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『香憶』

『香り』というものの存在を僕は嘗めていた



人とすれ違った瞬間


一瞬で記憶が蘇り、
言葉が聞こえ、その時の情景が目に映る
息ができなくて、胸が痛く…冷や汗が流れた





苦し紛れに香りの主を見つけようと顔を上げた、
しかし既に主はいなくて…
自分の心臓の音だけがやけに大きく聞こえた


冷静になるまで時間がかかりそうだと頭で解っていながら…巡る言葉があった



『 君だったら』と






『 君じゃないのに』

『 ここには決して居ないのに』




時間が経つにつれて冷めてきた頭で心も思い出達も押し込める




イラつきと嬉しさと…ぐちゃぐちゃな気持ちでいると目の前がぼやけてきた

何だろうと瞬きをした…



そう、『好き』が流れ落ちた。


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