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錯覚する。

▶︎錯覚する。(雑学編)006

ある結婚詐欺師が逮捕されて監獄に収監されました。すると彼に騙された女性たちが何人も面会にやって来て、みな一様にこんなことを言うんだそうです。「他の人は騙されたかも知れないけど、わたしはあなたにちゃんと愛して貰った。だからきちんと罪を償って刑期を終えたらまた一緒に暮らしましょうね」と。

彼女たちが特別無知で愚かなわけではありません。こんな現象が起こってしまう原因、それは人間の脳が錯覚する臓器だからです。ただし錯覚しているのは女性たちではなく詐欺師の方です。

詐欺師は大金を巻き上げる目的で女性に近づきます。そして「好きだ」「愛してる」「君と一緒の時が一番安らぐんだ」と色んな言葉や態度で女性が気持ち良くなるよう懸命に努力します。当然、言われた女性は幸せな気持ちになりますが、実は詐欺師の方も幸せな気持ちになって、一緒にいるときは本当に女性のことが好きになってしまうんだそうです。そして「じゃあ、さよなら」と別れて1人になると、途端に「いかんいかん、俺の目的はあの女から大金を巻き上げる事だった」と我に返るんだそうです。つまり女性側からしてみると確かに愛された実感があったわけで、だから彼が結婚詐欺師だったとわかったあとでも。自分だけは騙されていないと確信出来たのでしょう。

こんな例もあります。テレビのバラエティ番組で、ある小学校の同窓会をウォッチングします。そしてクラスのひとりを除いた全員に架空の思い出を共有してもらうのです。誰かが口火を切ります。「そう言えばあのとき傑作だったよな」「ああ、あれは面白かった」ターゲットはひとりキョトンとしています。「わたし人生で一番笑ったかも」話について行けないターゲット。しかしクラスメイト全員があまりにも具体的に出来事について語るので、いつのまにか「そう言えばそんなことあったかも」と次第に脳内勘違いし始め、最後にはすっかり自分も皆んなと一緒に体験したのだと錯覚してしまいました。

最後にもうひとつ決定的な例を上げてみます。1971年、アメリカのスタンフォード大学で有名な心理学実験が行われました。大学内の地下実験室を刑務所のように改造し、心身共に健康な男子大学生を募集。11人を看守役に10人を受刑者役にして2週間過ごして貰い、特殊な役割を与えられた人間の心理がどんなふうに変化していくのかを見守るのです。

まず囚人役をパトカーを用いて逮捕し、指紋採取し、看守役たちの前で裸にしシラミ駆除剤を散布します。そして片足に南京錠のついた鎖を巻きつけました。すると変化はまず看守役の方に現れます。彼らは誰に支持されたわけでもないのに囚人役に罰則を与え始めます。反抗した囚人を独房に閉じ込め、バケツに排泄するよう強制しました。

やがて精神を錯乱させた囚人役の1人が離脱。その後も異常事態が続きます。この様子を実際の監獄でカウンセリングをしている牧師に見て貰ったところ、実際の囚人たちと同じ初期症状だと非難。大学教授はそのリアリティに興奮し実験を続行しようとしますが、牧師が大学生たちの家族に連絡して、2週間の予定だった実験はわずか6日間で中止となりました。しかし看守役の学生たちは「話が違う」と実験の続行を希望したと言います。

確かにこれは行き過ぎた実験ですが、人間の脳は錯覚する臓器であることはわかって頂けたと思います。よく読書することを擬似体験て言いますか、これは本を読んだだけで脳は体験したと錯覚しているのだということが最近の脳科学研究でも証明されています。

俳優に取ってこれは朗報です。俳優は実際に体験しなくても英雄にも殺人者にもなれるということなのですから。つまり脳のせいにして堂々と嘘がつけるということなのです。

座キューピーマジックHP : http://cupid-magic777.com/

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