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見えた現在地 CL グループステージだ2節 バイエルンvsバルセロナ マッチレビュー

第1節のプルゼニ戦を5-1で勝利し、必須である勝ち点3を獲得したバルサ。カディス戦もターンオーバーしながら0-4で勝利し、さあバイエルン戦という雰囲気で臨む。2-8での敗戦、昨シーズンの2戦合計0-6という屈辱的な敗戦を背負うバルサ。今シーズンは成長したところを見せ、互角以上の試合を見せたい。

それではバイエルン戦を振り返っていく。

多くの方に読んでいただきたいので、拡散していただけるとありがたいです。

スタメン

バイエルンは4-4-2の布陣。個人的にはマネがトップでミュラーがトップ下の4-2-3-1だと予想していた。

警戒すべき選手は全員と言えば全員になるが、敷いて挙げるとするならば、ミュラーやデイビス、マネだろう。また、このフォーメーションではマネとデイビスが左サイドに固まっており、この2人のスピード、連携、ダイナミックな動きに注意しなければならない。

バルサはテア、アラウホ、ブスケツ、ぺドリ、デンべレ、レヴァンドフスキはほぼ確定していただろうから、それ以外の左CB、右SB、右IHに誰が選ばれるかが試合前から注目されていた。

この試合で選ばれたのは、クンデ、クリステンセン、マルコソアロンソ、ガビであった。おそらく1番のサプライズは左SBで起用されたマルコソアロンソだろう。

経験豊富だがメンタル的に弱いアルバ、経験はあまりないがバイエルンのスピードに劣らない爆発力を持っているバルデ、それなりの経験と身長を活かしたプレー強度を持つマルコソアロンソという特徴を持つ3人からマルコソアロンソが選ばれた。無難な考えだし、試合を終えた今では結果論だが正しかったと思う。

次はクンデ。右SBのオプションとして挙がるのはクンデ、セルジロベルト、ベジェリンだろう。クンデはこの3人の中でプレー強度は1番高く、守備面では断トツ。セルジロベルトはマンチェスターシティ戦で見せていたように、ポジショニングの質はかなり高いし、同サイドのWGとIHの動きを見ながら今すべきことを理解している印象。ベジェリンは正直まだ未知数。カディス戦でのプレータイムはあったが、バイエルン相手に出せるほどではないかも。先述した通り、バイエルンの左サイドにはマネとデイビスが並んだため、ここもクンデで正解だったと思う。

次にクリステンセン。プレー強度がすべてではないが、CBの選手のプレー強度が高い順でいえばアラウホ>クンデ>クリステンセン>ピケ>エリックガルシアな気がしている。アラウホはまず確定として、次にプレー強度が高いのはクンデ。しかし、クンデは右SBで起用するため、クリステンセンが選ばれたのではないか。

最後にガビ。ここはデヨングとの2択だったと思うが、プレー強度の高さとシンプルにプレーするガビを選択したのだと思う。デヨングも後方からボールを運ぶ能力を持っているが、独力ではがそうとする傾向があるため、ひっかけられた瞬間にバイエルンのショートカウンターの餌食になることを恐れたのかもしれない。ここでは関係ないが、ガビの契約延長が正式に決まった。6番を着る日はもうすぐかも。

強みを消されたバルサ

この試合で数多く見られたのはテアまでボールを下げて保持している場面。テアがボールを持つと、バイエルンは近場の選手をほとんどマンマークの形で消していた。しかし、唯一余裕のある状態でボールを受けることができていたのは右SBのクンデだった。マネはアラウホを抑えようとする場面が多く、どちらかというとクンデへのプレッシャーが甘かった。

バルサのボール保持時の全局面で輝いていたのはぺドリだろう。バルサのビルドアップが詰まっているときはボールを引き取って時間を作り、安定してオールを握れるようになればブスケツのサポートをしながらチャンスメイクまでバイエルン相手にやってみせる。これでまだ19歳は異次元すぎる。どこまで成長するのか。

バイエルン陣内に押し込む場面はあまりなかったが、一応触れておく。バルサはスタイル上このような展開を望んていたはずだが、バイエルンのハイラインとプレー強度の高さによって試合を支配することまではできなかった。

バルサがバイエルン陣内に押し込んでからやりたかったことはサイドによって違っていた。

左サイドはデンべレが内側に移動し、大外のレーンにマルコソアロンソがポジショニングする。ぺドリはブスケツのサポート、ボールの前進、チャンスメイクなどいくつかのタスクを任されている。ここで狙いたいのは中央で構えているレヴァンドフスキへのクロスボール。

デンべレも右サイドのほうが得意だとは思うが、左サイドでも十分に仕掛けられる能力はあると思う。しかし、この試合では中央でプレーしたことでボールロストする場面が多く見られたため、デンべレは大外に置いて突破させてなんぼの選手なのかも。
・デンべレを内側においてSBに高い位置を取らせる
・SBを内側においてデンべレに1対1で仕掛けさせる

の2つになるが、今のところシャビは前者を選択していることが多い。
どちらが相手チームにとって脅威であり、バルサにとってやりやすいのかは今はまだ分からない。

右サイドはハフィーニャの突破力をシンプルに活かしたいという意図が見られる。しかしここで立ちはだかったのはバイエルンの左SBであるデイビス。リーガレベルのSBならほぼほぼ有意性を持ってプレーすることができているが、圧倒的な身体能力を誇っているデイビスの前ではドリブル自慢のハフィーニャも優位性を持つことができなかった。

クンデをサポートに入らせることもできなくはなかったが、クンデが高い位置を取った状態でボールロストすると背後のスペースをショートカウンターでマネに使われる。さすがにそれだけはさせたくないため、シャビもクンデをサポートに入らせる選択はさせなかったのだろう。

