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ピンのカシメ方

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オールドスタイルのフォールディングナイフは、ブレードを固定するピボット・ピン、バックスプリングを固定するピン、ハンドルを固定するピン等、それらすべてのピンがきれいにカシメられているところが醍醐味のひとつでもあります。ピンが見えてはいけないところや頭を丸めるところ等、いろいろと見せ場があります!

しかしながら、このピンのカシメ作業、そのコツを人に伝えようとするとなかなか難しいです。いわゆる暗黙値のひとつで、これを体得している人は難なく作業をこなせるのですが、体得していない人に対して、うまく言葉で伝えられません。ハンマーで叩く場所はある程度は指示できても、さまざまなハンドル材の違いによって変えなければならないチカラ加減等は、残念ながら正確には伝えることができません・・・

そこで今回は、ピンをかしめるためのハンマーの工夫をご紹介します。下記のハンマーの画像は、ピンのカシメ用に私が使用しているものです。

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これは彫金関係で使用されるイモ鎚(いもづち)と呼ばれるハンマーの細い方の先端を加工し、ピンをかしめやすいように細く削ってカスタムしたものです。先端の径のサイズは左から順に約5mm、約2.5mm、約1.5mmといったところでしょうか・・・打突面の正面画像は以下の通りです。

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今回は、ハンドル内のピンのカシメに関してお話しましょう。ピンの太さに関わらず、ハンドル内のピンのカシメに関しては基本的には同様の作業手順です。

バックスプリングを固定する2mm径のピンを例にしますと、まずは一番左の5mm径のハンマーで叩いていきます。2mm径のピン頭をタテ・ヨコ・ナナメに8分割したとして、その1分割部分を順番に叩いていきます。時計回りでも反時計回りでも良いのですが、できるだけピンの外周部分を叩くようにします。これを何十周か繰り返すとピン頭がキノコ(シイタケかな?)のように広がってきます。

次に2.5mm径のハンマーに持ち替え、同様に8分割を順番に叩いていき何十周かすると、シイタケ状の形がドーム状に近くなってきます。そこで、このピンをハンドル材に押し込み、密着させます。その後、ハンドルの反対側の飛び出たピンを適切な長さに削り取り、上記のカシメ作業を再度繰り返します。ハンドルの表・裏の両面のピンが十分ドーム状になったならば、それぞれのピン頭のセンターを少しずつ叩きハンドルにさらに密着させ、バックスプリングとライナーのスキマがなくなるまで叩いていきます。

最後の仕上げは、1.5mm径のハンマーで、ドーム状をより丸く見えるようにきれいに成形していきます。

ハンドル内のピンのカシメ方は以上ですが、やはり文章ではうまく説明できませんね・・・トホホです。

ハンドル材の種類により、ピンをカシメるチカラ加減は当然違いますが、こればかりは、ちょっと文章にはできませんね、残念。

あくまで個人的な感想ですが、ハンドル材の違いによるピンのカシメ難さと緊張度をご紹介したいと思います。私が使用したことのある素材に限りますが・・・

ブラック・パール(黒蝶貝) > マンモス・アイボリー > オールド・ジグドボーン > アイボリー=ジグドボーン > アイアン・ウッド > マザー・オブ・パール(白蝶貝)=マイカルタ > スタッグ > カーボン・ファイバー

ブラック・パールがいちばん緊張度合いが高くカシメづらいです。 やはり高額な素材だからですかね、アハハハ・・・でも明らかにブラック・パール(黒蝶貝)とマザー・オブ・パール(白蝶貝)では穴のふちの欠け方が違うような気がします(個人的感想)。 マンモス・アイボリーとオールド・ジグドボーンは経年劣化しているものがほとんどなので、ご想像の通りです。 意外にマイカルタは薄くすると簡単に割れますね、明らかにスタッグよりは弱いです。 カーボン・ファイバーは堅牢ですが、加工時にドリル等の工具がすぐ切れなくなるのが困りものです。 素材の強化を目的に、マンモス・アイボリーやウッド等にスタビライズドされたものがありますが、これもあくまで個人的な感想ですがウッド系以外はほとんど効いていないような気がします。

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