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黒人と白人、アジア人がどう表現するか〜ミュージカル『ヘアスプレー』日本初演感想〜

 こんにちは、3歳男児を育てながら働くカレー部長です。実はわたくし、中学時代からミュージカルが大好き。かれこれ、ミュージカル歴は20年(!)になります。そんな私ですが、今日、すごいものを見てしまいました。ミュージカル『ヘアスプレー』の日本公演です。あまりに素晴らしかったので、思いつくままにレビューを書きます。

コロナ禍で度重なる公演中止・・・・

 本公演はもともと、2020年初演でした。しかしコロナのため、全公演が中止にに。そしてついに2022年、満を辞して再演が計画されたところに、まさかの初日・2日目が、キャストのコロナ罹患による公演中止。キャスト・スタッフの皆様の落胆は、察するに余りあります。しかし、無事に代役を立てて(コーニー・コリンズ役の上口耕平さんが一人二役です)3日目である本日から、公演が始まりました。私は奇しくも、日本初演の初日を目撃するという幸運に恵まれました。

 キャストの皆様は、気合十分。「今日、幕を上げられて、本当によかった!」という喜びに満ち満ちていて、こちらまで嬉しくなってしまいました。途中、エドナの早着替えの衣装の裾がチラ見えしていたり、ドアがバタンと閉まった瞬間ちょっとだけ壁が揺れたりと、何回かひやっとするシーンはありましたが、それ以外は初日とは思えない完成度でした。キャストの皆さんも、とてもリラックスして、のびのび演じていらっしゃいました。

白人と黒人、アジア人による演じ分け

 私は2007年の映画版はリアルタイムで見ていましたし、2009年にロンドンのウェストエンドでも公演を見たことがあります。その際は、白人の役は白人が、黒人の役は黒人が演じていました。

 しかし、今回は日本人キャストが、黒人と白人を演じ分けなければいけません。2017年末、ダウンタウンの浜田雅功がバラエティ番組で黒人のモノマネで黒塗りメイクをして、世間の不興をかったのは、記憶に新しいところです。日本人キャストが、メイクに頼らず、どうやって「白人らしさ」「黒人らしさ」を演じ分けるか、私は非常に興味がありました。

 しかし、私の心配は杞憂でした。キャストの皆さんは、ヘアスタイル、服装はもちろん、微妙な仕草やリズム感の違いで、見事に「白人」と「黒人」を演じ分けていました。特に「黒人」チームの皆さんは、白人中心の世界に新しい Vives をもたらすという役柄のとおり、すごくリズム感がよくて、見惚れてしまいました。
 特に、シーウィード役の平間壮一さん!!彼は本当に素晴らしかった。シーウィードは、ダンスが肝。ダンスが下手なシーウィードはシーウィードじゃない。そんな観客の期待を、120%上回る、素晴らしいダンスと演技でした。恥ずかしながら、平間さんのことは今回初めて知りました。今まで知らなかったことが悔やまれます。これからのご活躍が、とっても楽しみです!!

その他キャスト感想

ヴェルマ(瀬名じゅんさん)

 私は彼女のことを、ずっと「ミス・ボルティモア・クラウン(Crown 王冠)」だと思い込んでいたので、まさかの「ミス・ボルティモア・カニ(クラブ Crab 蟹)」の邦訳に、思わず吹き出してしまいました。瀬名じゅんさんの、蟹ポーズも相まって、道頓堀の蟹道楽が、頭をよぎったのは私だけではないはずです。しかし、さすがの瀬名さん!!瀬名さんのエレガンスでもって、カニというコメディ要素を制していました。本当に美しくて高飛車でヤなやつで(笑)、見ていて安心感がありました。

コーニー・コリンズ(上口耕平さん)

 彼も素晴らしかった!!イケメンで歌とダンスがうまくて、軽薄に見えて策略家なコーニー・コリンズを見事に演じきっていました。Mr. ピンキーの場面では、上口さんだと気がつかないぐらい、別人でした。なんで私、上口さんのことも今まで知らなかったんだろう?無知すぎますね…。あと、誰かに似てるな?と思ったら、韓国のイケメン俳優ソン・ジュンギでした。

日本発!真性のエンターテイナー、Naomiの今後にますます期待

 しかし、なんといっても、主人公トレイシー役の、渡辺直美さんです!!!本当に素晴らしかった、ヘアスプレーは彼女のために書かれたのではないか?と思うぐらい、ハマり役でした。放課後居残りを命じられてシーウィードたちと知り合う場面では、ノリノリで体を揺らしながら踊っていて、見ていて本当に気持ちがよかった。セリフの一言一言も、ミュージカルなので当然劇口調なのですが、嫌味がなくて、いちいち面白い雰囲気でした。声量はちょっと足りないかな?と思うことはありましたが、ミキシングでなんとかなるし、キャラクター、エンターテイメント性がとにかく卓越していました。彼女は真性のエンターテイナーなんだと思います。
 日本人で、世界に通用するエンターテイナーって、本当に指折り数えるぐらいしかいないのではないでしょうか?彼女は間違いなくその一人だと思いますし、同世代として、僭越ながら今後もますます応援したいと思いました。
 彼女の芸能界デビューは、ビヨンセのものまね。そんなBlack Culture の頂点に君臨する女王の、バックグラウンドに接する役ができて、彼女はどんな思いがしたのでしょうか?きっと彼女は、粋に感じて、一つの原動力にして頑張ったのではないかと思います。そんな頑張りが垣間見える、今日のパフォーマンスでした。

 チケット獲得は容易ではないと聞いていますが、本当に、本当におすすめのミュージカルです。是非機会があれば、ご覧ください!!


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