送別会を断ったのは
2週連続で、週末にイベントの仕事があった。
1週目が終わったとき、来週、打ち上げ、と言われた。
まあたしかに、このあとごはんに行きたくなるのは、わからないでもないな、と思った。
それから1週間。打ち上げを断ろうかどうしようか、考えた。
仕事中は、まあ、行ってもいいかな、と思った。
家に帰ると、嫌だな、行きたくないな、と思った。
そうやって過ごし、迷っていた。厄介だった。
最初はOKしたものの、よくよく考えると気が進まなくなり、断る、というのは、都でもよくあったことだった。
そういうわけで、同期の集まりには1度も参加していないし、私が主役の主任試験の合格祝いも、断った。そのときは、もっとうまく断る方法を教えてあげるのに、と言われたが、「行きたくねえ」の代わりに「気が進まない」と言うだけでも、私はうまくやったつもりだった。
そうしているうちに、色々あり、土曜日も仕事に行かねばならなくなった。
手だけ動かしていればよかったので、金土と、1対1で、3人と話をした。
それで、かなり、話は尽きた気分だった。打ち上げで話すことはない。
打ち上げも送別会も迷っている、話が通じない上に、説明しても理解してもらえないので面倒になってしまった、なんて話もしたが、ちょっと失礼なことも言われて、不服だった…
土曜の夜になっても決められないので、気持ちを整理してみた。
行きたくない理由は、話が合わないから楽しくないし、失礼なことを言われるかもしれないから。ごはんもおいしいところじゃないし、時間の無駄だ、ということ。
行きたい理由は…もしかしたら、思うほど悪くないかもしれない、この一つに尽きた。
つまり私は行きたくないのだった。
だけど、はっきりと断れない理由は、断ったら、相手が傷つくだろうなあ、と思ったからだった。とはいえ、私が普段から飲み会に行かないタイプなのは周知の事実なわけで、相手も大人なのだし、断っても大したことはないはずだった。
はずだった、というのは、この時点で、これが小さい話ではないことを、私は無意識のうちに理解していたのだと思う。定義上、私はEmpathでもある。
とはいえ、本音は行きたくないことが判明した以上、断るしかなかった。
自分を大切にするために。
当日
翌朝起きると、人と一緒に過ごす時間が長すぎて、嫌になっていた。
週末を返上してしまった上に、月曜日も1日仕事に行かねばならず、
ここでalone timeを取らないと、あっち行け!ほっといて!と、キレてしまいそうだった。一人の時間が必要な、HSPあるある、である。
限界を超えていた。もう無理だったので、断る口実ができた、とも思った。
明日も朝から仕事だし、と。
会場に到着してみると、Jefeはなんだか機嫌がよかったし、私は目を合わせなかったけれど、こっちをよく見て話していた。
そして、来るはずの人が1人来なくなった、と聞いた。これで打ち上げのdynamicsも(良くない方向に)変わることになった。
イベントは人があまり来ず、私はやることがなかった。
"今日、やることがなくて、機嫌を損ねたから、打ち上げに来なかったのかもしれない"と、これが原因だったように見えるかもしれない。だけどそうではない。
見ているだけということは、特に気にならなかった。元気も出なかったし、帰る気にもなれなかったので、そのまま座って見ていた。
昨日も仕事だったし、少し休憩してもらうのもいいよね、と言われたが、HSPの私がそんなことで休まるわけはない。
話すタイミングがあれば断ろう、と思っていたし、がんばれば言うこともできたのだが、なんとなく言い出せないまま、時間が過ぎてしまった。
すると、イベントの終盤に、jefeよりも上の人がやってきた。
イベントの最後に、あいさつに来ることはよくある。だけど、この人は、私が避けたい人だ。
えー、これはもう、断るしかないよ。と思った。
イベントが終わり、ほかの人たちが階段をさっと降りて行ってしまったので、これならすっと離れられそう、と思い、トイレに行った(行きたかったし)。面と向かって断ることができず、逃げる、というやつである。
そして、私が階段を下りて外に出た頃には、まあそのうち来るでしょ、とみんな会場に行ってしまった、という状況であってほしかった。でなければ、裏口からそーっと逃げるつもりだった。
階段を降り、息をひそめて様子を伺った。この、隠れて見ているかんじは、なんだか久しぶりだった。傍観者のpositionが、私は嫌いではないのだった。
研修の飲み会のあとに、酔っぱらった(いかにもセクハラをしてくるであろう)人に肩を組まれてしまったけれど、全員が2軒目に入った隙をつき、逃げ出したことを思い出した。
あのときは、逃げられてよかった。
けれど、今回はうまくはいかなかった。
人々はもちろん待っていた。そして、イベントの参加者と話をしていた。
裏口は表口の近くにあり、どちらから出ても見つかってしまうので、
少し待っていれば、去ってくれないだろうか、と、私も待つことにした。
そうして、様子を伺っていたところ、私を探しに来た2人(jefeともう一人)に私は見つかってしまい、覚悟を決め、帰ります、と繰り返しながら、去った。
送別会も兼ねているんだけど、と言われたことは、その場ではわかったが、
fight or flight モードになっていて、目を合わせることもできなかった。
帰っていく参加者に、jefeが大声であいさつをしている声が聞こえた。
