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◆虎に翼、よねの過去、ものにする男

今日はよねの過去を掘り下げる回だった。


農村で娘たちを女郎屋に売る父親。
カフェーに通い、女を買う男たち。
女たちの売り上げをくすねる店主の男、また男。
困りごとがあるならと弁護士として助けると言って、よねの弱味につけ込んで手を出す男。
職を失い、噂から次の職も得られず困るよねの姉を、生活を、居場所を与えることで、彼女を思いどおりにできる男。


男たちの作り出す地獄。


抜け道はない。
虐げられて、利用されて、金を使って弄ばれて、依存させて縋るようにできあがっている。
そんな地獄。


SNSで見かけた投稿に弁護士の場面について言及したものがあった。

雨の日に外で作業をするよねに、弁護士は傘を差しだした。
よねを傘に庇護して、弁護士であること、姉を助けることを提示した。
提示した内容をよねが断れないことを見透かして、彼女の合意なく触れて、好きにした。
加害であり、よねを踏みにじる行為である。
しかし姉を思うと、よねは動けなかった。

雨から身を守る傘と法による助力は、相手を縛り、意思を削り、ものとして扱える手段になり得る。
男の弁護士を頼る、ということが、その時点で自分をものとして扱われる危険性があることを、弁護士の男の加害によって、よねは身をもって体験する羽目になる。

なぜか?

弱味だからだ。
助力がいる。ひとりで立てない。だれかに縋らなければならない。自立を阻む。だれかがいないとできない。
女性にとって、そうした仕組みが、文化が、偏見が、法が、やまほど存在するからだ。
そして、それをよく心得た男たちが女性をものとして扱う機会を探しているからだ。


手に入れたい女がいるのなら?
弱味を見つければいい。
放っておいても他の男たちが、社会が、弱味をいくらでも作る。
当時の民法は、文化は、社会は、男たちは女性に求める。
男が必要にならざるを得ない営みを。結婚を。出産を。
この不当な仕組みに声をあげず、問題が起きたら女性側が沈黙せざるを得ない状況を。


現代で、当時と比べて、なにがどれほど変わったろうか。
嘆きの声ばかりが聞こえてくる。


ボクはむしろ、男である自分の愚かな過ちを思い出す。
これまで思いを寄せていた人にも、付き合っていた人にも、自分がどんな振る舞いをしてきたのかを思い出す。
母が死を選んだ理由も。
母になった女性に、焦がれていた女性になんて愚かなつけ込み方をしようとしたのかも。
これまで女性に接してきたなかで、どれほど先に述べた醜い男のそれをボクも行っていたのかも。


感想は作品よりも、常に自分自身をまずは鮮明に映し出す。
作品について述べながら自分を透明化するよりも、ボクは浮き出る自分の正鵠を失することなく、捉えていきたい。


差し出された傘が自分をもの扱いするためなら、傘などいらない。
雨に濡れているほうがましだ。
自分が自分でいられるのだから。


虎に翼。
今日の日はさようなら。
またあした。

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