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韓国も日本も地域によって様々(「どこにいても、私は私らしく」#44)

大学院の授業などで「日本人はどう思う?」と意見を聞かれることがよくある。そういう時、「私が日本人の平均とは思わないけども、私はこう思う」と答えている。私の答えを聞いて、日本人はそう思うと思われても困るからだ。当然だが、韓国人も人によって様々なように、日本人も人によって様々。特に日本は韓国に比べて南北に長く、気候や風土が多様なだけに地域によっての差は韓国よりも大きいように感じる。

新聞記者は転勤が多く、私も9年の間に奈良、富山、大阪、東京と4ヶ所を経験した。それ以前に高知にも長く暮らし、それぞれ違いを感じた。例えば、富山の人はまじめな人が多いと感じた。データで見れば、持ち家率が高い。周りでも若い時から家を購入するためにこつこつお金を貯める話をよく聞いた。暮らしてみると、富山は雪がよく降るので、冬は活動が難しい。読書をするなど家で過ごす時間が増える。暖かい時期に働けるだけ働く。こういう生活パターンが性格にも影響している気がした。持ち家率ランキングを見れば、北陸や東北など雪の多い地域が高いのが分かる。

ところが、一度旅行や出張で行った日本がどこの地域であれ、そこが「日本」というイメージを持つ韓国の人も多いようだ。一度日本へ旅行で行ったことがあるという韓国人の友達が「日本人は秩序を守ると聞いていたけど、意外に赤信号でも道路を渡る人がいた」と言うのを聞き、思わず「それはもしかして大阪だった?」と聞き返した。果たしてそうだった。私の経験上、赤信号でも状況を見て渡る人は比較的大阪でよく見かける。もちろん大阪の人も大半は信号を守るのだが、よく言えば融通が利く傾向がある。東京は人が多いから、みんながきっちり秩序を守らなければ大変なことになるのかもしれない。

一方、韓国で運転をするには融通が利かなければ難しい。日本と違って右側通行だが、右折は赤信号でもできることになっている。当然、横断歩道に歩行者がいたら停車しなければならないのだが、歩行者がいないのに信号が青に変わるのを待っていると後ろの車にクラクションを鳴らされる。信号通りに動けばいいわけではないのだ。

日本で放送局のプロデューサーに聞いた話だが、東京で撮影をする時は、道行く人たちは見て見ぬふりをする人が多く、撮影に支障が出ることは少ないという。ところが大阪では「何撮ってんの?」「いつ放送するん?」を声をかけてくる人が多く、撮影が難しいと言っていた。逆に道行く人に意見を聞くような撮影では、急にマイクを向けても積極的に答えてくれる人が多い大阪の方がやりやすいとも言っていた。

確かに、大阪では知らない人に声をかけられることが少なくない。例えばスーパーで買い物をしていて横から知らないおばちゃんが「こっちの方が安いで」と教えてくれたり、というのは大阪ではたまにあるが、東京では経験したことがない。大学生の頃、朝早く自転車でバイト先に向かっていると、向こうから歩いてきた知らないおじちゃんに「姉ちゃん、朝帰りか?」と大声で言われて恥かしかったのも、大阪で、だ。韓国でも、道を聞かれたり、時間を聞かれたり、たまに「携帯電話貸して」とお願いされたり、知らない人に声をかけられることは多い。

だからかもしれない。日本に留学したという韓国人のうち、「何年いても日本人の友達と付き合うのが難しかった」と言うのは東京など首都圏が多く、大阪含む関西圏に留学した人はわりと日本人の友達とも親しく付き合っている場合が多いようだ。もちろんこれもケースバイケースだが、私自身がそうだった。大阪・高知出身の私は、東京にいた間に新たに仲良くなった友達は少なく、もともと大阪や高知で知り合って東京にいる友達と遊ぶことが多かった。理由は分からないが、人があまりにも多く、みんな忙しそうな雰囲気のため、親しくなるまでの壁があるのかもしれない。

私は韓国ではソウルと、ソウル郊外のイルサンにしか暮らしたことがないので、韓国の首都圏以外はあまり分からない。機会あるごとに地方へ足を延ばしてはいるが、暮らさないと分からないことは多いと思う。ただ、年に数回行き、知人も多い釜山について言えば、親近感を感じることが多い。言葉では少し荒っぽくても、実は情があるというのが、なんとなく大阪の人と似ている。第二の都市、港湾都市という共通点もあり、実際に行き来が多いのもあるだろう。

一言で日本、日本人、韓国、韓国人はどうとは言えないのを心得たうえで、日本についても韓国についても、もっといろんな地域に出向いて、肌身で感じてみたいと思う。

ヘッダー写真によせて:大阪出身者として親近感を感じる釜山。海雲台の海辺を走るカラフルなスカイカプセルは新たな観光の目玉になっている。

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成川彩(なりかわ・あや)
韓国在住映画ライター。ソウルの東国大学映画映像学科修士課程修了。2008~2017年、朝日新聞記者として文化を中心に取材。KBS WORLD Radioの日本語番組「玄海灘に立つ虹」レギュラー出演中。現在、韓国の中央日報や朝日新聞GLOBEをはじめ、日韓の様々なメディアで執筆。

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