国人が造る日本刀、着物、和食、俳句のような感じ…」
部分、これは1.「ナイフモドキ」の補足説明の文章です。個人的にはこの
部分がもっともゾワっとしました。
文字通りの意味を解釈すると、「外国人が造る日本刀、着物、和食、俳句はモドキである」ということでしょう。

日本の伝統的な文化に根ざしたものを外国人が習得し、それに携わると何か不都合があるのでしょうか?
研鑽を積み習得した技術を持つ人が、たとえ外国人だとしても日本人と何ら変わらないと思うのですが…
逆に外国の文化や習慣、ものの見方、宗教観、歴史など、日本人にはない
感性との融合にワクワクする期待感を感じるのは私だけでしょうか?(ナイフモドキメーカーだから?

…審査員氏は「違和感」があるということを仰りたかったのでしょう。
おそらく … 脳内では
「(ちゃんとした師匠の元で修行し研鑽を積み技術を習得した外国人は別として)見よう見まねの自己流で、その本質も理解せず、日本刀、着物、和食、俳句を作る外国人の作品には違和感がある」…と言いたかったのでしょう。
(しかしながら、実はこれも正しくはありません… 見よう見まねの自己流でも自身の才能や情熱、探究心で本物よりも優れたものを作り出す天才的な人はまれにいます…)

さらに、この2.「…外国人が作る…」
喩えが悪すぎる、説明不足でもある。
具体的な説明もなく、1.「ナイフモドキ」部分の補足説明として語られているので、日本の伝統文化に携わる外国人は皆「モドキ」であると言っているようなものです。
受け取り手によっては排斥主義、その延長線上の差別主義とも取られかねない発言です。
これは審査員氏のキャラクターを知る一部の人にだけ、その本意を忖度し
理解できる文章で、そうではない人の多くはネガティブな発言ととらえるでしょう。
また、このような問題発言とも受け取られかねないコメントを容認しているJKGのガヴァナンスもちょっと心配ですね…

…以前、ある国のアミューズメントパークで、ドラえもん(?)のような
着ぐるみを着たキャラクターが来場者を迎えている映像を観た記憶があり
ます。おそらく著作権等は完全無視で勝手に製作されたものだと思われます。
その時、それこそ「ドラえもんモドキ」だと思いました。あれには、さすがに私も「違和感」を感じました。
劣化した二次創作感がハンパなかったです。

…今回のコンテスト出品ナイフ全てに対して、もし審査員氏も同様の「違和感」を感じているとしたら、それはそれで、どれだけ解像度の高いナイフ論(ナイフ審美眼?)をお持ちなのだろうか?とも思いますが…

最後に3.「…原点に戻ってナイフとはなにか?を突き詰める必要がある…」の部分、これは、あくまでも審査員氏ご自身の考えるナイフとはなにか?
であり、考察というよりは想像するしかありません…
ですので、いろいろな仮説を立ててみましょう!

ナイフとはなにか?…一般的にはブレードにエッジがあってハンドルが付いていればよいのではないでしょうか?と簡単に言うことができればよいのですが、「…突き詰める必要がある…」とのことなので、もっと高尚なナイフ論のような気がします。
前述した「◯◯◯◯にあらずんばナイフにあらず」の◯◯◯◯部分を解明できれば、答えが出てきそうです。
また「…原点に戻って…」とあるので、きっと現代ナイフの黎明期にヒントがあるのではないでしょうか?

…まずは、S&Rのパイオニアのひとりでもあり、JKG創設者で現代ナイフの神様とも称されるラブレスの名前を◯◯◯◯に入れてみることにします。
もちろん私の尊敬するナイフメーカーのひとりです。(何度かお会いしたこともありますよ〜!

…「ラブレスにあらずんばナイフにあらず」
さすがにこれだと世界中がナイフモドキメーカーで溢れてしまいますね。
ちょっと原理主義的すぎると思われるので(現代ナイフの神様だけに)、
これはないでしょう。
しかしながら、審査員氏は有名なラブレスファンでもあるので、この方向性はアリかもしれません。

…ナイフメーカーでありハンティングもしていたというラブレス、WW2に従軍もしていたようです。
その豊富な経験を活かしたナイフのデザインがたくさんありますね。
ラブレスが製作した様々なスタイルのナイフは、その後のナイフメーカー、メーキング方法に大きな影響を与えたのも事実です。
ドロップポイント、セミスキナー、ガットフック、プロハンター、ビッグベア、NYスペシャル等、使用目的やシチュエーションに合わせた優れたナイフばかりです。
これらのナイフを分解してパーツにしていくと、

ナイフを使用するシチュエーションや目的に合わせた…
優れたブレード形状
優れたグラインド
優れたヒルトの形状
優れたハンドルの形状
優れたハンドルの素材
適切なウェイトバランス
適切なサイズ
優れた鋼種
適切な鋼材の厚み
優れたシース
優れたフィッティング、全体の仕上げ等
…上記の要素を確実に選択し実行していく!

