暮れ子

特技は日記です

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最近の記事

日記 3/10 私信

 noteを書いていると、フォロー外の人からコメントが来ることがまれにある。好意的な賛辞で、たとえば面白かった、などと言われるとすなおに嬉しい。  わたしはほとんど身内の人間への生存報告のつもりで書いていて、わたしのほうはこんなバカみたいな感じ、あなたは? という半ば私信じみたものをやりとりしている気分だ。  けれどもここはインターネットの大海原、その場末、だれの目にも触れえる場所だ。ただ、たいがいのひとは振り向きもしない。わたしもそうタカをくくっている。  だから出し抜けに

    • 日記 6/09 旧友

       大学を卒業してから四年の月日が流れた。わたしは毎日たあいのない労働に身をやつしてアラサーと呼ばれる年代に入ってしまった。  母校の大学祭がついこの間、六月の頭に催された。コロナ禍を経て三年ぶりで、大学のメインストリートに居並ぶ屋台や、各学部棟での催し物の数々は、いかにも郷愁を誘った。わたしは卒業生らしく肩で風切って見て回った。同伴者に友人がいた。彼女は卒業後、そのまま大学院に進学して、今では文学の博士課程にいる。わたしと彼女は同じ文学部で、同じサークルに入っていた。文芸サ

      •  日記 0418

         わたしが何もしていなくても、世相は勝手に移ろう。更新に次ぐ更新、昨日の情報はもう用無しになって刻一刻と改められる繰り出される情報の渦は、SNS疲れという単語が作られるくらいには、慌ただしくてまとまりがない。  このアカウントを作ったはいいものの、届けたい言葉もなく知りたい生活もなく、ずいぶんと持て余していた。次から次に小説をぽんぽん書ければいいのだけれど、書いたところでどうせ誰にも届かない。空き瓶通信みたいなもので、ほら聞いたことくらいはあるでしょう、どこかの無人島からあ

        • 日記2/28 酒は祝福

          ◎心を鬼にして優しい言葉を書きたい。日記なんてたやすく罵詈雑言が飛び出すもの、なるべく穏やかに、人の幸せを祈れるような言葉を書きたい。 ◎もう3月になるので、来月は何をメインに読もうか迷う。2月はわりと純文学の月だった。そろそろ詩文の積ん読本を崩し始めていきたいところだ  詩集っていっきに読み切るのに体力いるし、寝る前に少しずつ読もうとしたらそのうちそっちのけにしてしまうしで、わたしには通読が難しい。 「悪の華」の冒頭を読んでは積んで読み返しては積んで、ボードレールに申し

        日記 3/10 私信

          日記2/27 貝のように

          ◎なんだか暖かくなってきている。年明けから何もしてないくせにもうふた月過ぎてしまった。読みたい本や映画のリスト、数は増えるばかりで減りそうにない。 ◎承認欲求おばけになっている。話し相手といえば家族くらい。職場では貝のように押し黙って過ごしてる。  本当はわたしはもっと社交的な人間なのにな〜〜〜  社交的な人間はこんな裏垢じみたnoteを初めません。ダウト。 ◎このまえニコ生で「ぼっち・ざ・ろっく!」の一挙放送してたので観た。  放映されてたときには逆張り精神が発作

          日記2/27 貝のように

          自己紹介ですわ~~!!

           皆様がた、お初にお目にかかりますわ。暮れ子と申しますの。    つい先だってよりnoteなる場所につれづれ書き散らしておりました。小説や詩文ばかり書いていようと思っていたのもつかの間、ほかの方々のnoteの記事、その実り豊かな作物を見るにつけ、つい自分も何か日記やらエッセイやらを書いていきたいと思った次第ですわ。単なる自己紹介ひとつにつきましても人みな洗練されたお書き物ばかり、拝読するたびに頭の下がる思いでございますわ。  あらためて自己紹介と申しましてもなにかきらきらし

          自己紹介ですわ~~!!

          小説「母の背」

                  (1)  母はよく怒る。杏子はまたかと思う。居間の蛍光灯が薄暗い。そろそろ取り換えどきだろう。芸人のコントが始まったようだ。二人とも見てもいないし笑わない。杏子はテレビを背にして、視線だけ母に合わせている。小言はほとんど流して後ろのコントを聞いているけれど、やっぱり笑えなかった。母は母で、有無を言わせぬ強い口調で杏子の進路に文句をつけることしきりだ。  発端は、進路調査書だった。杏子は第一志望の欄に金沢大学と書いた。特にという理由はない。しいて挙げれば北海道

          小説「母の背」

          小説「河童鍋」

           猫と寿司が好きだという。 「きゅうりじゃないんだ」  俺は何の気なしに口にした。 「そういう安直な考えきらい」  女は不機嫌に答えた。   ○ ○ ○  社会人生活にも慣れて、一日が型に嵌ったように終わる毎日。出会いがないというありきたりな理由から、俺は人並みにマッチングアプリを始めた。本気の付き合いでも軽いお遊び程度でも、何か新しいつながりを見つけられたらと思っていた。  いざ始めたものの、容易にはマッチングしない。たやすく出会えるような顔つきならばアプリに頼るまでも

          小説「河童鍋」