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文学からみる100年前の韓国の食べ物

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文学に綴られてきた「韓国の食」が、100年の時を経て、コリアン・フード・コラムニスト八田靖史によって生き生きと蘇る。 さぁ100年前の「食の文学紀行」へ出かけよう。
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#タッペギクッ

全州名物 タッペギクッ/多佳亭人著『別乾坤』1927.3

 平壌のオボクチャンクッ(牛寄せ鍋)、ソウルのソルロンタン(牛スープ)が名物ならば、全州名物はタッペギクッ(豆モヤシのスープ)であろう。  名物というと何か特別な珍味のようにも思えるが、実のところそうではない。オボクチャンクッやソルロンタンと同様に、身分の上下なく誰からも愛され、値段も手ごろ。それでいて味は素晴らしく、酔い覚ましにも効果があるのだから、他地域の名物と肩を並べるだけの資格は充分だ。  むしろある面では、オボクチャンクッやソルロンタンの上を行くと言えなくもない