The Guardian書評9月4週

9月19日「フランスは記者の逮捕後『報道の自由』に対する攻撃として非難される」
 ラブリリュ記者はリビア国境で活動する密輸業者を殺害するため、エジプト政府がフランス諜報機関(DGSI)の情報を利用していたと2021年末に発表した。DGSIの「サーリ作戦」は情報漏洩の指摘にも拘わらず継続され、2016年から2018年まで最低でも19回の爆撃で利用された。9月20日「メロニ首相『イタリアが欧州の難民キャンプに変貌することを許可しない』」 数千人の難民が上陸するフランス・イタリア両政府は南部の沿岸警備を強化する。シチリア諸島南部のランペドゥーサ島に北アフリカ出身の移民が大挙しており、イタリア半島には昨年の2倍に相当する12万7千人が上陸した。物資不足や衛生悪化による収容施設からの相次ぐ脱走事件を受けて、フランスはイタリアとの国境や沿線で「対テロ作戦」を実行した可能性がある。最大の出港地である北アフリカのチュニジアとEUは密航を防止する協定を締結した。

9月21日『インド下院は3割の議席を女性に割り当てる法案を可決した』 
 法案では現在13%を占める女性の議席を3倍に増加させる。初出1996年で最低6回も提出されたが、有力者や議員から激しい抵抗に曝された。今度は法案が概ね全会一致で可決され、上院でも順調な進行が予想されている。しかし施行に必要な人口調査は2011年から実施されておらず、選挙区の再区画は2026年である。可決後の下院では与野党が法案の貢献者を巡って8時間の論戦を繰り広げていた。女性労働者の3分の1が正規雇用だが、正当な社会的評価を獲得していない。

9月24日『コソボ警察とセルビア武装集団の膠着状態は双方4人の死亡で終了した』
 国境付近の村落Banjskaで複数の警察官が襲撃され死傷した。セルビア正教会の修道院で発生した銃撃戦では襲撃者3人が死亡した。集合団地では30人の武装集団が当局に包囲された。逮捕者は数人で事件は収束しておらず、コソボ側の検問所2か所を閉鎖した。セルビア正教会が管理する土地への侵入は禁止されており、コソボ・セルビア両政府の関係を悪化させる可能性がある。

9月26日『ナゴルノ・カラバフ危機は西側諸国に従来のアゼルバイジャン外交を再考させる』
 アゼルバイジャンは熟達した外交と陳情で天然資源の供給者や安全保障の提携者としてEU諸国との関係を構築してきた。EU諸国ではナゴルノ・カラバフ住民の人権を侵害した軍事侵攻を受けて同国との関係を見直す動向がある。同地域に駐留するロシア平和維持部隊は軍事侵攻を見過ごし、同国政府は同盟国であるアルメニアを非難した。アゼルバイジャンは長年に渡りキャビア外交と称される西側諸国への賄賂で資金洗浄していた。2020年の紛争後も緩慢な姿勢で臨んでいた西側諸国だが、エネルギー取引の不透明性から制裁に踏み込む可能性がある。

9月26日『フランス撤退により失脚したニジェール元大統領の同盟者に権力回復の期待が高まる』
 フランスの大使館職員と駐留部隊の撤退が決定したことで、ニジェール軍事政権は反「新帝国主義」を口実に権力を掌握する機会を喪失した。2021年にサヘル地域の安定化を約束した元大統領は7月26日に同地域で兵士に拘束された。対イスラム主義で協調していた旧宗主国フランスとの関係は、フランス政府が元大統領を支持したことで急激に悪化した。今年3回目のクーデターが発生したブルキナファソ、政情不安定なマリといった他のサヘル諸国からもフランス駐留部隊は撤退を検討している。フランスに対して蓄積された不信感への過小評価、ロシアの情報攪乱による敵対感情の利用が、サヘル地域における影響力の喪失と政情不安を引き起こした。フランス撤退により軍事政権は治安悪化や汚職蔓延といった国内問題をクーデター正当化の材料とする可能性がある。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?