こんなところでしょうか?
これに名前をつけるとすれば、上記の要素をマルっとひとまとめにして、
仮に「ラブレス・メソッド(仮)」とでも呼びましょうか。

…「ラブレス・メソッド(仮)にあらずんばナイフにあらず」
これはなかなかにいい感じではないでしょうか?

しかしながら、コンテスト出品作には、現代ナイフ以前の古い時代のフォルダーレプリカや、アート・ファンタジーにベクトルを振ったナイフも出品されています。
これらのナイフにはラブレス・メソッド(仮)を当てはめなくてもよいような気もしますが… やはり現代に製作する以上は必要なのでしょうか?

「ラブレス・メソッド(仮)にあらずんばナイフにあらず」
ウゥ〜ン、これも違うような気がしてきました…

「…原点に戻ってナイフとはなにか?を突き詰める必要がある…」
改めてこの文章を読むと、もしかして、もっともっと高尚で、現代ナイフ黎明期から連綿とつながる歴史的で精神的なことなのでしょうか?
…ナイフに限らず、もの作りな人の中に「魂込めて作ってます!」とか言う人がいますが、そういう目に見えない魂とか、気合いとか、根性とか、そういうことなのでしょうか? 
それらを感じられないと「モドキ」ということなのでしょうか?
昭和の精神論的な要素が含まれているのでしょうか? 

…「魂あらずんばナイフにあらず」
今どきそんな昭和の精神論的な要素を含むとは思えませんね…



ここまでの考察・想像の結果、
「…全てがナイフモドキを超えてはいない感じがします。外国人が造る日本刀、着物、和食、俳句のような感じです。原点に戻ってナイフとはなにか?を突き詰める必要があると感じました」

上記の文章を私なりに解釈し、言い換えるならば、
「コンテスト出品ナイフのすべては、ナイフのように見えるが似て非なるものである。
それは、見よう見まねの自己流でその本質も理解せずに日本刀、着物、和食、俳句を作る外国人の作品と同じような違和感がある。
現代ナイフの黎明期(ラブレス?)まで歴史を遡り、ナイフの本質(精神?)を見極める必要がある。」

…と、こんな感じでしょうか?
言い換えてもゾワっとしますね! なかなかに辛辣な評価だと思います。
…「ナイフとはなにか?」部分がはっきりと解らないので、まだまだモヤモヤ感が残ります。



…いろいろと考察・想像してきましたが、残念ながらナイフモドキメーカーふぜいにはその真意は解明できませんでした。
今後の「ナイフとはなにか?」議論は、若いナイフメーカーの皆さんにまかせましょう。

…個人的な意見ですが、ナイフコンテストに出品しているナイフメーカーの皆さんの多くはまだまだ若く(例外な人もいる)、将来ある人材だと思います。
老婆心(爺だけど)ながら、キャリアの浅い段階では凝り固まった◯◯◯論の型にはまらず、しなやかで伸びやかで斬新な、もっともっと自由なナイフメーキングをしてくれたら楽しいなぁ〜と思います。

…もちろん、私はこれからもナイフモドキを作り続けますが、なにか?…

…今、ひとつだけ確実なことを思いつきました。
遅ればせながら、2023 JKGナイフコンテスト脳内審査会の結果を発表いたします。
鈴木眞メモリアル賞  該当ナイフなし



ところで、先日、夏用のブーツをリペアに出しました。
元々は白いクレープソールだったのですが、オールソールのついでにカスタムしました。レザーのミッドソールをコバ・ナチュラルで1枚かまして、
ビムラムのブロックパターンのアウトソールを貼りました。


ウゥ〜ン、なかなかにカッコ良い!
しかし、今回のブーツには残念ながら「たがやさんみ」を見つけることができませんでした(泣
…たがやさんみを探す旅はこれからも続きます。


業務連絡
ついに「◯◯◯外三郡誌」の扉が再び開きました。
海を越えて、新たな物語が編まれようとしています。
とても楽しみにしています。(推しのファンより)

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