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文学からみる100年前の韓国の食べ物

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文学に綴られてきた「韓国の食」が、100年の時を経て、コリアン・フード・コラムニスト八田靖史によって生き生きと蘇る。 さぁ100年前の「食の文学紀行」へ出かけよう。
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#ソルロンタン

無視するべからず ソウルのソルロンタン/牛耳生著『別乾坤』1929.12

 ソルロンタン(牛骨や牛肉を煮込んだスープ)と聞いただけでも、かぐわしい香りが鼻をくすぐり、腹の底から食欲がわいてくるようだ。無粋な人たちは、においがどうとか、店や食器の清潔さがなんだとか、つべこべ言う。  だが、それは本当のソルロンタンを知らない不幸な人だ。  試しに1度、ソルロンタンからガツンとした香りを抜き、トゥッペギ(素焼きの器)ではなく真鍮器や陶磁器に盛り付け、刻みネギを凝った薬味に置き換え、粗塩と粗びきの唐辛子を濃口醤油と細かくひいた粉唐辛子に変更して食べたと