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日本語教育史を学んでいる最中に思い浮かんだ一冊

今年の10月から「日本語教師養成講座」に通い始めた話を先日書きました。

54の手習い。
2〜3週に一度訪れる単元小テストに四苦八苦しながらも、興味をそそられる授業内容に引き込まれ勉強に励んでいます。

ここ2回の授業では「日本語教育史」を学びました。
1930年代、日本がアジアの国々を植民地化し、彼らの母語を日本語に置き換えようとした様子を教わったわけですが、講義を受けながら私の頭に浮かんだ一冊が今日のタイトル写真に使用したコレ↓です。

「ひとりの記憶〜海の向こうの戦争と、生き抜いた人たち」橋口譲二 著

読了日記、見つからず


読書が趣味なので読了した本は全てfacebook/instagramに投稿しているのですが、約2時間ほど探しても見つからず徒労感に襲われています・・・。
iPadスクロールしすぎで人差し指も疲れました。

サラッと説明しますと、写真家の橋口譲二さんが1990年代に、かつて日本が統治していた国々に行き、そこで今なお暮らしている日本人を探して取材した一冊が本書です。


2016年に出版された本書を読んだ私が(確か)facebookに投稿した時は、「秋永正子(ポナペ)『お父さんの生まれた国、非常に良かったと思いますよ』」の章が一番印象に残っていました。


私の心をとらえたひとり

この女性は、マリアナ諸島、サイパンに近いポナペ島に在住する72歳(1996年4月現在)。
1925年生まれが私の祖母と同じなので、よけいに興味を持ったのかもしれません。

女性・秋永正子さんは日本人の父と、この島在住のポリネシア人の母との間に生まれます。
お父さんは大正3年に佐賀県から南洋貿易の社員としてこの島に赴任して来ました。
村の酋長の娘だった正子さんの母と結婚し、現地の学校では日本の教科書を使って勉強した、と書かれてあります。

彼女が12歳の時に姉と日本を訪れ、各地を旅したようです。
面白いのは、「9月の末ごろから寒くて寒くて」。
7月7日に日本に上陸した彼女たちは、10月3日に帰路の船に乗りました。
やはり南洋と比べ、日本はだいぶ寒かったようですね。
これが1937年の出来事だったようです。

戦争が終わった時、正子さんは二十歳。
日本は負けたので当然引き揚げることになるのですが、正子さんの両親のように現地人と家庭を築いている人も多かったので、そのまま現地に残ることを希望した人もいたものの、日本人が大勢残ると、再び日本の影響力が強まることを恐れたアメリカ軍が、兵隊を含め民間人も全員が日本へ引き揚げるようにと決定を下しました。

私が驚いたのは、二十歳で日本へ引き揚げた(と言うか、彼女にしてみれば初めて日本に居住したと言うべきでしょう)彼女は、日本で働き結婚し45歳まで過ごした後、お母さん(お父さんは日本で亡くなってしまった)と正子さん夫婦、子供たちとでポナペ島に帰ったことです。

四半世紀も住んだのならもう日本の方がポナペより長いだろうし、子供たちも日本で生まれ日本の学校で教育を受けているなら、高校生になって今さら彼らにとっては未知の国に住む選択が、私には意外でした。

また、正子さんのだんなさんというのが、パラオ出身の日本人。
彼もまた、生まれた島の近くに居住したい思いがあったのでしょうか。

著者が取材した当時、正子さんは長男家族と四男家族とで合わせて「22人ぐらい」で生活していました。

日本がいわゆる南洋諸島を植民地にしていた当時は、そこもまた日本なのだから当たり前と言われれば当たり前なのですが、定期船が日本とを航行しており、日本人や現地の人々がふつうに移動していたし、日本でお肉屋さんと正子さんが出会うのですが、その女主人の息子がポナペの近くのトラック島に出兵していたとか、当時の日本は今よりもずっと国際的だったような気がします。

再読したい一冊

講義を受けている最中にふっと思い出した一冊ですが、今回、この本について書いておこうと開いた時に、改めて他の章も見る機会がありました。

今、日本語教師養成講座で日本語教育の歴史を学んだからこそ、興味を引かれる章もあります。

また、講座では日本の少子化に伴い、海外から「働き手」に来てもらっているわけですが、こういった人たちにまつわる在留資格などについても触れています。
主に、日系人を優遇している感があるのですが、私が学んだのは日系ブラジル人と日系ペルー人の3世に与えられる「定住者ビザ」。
コレがあれば、就ける職種がぐんと広がるのです。

その時は、「ほほう。やっぱ、日本から移民した人たちの子孫ていうのは日本政府も『出自』的に見て安心なのね」と思ったのですが、この本を読むと、マリアナ諸島にも多くの「日系人」が居そうな気がします。

他の章でも、日本から統治下の国に渡り、敗戦後、帰国しなかった人、できなかった人の事情などが紹介されています。
これを機に、もう一度読んでみたいと思った一冊です。




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