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グローバル人材への道?子連れ海外ボランティアへ

2023年も暮れようとしている今日、大掃除は済ませてあるけれど、今夏の我が家の海外ボランティア体験について、周囲から沢山のご質問を頂いたので、記憶が古くなってしまわないうちに、情報の整理整頓をしておきたい。お子さんを伴った海外旅行の一形態として、今後同様の活動への参加を検討されている私の友人・知人の参考の一助になればと。


1.きっかけと、先に顛末を!

美しい棚田と手付かずの自然が広がるタイ北部、小数山岳民族の村

 今春に小学4年生になった長女は、海外への憧れが強い。小学校入学の年は、コロナ禍がちょうど始まったばかりの、そうあの2019年。保育園の卒園式は縮小、入学式は6月にずれ込むという、コロナ禍とともに始まった小学校生活。それから3年間は、学校の各机にはパーテーションが備えられ、黙食というものを強いられ、運動会は学年ごとの入れ替え制という低学年時代を過ごす。外出もままならない日々が続くから、本の虫となり、2年生の後半にはハリーポッターを読み始め、読破した3年生の頃から、イギリス・ロンドンを訪れることを夢想するように。イギリスでなくてもいいから、とにかく海外に行ってみたいと繰り返し懇願してきたこの長女をタイ北部へ連れ出すこととなったきっかけは、前項 「単なる旅行はもったいない!?「探求」の夏旅 で書いた。

 イギリスのような先進国への旅行とは真逆の環境、電気はかろうじて通っているけれど、トイレは水洗ではなく、お湯のシャワー設備はない。なので、夕方のまだ日差しが残る時間帯にほったて小屋の中でホースでシャワーを浴びた4泊。食事は、滞在先の村の方が準備してくれる米飯と2種類の野菜を中心としたスープや炒め物といういわゆる素食の類の食事が続く。後段2.で書くような背景のある地域で、3.で詳述する、午前・午後ともにボランティア作業に従事しながら、滞在山村の子供達とは、5日間で沢山交流し、出発ぎりぎりまで一緒に遊ぶ仲となった。

滞在先の山村での毎日の食事はこんな感じだった

 4泊5日のボランティア活動を終え、麓の市街地まで戻ってきてすぐの長女の感想は、「ママー、私の日本での生活が便利なものだったなんて、知らなかったよ。」というもの。また、「言葉が通じなくても、友達にはなれるんだね。」という感想も。
 我々の参加した、ボランティア活動で事前に配布される資料の中には、12条からなる「現地で期待される心がまえ」が明記されているが、そのうち「(6)不便性への回帰、非日常性の追求、異文化接触」、長女はまさにこれを体現してくれたと思う。このボランティアは、私自身が大学一年生の時に、私の恩師が始動して、私の人生を変えた取組。今も連綿と受け継がれているこの事業で、恩師が私を含む参加者に伝えてようとしてくれた、「世界は地平線上につながっているんだよ」という教えを、今年、愛娘たちの意識の奥深くに根付かせることができたのではと考えている。

2.(よくある質問)で、どこに行ったの?

まだまだ調理には火が使われる。電化製品の揃う家庭は極々一部の裕福な世帯のみ。

 滞在先は、タイのバンコクから1時間20分の飛行で降り立つ、第二の都市チェンマイの市街中心部から車で約4時間を要して到着する山間部。標高900メートルの場所にある、カレン族という山岳小数民族の居住集落。世帯数は約100、400人強が暮らす村。
 チェンマイ、隣接するメーホンソン、チェンライの3県には、他にも様々な小数山岳民族が、そう呼ばれるように山間部の不便な立地に、集落を形成している。恩師の言葉を借りれば、『グローバリゼーションの恩恵から取り残され、「マージナライゼーション(周縁化現象)」の環境下で理不尽とも言える不利な現実に甘んじている』人々の住む集落の民家に、我々を含む参加者20名が分宿して、その目的「寛厳あわせもつ大自然に囲まれた北タイ小数山岳民族山村において、現地山村のイニシアティブに基づく労働作業等を介して、熱帯林の再生、村人の健康増進、換金性農業の振興、および参加者の自己啓発に資する」の達成を目指して活動した。

3.(よくある質問)で、ボランティアって、何したの?

