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突きつけられた現実 第9節 レアルマドリーvsバルセロナ マッチレビュー


カンプノウにインテルを迎えた試合では勝利をあげることができず、CLのグループステージ敗退が目の前に迫ってしまい、かなり重い雰囲気が漂っているバルサ。ただ、リーグ戦は8戦7勝1分とマドリーと戦績ではまったく同じであるが得失点差で上回って首位という状況。CLはだめでもせめてリーガだけはという思いで絶対に負けられないクラシコとなった。

戦術面から見たバルサは、伝統的なスタイルを貫いてはいるものの、現代サッカーらしからぬだいぶ古典的なサッカーをしている。ボール保持時の流動性はほとんどなく、配置は静的。押し込んでからゴールを目指す手段はぺドリのアイデアかWGの質的優位への依存かレヴァンドフスキへのクロスの放り込みぐらい。また、相手チームのシステムが5バックになった瞬間にWGの質的優位任せの突破は見込めなくなるし、なんせゴール前の相手選手の数が多いからレヴァンドフスキへのクロスもほぼ無力化される。5バックの崩し方は依然課題を抱えたまま。

ボール非保持時は相手のSBをサイドに追い込んでサポートの選手を捕まえながらスペースを潰していく圧縮型ハイプレス。これは確実にバルサの強みの1つとなっている。ビルドアップにデザイン性がないチームやプレス回避のスペシャリストみたいな選手が相手チームにいなければ滅法強い。しかし、躊躇なく後方からロングボールを放り込んでも収められるようなチームやボールを奪ってから縦に速いチーム(明らかにバイエルンは苦手)に対してはなかなかこの強みが出せない。

対するマドリーはCLのグループステージの突破を早々に確定させ、リーガでの勝ち点もバルサと並んでいる状況。手堅く強く、Theアンチェロッティという感じのサッカーだ。もちろんバルサだけではなく、マドリーとしても絶対に負けられないクラシコであり、万全の態勢で臨む。

マドリーの戦い方を一言でいうと「全方位型」。相手の戦い方に応じて後出しじゃんけんができる上にその判断を間違えない。
マドリーの対戦相手はほとんどが格下となり、仮に相手チームがボールを繋いでこないスタイルだとすると、マドリーが主体的にボールを保持して流動的な配置とベンゼマ、ヴィニシウスの優位性を活かしながら全体でゴールを目指す。逆に、対戦相手がシティやバルサのようにボールを持つスタイルであれば、プレスをかける時もあるが、素直に引き込んでからカウンターを打てるスペースを作り出してから食らわせる。基本的に現代サッカーではボールを主体的に保持するチームが強いというようなイメージがあるが、真の最終形態は今のマドリーの戦い方ができるチームなのかもしれない。(実際にシティ、パリ、チェルシーを倒したし)

こんな感じの両チームが激突するクラシコ。今回で節目の250戦目ということで現在はマドリーが100勝、引き分けが52、バルサが97勝という内訳になっている。対戦成績という面でも絶対に負けたくないクラシコ。
それでは振り返っていく。

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スタメン

マドリーは4-3-3。クルトワの欠場によって2ndキーパーのルニンを起用。最終ラインにはリュディガーが入るという予想もあったが、左からメンディ、アラバ、ミリトン、カルバハルとなった。中盤はいつものセット。前線はヴィニシウスとベンゼマは確定として、右WGにロドリゴではなくバルベルデが起用された。要注意選手は全員と言ってしまえばそうだが、強いて言えばやはりベンゼマとヴィニシウス。いや、やっぱり全員。

バルサも4-3-3。最終ラインの予想が各メディア、有識者の間でもバラバラであったが、最終的に右からセルジロベルト、クンデ、エリックガルシア、バルデとなった。インテル戦でのパフォーマンスを加味してピケが外されたのは本人も納得していると思うが、アルバはどういう気分なんだろうか。中盤より前はガビがデヨングに変わったのみで、あとはいつものメンバー。

手のひらで転がされたバルサ

バルサのボール保持時はこんな感じ。押し込んだ際にはいつものような感じで右サイドはハフィーニャが幅を取り、左サイドはバルデが幅を取る形。

ただ、いつもの相手と違うのはバルベルデとかいうバケモノがいること。スタートポジションはWGのはずなのに非保持時には平気そうに最終ラインに加わって守備を行う。これによってマドリーの最終ラインは実質5バックとなりデンべレ、バルデの攻撃に対していとも簡単に対応していた。そのくせバルベルデはボールを持ったら相手ゴールに余裕で侵入できるからかなりヤバい。

ただ、このバルベルデの最終ライン化によって前向きでボールを多く受けられるようになったのがぺドリ。ブスケツとほぼ同じぐらいの高さでボールを受けていた場面が多くあったと思う。実はこれ、本来はデヨングがやるべきポジションなのではないかと最近思う。低い位置での組み立てをデヨングに任せておいてぺドリがより高い位置でボールを受けることでチャンスをもっと多く作り出せる気がする。この試合でぺドリが奮闘していたのは事実であったが、決定的な仕事はできなかった。それはぺドリがボールを受けた場所にワケがあると思う。

