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白井未衣子とロボットの日常《反転》 13・集結の日

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一致団結。※最初に『①正夢の日』『②復讐の日』を読んだ方がいいです。 ※予告なく変更のおそれがあります。 ※設定上、残酷な描写があります。
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【パスティーユ】のパイロットとしての期間満了日前日。
私達白井3兄妹の更新が決まった。
期間は同じ3ヶ月間であり、9月の末で終了する。

更新手続に立ち会ったアレックスさんは、次の期間で新たな進展がなければ諦めろ、と告げられた。
夏から初秋にかけてが、ラストチャンスだった。

金星圏メイスのHR、ビウス・エクステラの残存兵が愛嬌市の[天海山ユートピア]を襲撃しようとして来た。
結果、マルロの説得で残存兵達を仲間として受け入れ、宇宙船[トールメイス・サウ]は大西洋上空まで運ばれていった。

アメリカ東部の海底には、[ラストコア]の臨時支部が潜んでいた。

私達も更新が決まった翌日に、[ラストコア]の臨時支部へ移動した。
まとめてあった荷物はそのまま所持して。

家族等の連絡は、ジェームズさんら事務局の方々が行ってくれた。
ジェームズさんは全く…と頭を抱えていた。
苦情も聞いたりする仕事だから、余計大変だろうなぁ。

事務局長に同情しても、何もできないので。

臨時支部に移動後、私達はこれからのスケジュールを言い渡された。
勉強と訓練の反復がほとんどだった。

もちろん、これはあくまでも予定である。
敵の襲撃、もしくは念願の《宇宙進出》が叶った時、予定が変更する場合がある。

《宇宙進出》は4、5年前に[ラストコア]で1度実施していた。
これは、あのポニーテールのお姉さんが話してくれた。

お姉さんは私達が来た事に哀しげの表情を見せていた。
だけど、
「もう覚悟しているみたいだから、仕方ないのね。」
と私達をすんなりと認めてくれた。

過去の《宇宙進出》を他の人達が伝えなかった理由として、悲惨な出来事があったかららしい。
計画に関わった1人を失ったのが、[ラストコア]の皆さんに大きな衝撃を与える結果になったのだとか。

お姉さんはその計画のメンバーに加わってないので、細かい事は知らないと述べていた。

私達が加わる《宇宙進出》の計画は、[ラストコア]にとっては2度目の挑戦になる。

移動してから翌日、早速勉強と訓練に取り掛かった。
勉強の内容には、宇宙に関する基礎知識の授業も組み込まれていた。
宇宙へ上がる時にも説明される予定だけど、予習しておけとアレックスさんは言った。

私と和希兄ちゃんはちゃんとノートを取っていたけど、勇希兄ちゃんは途中で眠気と闘っていた。
そこで講師の先生は、毎日テストを実施するようになった。
勇希兄ちゃんは焦って、勉強に取り組んだ。
授業前に音読して暗記しようとする下の兄に、私は呆れていた。
全く、普段からやらないから…。

午前に勉強をして、昼食を摂った後に訓練が始まる。

訓練にはHRのロボ形態と戦闘に入った時の実戦を行った。

マルロはロボ形態【チタン・キュレン】にはなれない。
首元の黒い装置のおかげで。

誰が相手するんだろう?と疑問に思ったのだけど、答えはすぐに出たんだ。

3隻の宇宙船[トールメイス・サウ]に乗っていた、[エクステラ隊]というビウスの残存兵。
彼らはマルロら[宇宙犯罪者]には劣るらしいけど、れっきとしたHRである。
練習相手には丁度いいとなって、1週間の内5日間は彼らとの対戦を組んだ。
残りの2日間は、別の訓練だった。

ロボに乗って戦うだけで《宇宙進出》の期間は乗り越えられない。
些細なトラブルを対処できないと、命を落とす危険性がある。
応急処置的な訓練も、私達は受けた。

模擬戦闘も応急処置の実習でも、性格の差が出た。
いつもやかましい勇希兄ちゃんは、文句ばかり言っている。

【パスティーユ・サニー】の拳が残存兵に全く歯が立たなかった時は、悔しがる表情をしていた。
負けず嫌いだからね、下の兄は。

和希兄ちゃんは黙々とメモを取っていた。
それどころか、自分でも閲覧室を利用して、予習や復習をしていた。
私も似たような勉強で取り組んではいたけど…。

上の兄は最終的に、模擬戦闘のコーチを担当するマルロに質問できる程になっていた。
やっぱり、普段の学業への姿勢がここで出るんだなぁ、としみじみ思っていた。

暦上では8月初旬の頃。
ジェームズさんが紹介したい人達がいると聞いて、統制制御室に向かった。
軽めの集会だった。

統制制御室にはジェームズさんの後ろに、軍人の格好をした人達が十数人並んでいた。
見た目通り、正規軍から秘密裏で志願してきた若者達だった。
私達はジェームズさんの口から直接聞いた。

正規軍は名称と役割だけ学校で習ったんだけど、いまいちよくわかってはいなかった。