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ミャンマー 暫定非国家的国家

ミャンマーは、非国家主体によって分割されつつある。しかしそれでもなお、ミャンマーはアフリカや中東の一部を悩ませている破綻国家とは質が異なる。現在進行中の内戦で暴力が蔓延しているにもかかわらず、5,500万人の多様な民族が暮らすこの国は機能している。

内戦から3年が経過し、国家行政評議会(SAC)傘下の軍事政権が権力を失いつつあるのは明らかだ。当初、ミャンマーの熟練した国軍が、人民防衛軍(PDF)や民族武装組織(EAOs)に戦術的敗北を喫すると予想したアナリストはわずかだっただろう。しかし、クーデターから1年後、PDFの熟練度と装備が向上し、EAOsとの連携を強化したのちは、SACの旗色が陰り始めた。

SACの致命的な誤りは、国民の実際の支持を得られないまま、二正面戦争を始めたことだ。従来の敵対勢力である非ビルマ系EAOsのみならず、ビルマ系反体制派とも戦争状態に入った。PDFとEAOsの勢力は、現在、軍事独裁政権の打倒と、国家再建革命の遂行を大義に掲げ、文民主導の国民統合政府(NUG)に暫定的に帰順している。

2023年10月、ミャンマー国民民主連合軍、タアン民族解放軍、アラカン軍からなる三兄弟同盟が、中国と国境を接するシャン州北部で組織的な攻撃を開始し、20の町と多くの前哨基地を占領した頃、軍政はすでに大きな課題を認識していた。戦えば戦うほど、人員と士気が削られ、政権の敗色は濃くなっていた。

ミャンマー国家を唯一の為政者たるはずのSACだが、ミャンマー国内の実効支配範囲はますます小さくなり、人心は離れている。主要都市など、未だ支配権を保持している地域でも激しい抵抗に直面している。国内には、政権が支配を維持するために戦わなければならない地点が増えている。

航空戦力や火力における優位性にもかかわらず、SACは、ネピドー・ヤンゴン・マンダレーなどの主要都市での防衛戦を余儀なくされる。1945年のベルリン陥落や1975年のサイゴン陥落のような劇的な崩壊は起こらないかもしれない。国軍の崩壊は、部隊が命令に従うことを拒否し、戦意を失うことによる、空洞化と自潰のようなものかもしれない。SACが徴兵法を施行したのは、部隊の練度と士気の低さへの絶望の表れである。当然ながら、徴兵候補者は国外脱出や贈賄によって徴兵から免れようとしている。

ミャンマーが無法地帯であるとか、政府が存在しないということではない。むしろ、統治と権力は、その再構築の過程で拡散している。たとえば、タイと国境を接するカレンニ州では、カレンニ民族進歩党とカレンニ民族人民解放戦線の両党がSACに対して勝利を収め、州内の多くの「解放」地域がカレンニ暫定行政評議会の管理下に入った。

他の非国家主体も他の場所で定着し、支配的な存在となりつつあり、SACに代わりミャンマーを支配し統治している。ミャンマーの隣国や、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国にとっての課題は、内戦が終結し、各反体制勢力間で国の将来について対話と交渉が行われるまでの暫定期間に、非国家主体で構成されるミャンマーにどう対処するかを学ぶことである。

ASEANは各国の独立自決を重視する自国家中心主義を採るため、その加盟国は未熟な新生ミャンマーとの関係を扱い、管理するのに適していない。2021年4月に打ち出されたASEANの5点合意(5PC)は、SACへの対処を前提としていたため停滞している。災害管理に関する人道支援のためのアセアン調整センター(AHAセンター)が5PCに含まれたことは、ASEANのミャンマーに対する国家中心のアプローチが見当違いであることを象徴している。AHAセンターは、平時における自然災害の地域管理のために設計されたものであり、内戦下の人道的仲介機関として設計されたものではない。

タイが発表した、内戦の影響を受けたタイ・ミャンマー国境沿いのミャンマー人を援助・支援するための「人道的イニシアティブ」も、同様の欠点を抱えている。国家単位での対応に慣れているタイのイニシアチブは、EAOsとの事前協議なしに実施され、SAC傘下の官僚組織であるミャンマー赤十字に頼っている。

雑多な非国家主体との提携は難しい。NUG、PDFs、EAOs、そしてそれらのさまざまな機関の中の民族や非国家主体は、近隣諸国や国際社会が提携できる代替的な国家当局を組織せねばならない。これは気の遠くなるような過程だが、SACの打倒を掲げるならば、新国家建設の義務を果たさねばならない。

Understanding Myanmar as Interim ‘Non-State’ State (irrawaddy.com)

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