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The Guardian書評11月3週


11月15日「映画『ナポレオン』:ホアキン・フェニックスは皇帝の壮大な生涯を演じる」

監督:リドリー・スコット
評価:★★★★★(最高)
公開日:11月22日(12月1日)

〇多数の監督がナポレオンの栄光から敗北までを自らの作品で辿ってきたが、本作で彼は初めて立ち止まること無く上映時間の全てを駆け抜けた。ナポレオンについて英語圏では侵略者や暴君といった否定的な印象が定着しているが、母国では好嫌はともかくフランス人の現在と過去を構成する一部分である。本作にはフランス奴隷制の中興の祖は登場せず、もちろん夢想家で孤独な「チビ伍長」も登場しない。
〇ナポレオンは死後も人々を魅了して常に崇拝の対象とされてきたが、最近は下火で寧ろ彼の植民地主義に対する批評が目立っている。ナポレオンの亡霊は「共和国の普遍的価値」と多文化社会との間で揺れ動く現代フランスを彷徨っている。

日本公開日の12月1日(金)は大変嬉しいことに「映画の日」です!

「映画の日」(出典)映画産業団体連合会

11月10日『イスラエル軍の空爆による市民の死亡率は過去の紛争よりも高い』

〇10月7日の開戦日から市民の死亡率は平均10.1人を記録しており、ガザ地区に対する過去3度の空爆による被害(平均2.5人)を大きく上回っている。アメリカはイスラエル支援に対する国際社会の批判を避けようと試みている。確認できる過去276回の空爆で最も爆弾1発当たりの市民の死亡率が高い事例は、2016年のロシア・シリア両軍のアレッポ市に対する空爆(平均22.9人)である。


11月11日『スーラ・ブラヴァマン:警察を貶める内務省の人物は政府に居場所が無い』

〇12日の終戦記念日に予想される親パレスチナ集会を禁止するため、スナク首相とブラヴァマン内務大臣は首都警察の長官に圧力を掛けていた。しかし長官はスナク政権の期待に反して集会の禁止を保留し、通常の抗議活動と同様に警備レベルの引き上げで対応すると回答した。
〇30万人が参加した集会では反ユダヤ主義的な表現も確認されたが、主催者は協力的で大部分の参加者は平和的だと首都警察は評価した。親パレスチナ集会に反対する極右集会の参加者は千人だが、大戦慰霊碑での警察官への暴力や違法物の所持で145人が逮捕された。
〇親パレスチナ集会を「ヘイト行進」「イスラム主義」と表現した内務大臣は、警察の独立性と集会の安全性を脅かした事由で解任された。


11月11日『オーストラリア沿岸部で洋上風力がクジラを殺すという間違った主張が如何にして制御を失ったのか』

〇2030年までに総発電量の82%を新電力に置き換えるため、アルバニージー政権は4箇所に合計200基の洋上風力タービンを設置する。最初の段階としてニューサウスウェールズ州のハンター沖とイラワラ沖に建設される。地元のSNSや海岸では科学的な根拠の無い情報や捏造された情報が氾濫している。
〇一方で洋上風力の反対派は地元民や漁業者、観光業者、そして新エネルギー開発に反対する地域外の連邦議員で構成されている。他方で洋上風力の賛成派は産業界や労働組合、教育機関、環境団体、地方議員、同地域を基盤とする連邦議員で構成されている。
〇洋上風力タービン1基が1回転当たりに生み出す発電量は平均的な太陽光パネルの1日分に相当する。隣接するビクトリア州ギップスランド沖の建設計画では同州の電力需要の2割に相当する電力量を賄える。


11月11日『中国企業は如何にウイグル族とヨルダン川西岸への弾圧と関連しているのか』

〇イスラエル入植者は西岸C地区の1割を5年間で、昨年だけで同地区の110平方kmを占領した。イスラエルに占領された東エルサレムとヘブロンでは警察と入植者が設置した監視カメラが個人を抑圧している。「自動的な隔離」や「デジタル弾圧」と人権団体から非難されているイスラエルの植民政策は、ウイグル族を弾圧する中国企業Hikvisionの顔認証技術に支えられている。10月7日の開戦日からイスラエルの治安当局と入植者には西岸地域の居住地や難民キャンプに対する略奪や占領が確認できる。
〇Hikvision社は人種や民族、年齢の識別機能を製品の宣伝に用いており、抗議活動の探知と警告を実施する機能も組み込まれている。イスラエルは東エルサレムに顔認証システム「マバト2000」、西岸地域300万人の個人情報「ウルフパック」を所有している。


11月12日『フランスの政治家1000人がパリで反ユダヤ主義に対する行進へ参加した』

〇サルコジ元大統領やオランド元大統領の他に反ユダヤ主義を掲げていたルペン党首を含む10万人が参加した。左派ユダヤ教徒は極右党員の参加を阻止できず、ダルマナン内務大臣は「素晴しい市民行進」と絶賛した。
〇フランスには欧州最大のイスラム・ユダヤ教徒のコミュニティが存在しており、開戦後から1250件(昨年度の3倍)の反ユダヤ活動が報告されている。全国各地で反ユダヤ主義に対する70以上の集会が開催され、被害者家族の他に極右派の国民連合(国民戦線)も参加している。同党は「イスラム原理主義」に対抗するためイスラエルを支援しており、党首の親世代から反ユダヤ主義を掲げている。
〇フランス共産党や「不服従のフランス」は反ユダヤ主義に対抗してきたが、反移民を掲げる極右政党の参加を非難してパリの行進には参加しなかった。緑の党や他の左派政党、労働組合も行進に参加したが、極右政党との衝突を回避するため間隔を開けていた。




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