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消防士時代、仕事中に火傷してしまった話

こんにちは。杏仁万斉と申します。

私は以前、地方都市で消防士をしていました。今日はその時の経験談を書いていきたいと思います。

タイトルを読んで、緊迫した火災現場での話を期待した消防ファンの皆様、あるいは彼ピが消防士で心配になってしまった優しい女性の方々、申し訳ございません。

この記事に、緊迫した火災現場の話はただのひとつも登場しません!!!

私は幸いなことに消防生活の中で、消火活動中に火傷をしたことは一度もありません。昔は「火傷は消防士の勲章」などと言われた頃もあったという話もきいたことがあります。しかし現在においては火傷は完全に事故です。装備をきちんと装着して、火傷する要因をひとつずつ潰しながら安全を管理して火傷などの受傷を防止することが大切とされています。

私が火傷をしてしまったのは、火災で出動し消火活動をした「後」でした。
その日は4時間以上消火活動を行い、少々疲れて消防署に帰ってきました。
火災現場から署に帰る車両の中で私は少し焦っていました。

18時頃署に戻ったのですが、署の若手がほとんど出動していたため食事の準備が全くできていなかったのです。

私が勤務していた消防署では署員が食材費を出し合い、主に若手が夕食と朝食を業務の合間に自炊して提供していました。通常19時には約25人分の夕食を完成させるのですが、署に戻ったのが18時ですから、あと1時間しか猶予がありません。幸いなことにご飯は出動しなかった残留者が米を研いで釜をセットしてくれていたのであとは火をつけるだけです(なんとガス釜だったんすわ…)汁物は豆腐の味噌汁なのですぐにできます。倒すべき敵は25人分のからあげでした。醤油味のからあげにする予定でしたが、約3kgある鶏肉を切り分け、今から漬け込むと時間がたりません。そこで、下味が薄目になることを許容し漬け込み時間を短縮、油で揚げたあとに冷蔵庫にたまたま置いてあった別の小隊のスイートチリソースをかけて味つけする作戦に変更しました。夕食の提供開始まであと20分、特に今日は夕食の提供開始時間にうるさい幹部がが当直です。食事の内容と提供時間に関して本当にすぐキレ散らかす人だったので絶対に遅延させるわけにはいきません。

最後の方は調理しているもの皆、作業が雑になっていき、肉片についた小麦粉・片栗粉が多少どころじゃないダマになってましたがそこがから揚げの美味しいカリカリ部分になると信じ、大型の中華鍋で温めた油に一気に肉をブチ込みました。

もうすでにオチはお分かりだと思いますが、私が消防生活でした唯一の火傷はこの後です。粉のダマは、見事なカリカリ部分を作りましたが、同時に私の右腕に今も小さくの残る火傷の跡をつくったのでした。

そして、夕食の提供開始時間にやたらうるさい幹部は、料理完成直前で偶然別の事案に出動していったため、結果的に夕食がちょっと遅くなったくらいでキレ散らかす人はもはや署内にひとりも居なかったのです。

私はこのとき以下の事を学びました

① あたりまえだけど、消防士は火災現場以外でも火傷する
(こんなとこで火傷をしないだろうと思い込みがあった)

② 火災というMAXレベルの困難を伴う現象に立ち向かった直後に、がんばれば回避できそうな程度の困難が現れると、つい無茶をしてでも解決したくなる。(心理的な麻痺)

③時間の短縮によって得られる利益が増大する場合、リスクを無視できるだけど利益なのかよく考えるべき

特に、③については消防学校時代に教官から叩き込まれた事でもありました。確かに夕食の提供時間が遅れれば当直はキレ散らかしたかもしれません。けれど私はもっと落ち着いて調理をすることができたでしょう。下ごしらえなど安全に時間を短縮できるところは最大限短縮したのですから、他の工程はもうどうしようもないと高をくくり安全第一で作業をするべきだったと今になって思います。そして、消防を辞めた今なら言えることがあります。

そもそも多少飯の時間が遅れた位でガタガタ言うなやクソ当直!


すみません。当時の事を思い出して少々チクチク言葉を使ってしましました。今回お話ししたことは、からあげづくりの工程で起きた事件でしたが、同じようなことを火災・救助・救急の現場でやってしまうと、人命にかかわるエラーを起こすことになりかねません。当時私はハッとしました。

「現場じゃなくてよかった…」

災害現場以外のとことで安全管理にとって大事なことを疑似的に体験し、思い出すことができたことは私にとって僥倖だったと思います。

消防を辞めた後も仕事柄、精神的に追い詰められた状況下で、スピードを取って何かを省略するか、あるいは正確さ・慎重さを取ってスピードを犠牲にするかといった判断に迫られる時があります。

そんなとき、私は今も右腕に残る小さな火傷の跡を見つめます。

#消防 #教訓 #失敗から学んだこと

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