「育ってくれますように!」と心を込めて植樹する長女

 今後、この事業が活動する各山村のニーズに応じて、ボランティア参加者が行う作業は異なると思われるが、我々が今年8月15〜19日(メインの参加者となる大学生は、より長い8月24日までの10日間)に行ったのは以下。
(1)苗木移植:熱帯林の再生を目指すもの。
(2)養蜂箱作成:在来種のミツバチの養蜂の普及により、集落の収入向上、とくに、主たる産業の農業への従事が困難なお年寄りや障害のある村人の収入源となることが期待されている。また、村の方々の健康増進への寄与も目指して行われている。
 なお、カレン族の平均月収は6,000バーツ(2023年8月時点の円バーツ換算レートは1バーツ=約3.8円)で、チェンマイの大学教授は月2−3万バーツというから、養蜂箱1箱あたり、毎月1,000バーツの収入増につながるとの説明によれば、我々の作業(10日間で100箱の製作を目指した)は、決して小さくない寄与だ。

4.グローバル人材になるための基盤

近隣の小学校を訪問後の記念撮影

 コロナウィルスが席巻した過去数年は、グローバリゼーションの負の側面が露わになった顕著な例かもしれない。でも、娘たちがこの夏に経験したのは、グローバリゼーションの正の側面だ。ヒトモノカネの移動が活発化して久しい昨今に、紙面上の二次元の情報だけでは決して学ぶことのできない、突き動かされる感情や感動と共に、自分とは異なる環境下の暮らしや人々の記憶が刻印されているはずだ。 
 私たちが滞在したカレン族の集落に関して、帰国してから今でも懐かしく思い起こされるものとしてよく話題にするのは・・・手付かずの美しい大自然、都会では想像もできない夜空を埋め尽くす満点の星空、清廉な空気だ。早朝、地平線から昇る朝日を見ながら、美しい棚田に流れ込む小川の音を聴きながら毎朝歯磨きをする。子供達にとっては、友人となった同年代のカレン族のお友達との時間もかけがえのない思い出だ。
 国同士が簡単に行き来ができるようになって、インターネットのおかげで世界の隅々まで、関心を持てば、スクリーンの中には様々な世界の日常が映る。その別の日常や現実に、子供達が自分自身の身を置いて新たな経験をし、その時を満喫し、考え、学んだ貴重な時間、それが私たち家族が海外のボランティア活動を通して得たものだ。
 自然の素晴らしさ、厳しさについては、このボランティア事業を我が恩師から受け継いで主宰される富田さんの御著作がその奥深さとともに語ってくれているが、まるで日本の都市が遠い昔に置いてきてしまったかのような雄大な自然とその美しさ。そんなものが、飛行機を乗り継いで、四輪駆動で山道を延々と上った先に、自分とは異なる生活様式と様々の困難とともにいきている人々と触れ合い、温かい心の交流をして(7歳の次女は、カブトムシ取りに連れて行ってくれたり、のんびり食事する自分を決して急かさず、最後までつきあってもくれた村のおばあちゃんの優しさが忘れられないと言う)、自分のくらしとの差異や、共通するものだって見出しながら、『異文化を異としない』という、これまた私の恩師の教えを胸に刻み、グローバルな場で生きる基礎をつくって帰国してくれたことと思う。

 帰国後、長女は、「学校の授業では、英語を話せるようになる気がしない」のだそうで、毎日オンライン英会話で英語でのコミュニケーションを磨いている。「うまく話せなくて恥ずかしという思いを(レッスン中に)することはいっぱいあるけれど、英語の勉強をやめたいと思ったことはない」のだそう。自分より英語が堪能だった同じ年頃のカレン族の子どもたちから刺激も受けたようで、今後は、母の私に外国でのコミュニケーションを依存せずに、滞在先のお友達と会話をしたいという強い希望に燃えている。母が想定した以上のものを得て、海外ボランティアから帰宅してくれて、今後は彼女にどんなサポートが必要か、それとも母など用無しになる日も刻々と近づいているのかもしれないと思えば、寂しくも感じる2023年の年越だ。

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