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レシピ覚え書き:麻婆豆腐地獄変 其の壱

唐突だが皆様は麻婆豆腐はお好きだろうか。この世に生まれ落ちてから既に30年以上経っているが、私は未だかつて麻婆豆腐を嫌いとはっきり言う人間と出会ったことがないので、恐らく地球上の全人類の8割くらいが麻婆豆腐を好きなのだと思う。私も幼少の砌から麻婆豆腐が好きだった。「あんたの産湯は麻婆豆腐だったのよ」と母親から言い聞かされて育ってきたし、青春時代を満州で過ごした母親の作る麻婆豆腐には味の分からぬ子供であった私にも鮮烈な印象を残したものだ。そういう嘘の記憶を捏造したくなる程に私は麻婆豆腐が好きだ。麻婆豆腐と心中するために生まれてきたと言ってもいい。流石に少し言い過ぎたかもしれない。

実際には母親が生まれた時には満州国はこの世界から無くなっていたし、母親の作る麻婆豆腐も醤油と味噌ベースの非常にジャパナイズされたものだったのであんまり印象に残ってない私ではあるが、親元を離れて一人暮らしを始めてから既に12年強、麻婆豆腐は学生の頃から今に至るまで自炊の選択肢として本当によく作ってきた。麻婆豆腐は簡単だし、安上がりだし、いっぱい食えて、しかも安定して美味いという、自炊をする上で最も大事な要素が全部ある。なのだけれども、恥ずかしながら本当につい先日まで市販の麻婆豆腐の素以外を使って調理したことがなかったのだ。

学生の頃には丸美屋の麻婆豆腐の素を使っていた。ひき肉入りでありつつ、とろみ粉にはネギ(っぽいもの)も入っている為、豆腐があればすぐに出来る。味も特にこだわりがなければ良い塩梅だ。しかしこの手のレトルトの宿命として、ずっと食ってると飽きる。そんな折に出会ったのが、日本ハムの「中華名菜 四川辛口 麻婆豆腐」だ。かの中華の鉄人、陳建一監修と謳っているこの麻婆豆腐の素、これが今までの私の麻婆豆腐の価値観を一変させるほどに美味かったのだ。その完成度たるや、日本ハムの中華名菜シリーズの中では言うに及ばず、日本に数多存在する麻婆豆腐の素、否、全レトルト素材の中でも最上位にあると言っても過言ではなかろう。木場や立川に陳建一の名を冠した麻婆豆腐店があるが(そこの麻婆豆腐も本当に美味い)、その店の味と比べてもあまり遜色がない。ぶっちゃけ営業妨害になるのではないかと心配になるほどだ。大きめのスーパーであれば大体売ってるので、疑わしく思う人は一度試してみるといい。値段もひき肉と本場の四川麻婆豆腐に欠かせない山椒がついて、二食分で300円と非常にリーズナブルなのもポイントが高い。

そういったウルトラレトルト素材が存在しており、イチから麻婆豆腐を作ることに対しては材料費や手間を考えるとどうにも二の足を踏んでいたのだが、流石に少し飽きてきたのと、自らの自炊スキルの向上の必要性を感じるようになってきた為、この度初めて麻婆豆腐の素に頼らない麻婆豆腐作りを敢行したのである。本当に長かったなこの前置き。

ネット上に転がってた色んな麻婆豆腐のレシピを参照し、一度目は美味しかったけど何か水っぽくなってしまったのでリトライ、二度目は水の量を減らして水溶き片栗粉を入れたら見事にダマになって大失敗し、三度目の正直でようやく満足のいくものが出来たので、今回はその時のレシピを覚え書きとして記す。もっともまだまだ改良の余地はありそうなので、其の壱としている。其の弐があるかどうかは神のみぞ知るというヤツだ。Only God Knowsだ。告白するが私は涼宮ハルヒのGod Knowsが未だに結構好きだ。安易な平野綾disをインターネットに投げ込む奴には絶対に容赦しねえ。ええとなんだっけ。とりあえず、この記事を読んでレシピについての改良点があれば積極的に意見が欲しい。

材料(私はデブなので全部一食で食うが多分4人分くらい)

・木綿豆腐:400g(パック80円くらいの安いヤツでいい。1パック150円以上する硬めの木綿豆腐使ったらイマイチだった)

・ひき肉:100グラムくらい

・長ネギ:3分の1くらい

・ニンニク:一片(多分チューブに入ったヤツでいい)

・ショウガ:一片(多分チューブに入ったヤツでいい)

・豆板醬:大さじ1

・甜面醬:大さじ1

・豆鼓醬:小さじ1

・花椒:適量(たくさん入れるときっと楽しい)

・鶏ガラスープ:150cc(お湯で溶いておくとよい)

・水溶き片栗粉:大さじ1(他のレシピ見たら大さじ2の片栗粉を同量の水で溶くって書いてあったが、一人分ならそんなに要らないし、片栗粉に対して3倍くらいの水があった方がいい)

・サラダ油:大さじ1~2

・醤油:大さじ1

・酒:大さじ1

・塩:一つまみくらい

◇下準備

・豆腐はさいの目に切り、塩を入れて沸かしたお湯に突っ込んで浮かび上がってきたくらいでざるに上げて水切りしておく。型崩れしにくくなるらしいぞ。

・ネギはみじん切りにしておく。

・豆板醬と甜面醬、豆鼓醬は予め混ぜ合わせておく。

・ニンニクとショウガもみじん切りにしておく。チューブでも良いと思う。

・Rammsteinを「ラムシュテイン」と呼ぶ奴を許さない構えを取る。

①フライパンに油を入れて熱する。フライパンが温まったらニンニクとショウガを入れる。

②ニンニクとショウガの香りが立ち始めたらひき肉を入れる。

③ひき肉の色が変わって赤身が消えた後も2,30秒くらい炒める。

④ひき肉がいい感じになったら火を止めて、豆板醬・甜面醤・豆鼓醬を混ぜたヤツを入れてひき肉と混ぜ合わせて、もう一度火を点ける。

⑤④で入れたヤツがふつふつとし始めたら、豆腐を入れる。花椒もこのタイミングで入れて軽く混ぜる。

⑥豆腐が良い感じにふわっとしてきたら、鶏がらスープを入れて煮立たせる。

⑦スープが煮立ってきたらネギを入れて、醤油と酒もぶっ込んで混ぜる。

⑧一旦火を止めて、水溶き片栗粉を加減しつつ入れる。

⑨もっかい火を点けて強火にする。とろみがついてふつふつし始めていい感じになったら出来上がり。

以上。件の中華名菜の麻婆豆腐に及んでいるかどうかは個人的な好みによるが、とりあえず無限にご飯が進む麻婆豆腐が出来たので満足している。

難点は、豆板醬と甜面醬が凄い勢いで減っていくこと。「食材に拘らずに調味料に拘るべし」という、我が心の料理の師匠の教えに従い、今回はスーパーで売ってる少しお高めのユウキ食品の豆板醬と甜面醬を使用しているが、普通のスーパーで売ってる130gという量ではあっという間に使い切ってしまう。そこで、私のアマゾンのウィッシュリストに500gの豆板醬と甜面醬、あとこれも仕上げに使うと美味しくなるらしいラー油を追加しておいた。

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