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演技とは嘘をつくことです。

▶︎演技とは嘘をつくことです。(概念編)007

古事記の中に「海彦山彦」の神話があります。あるとき山彦は兄の海彦から借りた金の釣り針を海で無くしてしまいます。浜辺でしょんぼりしていた山彦を憐れに思った海の神は、山彦を海の宮殿に連れて行き娘に言いつけて釣り針を探すように指示します。姫は鯛の喉に引っかかっていた釣り針を見つけて山彦に返してくれました。

喜んで陸に戻った山彦は海彦に釣り針を返しますが海彦は許してくれません。兄弟の仲は険悪になりやがて戦さに発展してしまいます。結果は山彦の勝利。海彦は捕えられて小舟に乗せられ沖で海に投げ捨てられてしまいます。このとき海彦は顔に赤土を塗り、恥も外聞もなく溺れる様を滑稽に演じて見せました。その姿があまりにも可笑しかったので兵士たちは大爆笑。海彦はすんでのところで命を助けられたのです。

この海彦はやがて芸人の神様となり、反対に山彦の孫にあたるのが神武天皇で、こちらは権威に繋がって行きます。顔に赤土(化粧)を塗って溺れたフリまでして命乞いする。俳優の仕事とは本来後ろめたいものなのです。

昔、役者や芸人のことを河原乞食と言いました。これは犯罪者や心中に失敗した人たちが牢から解き放たれたあと、まともな仕事にはつけず、勝手に田畑を耕すことも許されず、河原に追いやられて生活していたことから名付けられました。彼らは食うために腕力のある男たちはヤクザに。体を売った女たちは芸者に。芸事の才能のある者が役者になりました。

だからヤクザと芸者と役者はもともとファミリーだったのです。戦前までは、役者の奥様に元芸者さんが多く、舞台の興行を仕切っていたのは地元地元のヤクザの親分さんでした。高倉健のヤクザ映画など、要は身内の物語だったというわけです。

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