屯している人々も目に入ったが、ぱらぱらと雨が降っていたので、傘を取り出しながら、見ないようにして立ち去った。
帰路
街で声をかけられたときに(ナンパやら何やら)、私はこのfight or flightモードになってしまうのだけど、
とても怖くて、固まって、目を合わせられない。とにかく逃げたい。
触られたとしても、気づいていないふりをして、無視して、立ち去ることしかできない。
追いかけてこないし(方向も逆だし)、野次も飛んでこないことがわかったので、私は、買っておいたおにぎりを食べながら、宣言通り家に帰るため、駅に向かって歩いていた。
そうして思い出した。仕事が詰まっていても、今日の打ち上げは決行だったし、イベントスタッフの人数が多いことも、まあ、いいじゃん、とjefeが言っていたこと。今日の機嫌の良さ。
すごくきれいな花束を差し出されて、それに、愛がこもっていることがわかった。だから、本当にきれいな花束だった。私はきれいな花が、好きなはずだった。だけど、拒否してしまった。そんなイメージが浮かんだ。
I broke his heart. ということになる。
こうなることがわかっていれば、ごめん!ひとりの時間必要で!と早めに断ったものを、そう器用にはできないのが私である。
車中では、何も考えられなかった。このままでは泣いてしまうかもしれない。だけど、それは家に着いてからにしよう…
そうしているうちに、ありがたいことに目的地に着いた。予定通り、途中下車して飲みたかったタピオカを飲みながら、カウンセラーのブログを読み、少し気持ちを落ち着けてから帰った。車中で読んでいた本の内容は、あまり頭に入ってこなかったけれど。
一体何が起きたのか
家に着いて一息つき、私は…疲れていた。眠かった。
だけど眠れず、こんな時いつもそうするように、思い浮かぶままに書くことにした。
表面だけ見れば、ひとりの時間がほしかった、好みのお店でもメンバーでもなかった、話も合わないし傷つくのも嫌だったし、かといって楽しめないまま座っているのも申し訳ないしで、とにかく気が進まなかったから断った、ということになる。金銭的なことはあれど、縁も切りたかったのは事実である。
だけど、泣きたいということは、何か深い理由がある。
理にかなっているかは置いておいて、感情を出さねばならない。
あいつらは、ただ飲みたいだけで、私のことなんか気にしちゃいない、なんて前は思っていたけれど、今はそうじゃないことがわかる。手段はともあれ、思いがあったことはわかる。
こんなことをして、私は嫌われて、不当に扱われるのがふさわしいんだ、と思っている節はあるだろうか。だとしたら、何故?
そうして出てきたのは、私は、相手を悲しませないために、自分が嫌われることを選んだのだ、ということだった。
そして私は号泣した。つまりビンゴなのだった。
私はもうすぐ辞めて、遠くに行こうとしているけれど、好きな人が遠くに行くと、さみしいだろう。
そして、大好きな人に、"別にあんたなんか好きじゃないよ、話通じないし、前に言われたことも嫌だったし"なんて言われたら、悲しいだろう。
それなら、そうなる前に、嫌われたほうがいい。
恵まれている罪悪感
全然関わったつもりがなくても、さみしがられてしまう。
自分ではそういうつもりがなくても、好かれてしまう。
好意を受け取ったり、ほめたりすると、相手が舞い上がってしまう。
それは、魅力を受け取れば、私が素敵な人で、みんなに好かれるから、ということになる。
それと同時に、告白や、デートの誘いを断るときの罪悪感は、半端なく…
断っても、すぐに立ち直れそうな、以降会わない相手だったら、まだいい。
だけど、本当にショックを受けているのを見ると、それなら、最初から好かれないほうがよかった、と思ってしまう。
仕事を辞めると伝えたとき、まるで彼氏と別れたかのようにショックを受けて、裏切られた、と言われたことは、記憶に新しい…
コンサートに来たファンの前で、私、歌いたくないし、あんたらにも興味ないんで、と言うようなイメージが浮かぶ。
もしくは、私が幸せを受け取ろうとしている後ろで、泣いている♂達。
それくらい、私は、誰かを悲しませたくないようである。
なぜだろう。そうやって誰かを悲しませたことがあるだろうか。
自分が同じような思いをしたことが、あっただろうか。
さらに言えば、ここまでの仮定は、正しいのだろうか。相手はそれほど悲しまない、ということもあるのではないか。
そうして、これまでに愛を受け取れなかったことをいくつか書き出してみた。それはそれで消化できて良かったのだが、ビンゴはなかった。
詰まるところ、私の、近寄るな!を察して、なんとなく距離を保ってつきあってくれれば、問題は起きなかった。だけど、私が良い距離と思うよりも近づかれてしまったため、いずれは断らないといけなかった、と思う。
この仕事でよかったことや、感謝を話して、なんて期待されても。
その期待には、応えられないんだよ。
明日はどうなるだろう。
全員に嫌われるだろうか。私を見る目が変わるだろうか。
それとも、何もなかったかのように、振る舞うだろうか。
Jefeとはしばらく会わないけれど、明日、一緒に出かけることになっているもう一人にもし聞かれたら、
悲しませるよりも、嫌われたほうがいいと思ったのだ、と言ってみようと思っている。
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