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The Guardian書評11月1週


10月26日『中東地域の米軍基地へのイスラム過激派の攻撃で深刻化が懸念される』

 イラン傘下の民兵組織がイラクとシリアの米軍基地を複数回に渡り攻撃し、アメリカ政府は25人の死傷者を受けてシリアの軍事施設を空爆した。アメリカは対ミサイル部隊の配備に空母2隻を地中海へ展開しており、イスラエルに対して到着まで地上侵攻を控えるよう依頼した。イエメンに展開したイラン傘下のフーシ派組織がイスラエルに対して発射したミサイルを米海軍の駆逐艦が迎撃した。
ヒズボラはUAEとクウェートの米軍基地に対する攻撃を予告しており、ゴラン高原の付近にもシリアからイラン傘下の民兵組織が展開している。レバノンでヒズボラとハマス、イスラム聖戦の指導者は共同声明を発出した。イスラエルはシリアに対して報復攻撃を繰り返しており、以上は中東地域の情勢を急激に深刻化させている。


 ブリンケン国務長官はバイデン政権への批判を回避するため、パレスチナ問題に関するアルジャジーラの報道活動を自粛するよう依頼した。またアメリカは同局の報道が有するアラブ諸国の世論への多大な影響力も懸念している。イスラエルの勧告でガザ南部に避難した特派員長の家族が同国の空襲により殺害された事件はアラブ市民に共有された。
同局はカタール王室から財政支援を受けており、他のアラブ諸国がイスラム過激派を扇動したと主張している。イスラエルは同局の事務所を閉鎖したが、以降も同地域での報道活動は継続されている。


10月27日「『なぜ沈黙を?』キルギスでの凄惨な攻撃で女性への暴力が注目される」

 北部の村落セレクショノエで女性が執行猶予中の元配偶者から深刻な後遺症が残る暴行を受けた。12年で300人の女性が配偶者や交際者に殺害され、約7割の殺人者は死体を遺棄しようと試みた。法的枠組みではなく法執行機関の姿勢に問題があると指摘されている。世論の注目は助力となる一方で急速に変化するため、法執行機関に責任追及の伝統を確立させる必要がある。


10月29日『カザフスタンはアルセロール・ミッタル鉱山の犠牲者45人を慰問する』

 カラガンダ州のコステンコ石炭鉱山で発生した爆発事故により少なくとも従業員45人が死亡した。爆発の衝撃は2km以上に及び空気が薄いため、坑道内に取り残された従業員の生存は絶望的である。2006年にも同国ではアルセロール・ミッタル社が管理する他の鉱山で合計46人が死亡した。独立後の経済不況で1995年に誘致された際には期待されていた同社だが、運営資金や安全管理の不足から労働組合は国営化を要求していた。政府は事故後に同社が管理する鉱山の国有化、同社との取引関係の終了を発表した。


10月29日『群衆がイスラエル旅行客を捜索するためウイタシ空港を襲撃する』

 タジェスタン共和国はコーカサス北部に位置するロシア最大のムスリム地域である。空港とホテルの包囲で29人が重軽傷を負ったが、イスラエル旅行客は退避していて被害がなかった。襲撃に参加した人物のうち150人が特定され、60人が逮捕された。襲撃者はテレグラムに投稿された大量の偽情報に扇動され、旅行客への加害とイスラエル政府の非難を計画していた。
 タジェスタン政府はパレスチナ連帯と非武装者への加害は別だと発言した上で、暴動の原因である偽情報が「我々の敵」により拡散されたと主張した。宗教当局は800世帯のユダヤ教徒を彼らが集住している南部の都市デルベントに避難させる必要性を示唆した。ウイタシ空港が位置するマハチカラ地方に加えて、隣接するカバルダ゠バルカル地方でもユダヤ教施設が放火された。


10月30日『バングラデシュで野党の指導者が投獄され集会は暴動へと変貌する』

 野党は無党派への政権交代とアワミ連盟(親インド)のハシナ首相が辞任するよう請求している。バングラデシュ民族主義党のアラームギル首席秘書が逮捕され、ストライキ側と治安部隊との暴力的な衝突が全国に拡大している。アラームギル氏の法的手続きが長期化することを懸念して、野党は抗議活動を拡大する可能性が高い。アワミ連盟は要求事項を受諾するまで野党と対話しない姿勢を示している。
暴動に関連して治安当局は1300人を調査の対象とし、野党勢力の指導者らが家宅捜索を強要された。野党勢力や人権団体は政府が反対意見を抑圧していると主張した。


10月31日『イスラエルとガザ地区で戦争犯罪は起きたか、何の国際法が適用されるか?』


 
1949年のジュネーブ条約を主軸とする「国際人権法」と「武力紛争法」では非戦闘員への対応と制限される戦闘を規定している。「集団懲罰」を禁止する議定書にイスラエルは批准していないが、慣習的な国際法に含まれているため全ての国家が拘束される。同様にイスラム過激派の組織的な非戦闘員の殺傷や誘拐、市街地に対する砲撃も国際人権法に違反している。イスラム過激派の法的位置には諸説あるが、ICCは保護と拘束の対象だと主張している。
 2015年のパレスチナ加盟からICC調査をイスラエルとアメリカはローマ条約の締約国ではないため拒否している。ICCは占領地の法的な管轄権を2021年に取得したが、イスラエルの反発により以降の調査は停滞している。イスラエル占領地の調査を申し立てた国は3か国だが、ICCは2014年の植民政策にまで遡及して再調査を開始した。



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