ネガティブトランジションを武器に

バルサはこれまでの試合のマッチレビューでも書いていた通り、ボールを狭い場所へと誘導しながらサイドに人数をかけてプレースペースを狭くすることでボールを奪い取っていた。

しかし、バイエルンはこのバルサのハイプレスを分析したのかSBにボールを入れる回数は少なく、CBからシンプルに前線へボールを蹴りこんでいた。バルサの思い通りにボールを動かすよりは前線に蹴りこんだ後のセカンドボールの奪い合いのトランジションの面でバルサを上回るほうがバイエルンにとってやりやすいのではないかと感じたのだろう。

前線に蹴りこむと、ミュラーやムシアラなどが競り合うがその相手はアラウホやクリステンセンであり、ここはバイエルンがやや不利。しかし、バルサも完全に奪いきれるわけではなく、バイエルンはセカンドボールの回収率が非常に高いため、このストロングポイントを存分に活用した。前線に蹴りこんだボールのセカンドを回収すると前線は3対3の数的同数。サネ、ムシアラ、マネと個人でも組織でも高い能力を発揮する3人。この3人がショートカウンターで攻め込んでくるのだからそれはそれは脅威でしかない。

こんな感じで、バルサはバイエルンに対してほぼマンマークで対応していたため、この試合での最終ラインの人選はバイエルンの攻撃陣と数的同数で対応する前提でそれに負けない選手たちをシャビは選んだのだと思う。

それともう一つ。前半の38分にバイエルンの巧妙な攻め方が見られた。

ウパメカノにボールが渡ると、前線のサネ、ムシアラ、マネが一斉に裏に抜けるアクションを行う。すると当然裏ケアをするためにバルサの最終ラインもついていく。このときあえてミュラーだけが立ち止まることで広大なスペースを前にしてフリーの状態に。自分自身バイエルンの攻撃パターンの把握はできていないが、これだけスムーズに行えているならば、あらかじめ練習で落とし込んでいるデザインされたものではないかなと思う。

ここでなかなか失点しなかったのが今シーズンのバルサの強みであり、この試合でのシャビの人選だったと思う。特にクンデ。ここが守備が弱点であるセルジロベルトや未知数のベジェリンだったと思うとゾクゾクする。クンデだっただからこそ前半は失点を免れることができた。

だがバルサも攻め込まれていただけではない。バイエルン陣内の深い位置でボールロストしても奪い返していた場面もあり、シャビの仕込んだハイプレスの意識が浸透していることをしみじみと感じた。この試合ではショートカウンターからのチャンスが多かったが、バイエルン相手にここまでできるならネガティブトランジションもれっきとしたバルサの武器の1つと言っていいのではないかと思う。

スタッツでみるバイエルン戦

ここからはTwitterに上がっていたバイエルン戦のスタッツにまつわる様々な画像からこの1戦を紐解いていく。


もっともこの試合を象徴するようなこれらのゴール期待値のデータ。数値に若干の誤差があるが、0.02しか変わらないため気にせず。このデータから読み取ることができるのは、
・バイエルンはゴール期待値を上回る得点をした
・バルサはゴール期待値が2点だったものの、無得点であった。
ということである。
やはりこの試合では少ないチャンスをいかに決めることができるかが大きく勝負を分けたことが分かる。枠内シュートはお互い4本であったことからも両社の決定力の違いにも気づくことができる。上のツイートにも書いているが、この試合は今シーズンのチャンピオンズリーグの試合の中でゴール期待値と実際のスコアが最も離れている試合となった。しかもシュートを打った場所の分布図を見てみると、比較的バルサの方がゴールの正面からシュートを打てているということも読み取ることができる。

ビエルサライン

これはかの有名なビエルサラインといわれるもの。シュートの分布図を見てみると、バルサは決まる確率が50%の場所からバイエルンと比べて数多くシュートを打っているものの、その決定機を活かせなかったことがうかがえる。

こちらはバイエルン側から見た過去2シーズンのチャンピオンズリーグでの試合と今回のバルサ戦を比較した画像。

最後に

最後にこの試合の感想をざっくりと。
まず出てくるのは悔しい。本当に悔しいという感情。いい試合をしていただけだけに、惜しい場面がたくさんあっただけに悔しい感情が残る。たられば言えばたくさん出てくる。ぺドリの決定機、レヴァンドフスキの決定機、前半終盤にデンべレがエリア内かどうか微妙なところで倒されたシーンなど。あそこで決まっていれば、あそこでPKを獲得できていたらなど、いろいろ思うことはある。

とはいえ、いいゲームをしていたことには変わりないと思う。秩序もクソもなかったあの8-2や昨シーズンの2戦合計6-0と比べると大きな成長。しかもバイエルンのホームで。世界トップレベルのバイエルンと対戦したことで今のバルサが世界においてどのあたりに位置していて、トップクラスのクラブと互角に渡り合うには何が足りなかったのかを改めて確認できた試合だったと思う。(もちろん勝ち点3は欲しかったけど)

メッシがいなくなって絶望し、クーマンによって謎のクロスゲーが導入されていたのがちょうど1年前ぐらいと考えるとよくここまで立ち直せたなと思える。やはりこれにはシャビと会長やアレマニー様をはじめとするフロント陣が大きく影響している。チームに誇りと秩序を再びもたらしたシャビと、未来の資産を売りさばいたとはいえシャビが希望する選手を今夏でほとんど獲得してきてくれたフロント陣。ここまで強くなってきたバルサを見て進んできた方向性は間違ってなかったと教えられたような試合であった。

今回はこんな感じで。いかがでしょうか。あまりにいい試合だっただけに約5000文字書いていました。ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。少しでもいいなとおもったらいいねやリツイートで拡散していただけるとありがたいです。

では。

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