映画「殺しの烙印」・・・殺し屋もご飯を炊いている匂いが好きなのだ!
殺し屋の「ランキング」第3位の男が、近いランクの殺し屋たちと戦うアクション?映画。
当時の日活は、映画館から客足が遠のく梅雨時にはエロ作品とアクの強いハードボイルド作品を二本立て興行するのが通例になっていた。
だから公開時の併映作品は「花を喰う蟲」という成人映画だったが「殺しの烙印」も、結構な頻度で裸の女が出てきては叫びまわっている。
監督:鈴木清順
脚本:具流八郎
出演者:宍戸錠/南原宏治/真理アンヌ
音楽:山本直純
主題歌:大和屋竺「殺しのブルース」
撮影:永塚一栄
編集:鈴木晄
製作会社:日活
配給:日活
公開:1967年6月15日
あらすじ
プロの殺し屋としてナンバー3にランクされている花田(宍戸錠)は、五百万円の報酬である組織の幹部(南原宏治)を護送する途中、ナンバー2(大庭喜儀)とナンバー4(大和屋竺)らの一味に襲撃される。
花田の相棒春日(南廣)は倒れたが、組織の幹部の援護によって危うく危機を脱した。そしてその男を無事目的地に送り届ける。
仕事を終えたあとの花田は緊張感から解放され、妻の真美(小川万里子)と野獣のように抱き合う。
ある日、花田は薮原(玉川伊佐男)から四人を殺して欲しいという依頼を受けた。
花田は次々と指名の人間を消していった。しかし、最後の一人である外国人を殺すのに手間どり、結局失敗してしまった。
殺し屋に失敗は許されず、組織は女殺し屋美沙子(真理アンヌ)を差向けてきた。
家に逃げ帰った花田に妻の真美が拳銃を向けた。
真美も殺し屋だったのだ。
花田の運命やいかに!!
感想
鈴木清順ワールドの単純なストーリーながら、芸術作品のようなシーンが随所にあり、つい見とれてしまいます。
しかしそれゆえか、そんな映像のインパクトが強くてストーリーを堪能できない。
これがいいのか悪いのか・・・
女殺し屋、美沙子のアパートの壁が蝶に覆われていたり、美沙子を抱こうとする花田の両手に蝶の死骸がつぶれていたりするので、蝶にはいったいどのような意味があるのだろうと考えてしまったり。
そもそも殺し屋のランクを争っているというのも馬鹿げているのだけど、当時の日本が高度経済成長真っ只中で、そんな競争社会を揶揄していると思えば理屈は通る。
それでも主人公の宍戸錠のご飯を炊いている匂いが好きというところは共感した。
そう、殺し屋だってご飯は好きなのだ!
唯一心が和む生活の匂い、そして無心になれる。
ただこれは、パロマガス炊飯器とのタイアップのために無理やり考えられたこじつけ設定だったようです。
ちょいちょい、摩訶不思議とも見える鈴木清順ワールド。
当時の日活の社長に「一本撮るのに六千万円もかかるのに、訳のわからない映画ばかり作られては困る!」とブチ切れられ、日活をクビになってしまったいわくつきの一本、というのは大変有名なエピソードです。
でもこれによってカルト映画として認識され、海外ファンの間でも「監督が会社をクビになるほどのヤバい映画」として愛されているそうです。
ハードボイルドなアクションから、まるでフランス映画のようなノワール感、そして終盤はブラックコメディと91分しかないのに、見ていて何故か疲れてしまう。
でも何故かまた見たくなる、愛すべき一本。
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