ぺドリがボールを受けたのはブスケツと先述の通り、ブスケツと同じぐらいの高さ。要するに”マドリーのブロックの外”ということになる。
しかし、ぺドリの強みは
・狭いスペースで前を向くことができる
・瞬時の判断力の高さ(ベストの選択肢を選べる)
であると思う。
これらの強みが生きるのはブロックの外側ではなく、やはり”ライン間”だろう。マドリー側からしたら「さすがのぺドリでもライン間で受けさせなければそこまで怖くない。」といったスタンスだったかもしれない。

次は完全に封じ込まれたサイド攻撃について。今シーズンは相手が5バックになると自慢のWG達も思うように活躍できない。その5バックに滅法弱い現象がそのままそっくりマドリー戦に現れた。そもそもカルバハルもメンディも対人能力は世界でもトップレベル。どうやって崩せばいいんだよって感じ。WGの突破が封じられた時点でサイド攻撃が実質ないものになってしまうところがシャビバルサの悪いところ。静的な配置だからこそアイデアが生まれない。静的な配置だから悪いのではなくて、それで突破できないことを放置していることがまずい。ここは要改善の課題。

また、封じ込まれたのはサイド攻撃だけでなく、中央のレヴァンドフスキもであった。常にミリトン、アラバ、チュアメニの監視下に置かれ、パスずれやオフサイドも多かった。いつもなら収まるところも収まらず、らしくないプレーだった。らしくなかったのは事実だが、今回はマドリー守備陣を褒めるのが正しいかな。

最後に触れるのはヴィニシウスのポジショニング。非保持時はそれなりに守備に参加しながら来たるべきカウンターに備えているようだった。1点目の際にカルバハルからボールを受けた位置が押し込まれている割には結構高い位置だった。これはもう完全にカウンターの発動時に広大なスペースを使うためとしか思えない。DAZNの解説に入っていた小澤さんは「バルサはできればヴィニシウスを守備に引っ張り込みたい。」とおっしゃっていたが、ヴィニシウスのセルジロベルトに対する守備意識はそこまで高くないし、もうアンチェロッティから「セルジロベルトが高い位置を取っても気にしすぎるな。」ぐらい言われていると思う。なんてったってマドリーには堅い堅いブロックがあるから。仮にバルサのSBが全盛期のアウベスだったりしたら話は変わっていたんだろうか。もしかしたらもうSBに高い位置を取らせて相手のWGごと押し込む考えは古いかもしれない。改めてSBにおける守備能力の高さの重要性を思い知った。

自慢のハイプレスもマドリーの前では、、

リーガの格下相手には刺さっていたハイプレスもマドリーの前となるとあまり効果を示さなかった。ミリトンにロングボールを蹴らせて回収に成功した場面もあったが成功例は少なく、後ろ(ブスケツ+DF)がついてこなければそれはただただ中盤で広いスペースをマドリーに提供しているだけになってしまう。この試合では付いてこないというよりも付いていけなかった。狭い場所へと誘導したいバルサに対してピッチを広く使うマドリー。そりゃ中盤も間延びするわけだし、ブスケツも間に合わないわけだ。前へ前へ人を捕まえながらスペースを潰していきたいが、ブスケツの背後にはモドリッチがいていつも見えないところから出てくる。そうするとモドリッチは時間を作り出せるためにマドリーが前進できる。となると押し込まれたバルサは弱い。
 

マドリーにボールが渡る

  バルサがハイプレスをかける

プレス回避され押し込まれるorプレスがハマる前にカウンターへorファール

の流れが多かったと思う。

この試合で目立ったのはバルサ側の混乱とクロース、モドリッチのプレス耐性。今シーズンはマドリーほどポジションを流動的に動かしてビルドアップするクラブと対戦したことがなかったため、バルサの選手はだれがだれを捕まえるべきかに迷いが生じていたと思う。今まではレヴァンドフスキとIHで相手のSBへとボールを誘導してWGが圧をかけに行く。IHやブスケツはサポートに行く選手を捕まえていくというようなセオリーがあったが、マドリー相手では思い通りにいかなかった。

クロースとモドリッチは相変わらずだ。ただのテクニシャンではない。テクニックに加えて一瞬の瞬発力があるから軽く相手を置き去りにできる。これはバルサの中盤にはない要素。

思い通りに刺さったカウンター

この試合の1点目、ベンゼマの得点は試合前から想像できていたほど綺麗なカウンターであった。このマドリーの引き込んでからヴィニシウスとベンゼマのカウンターで仕留めるというスタイルには実はもうすでに一度やられている。それはシャビが監督に就任して初のクラシコであった今年1月のスーペルコパだ。

スーペルコパの1シーン

この試合でもヴィニシウスのカウンターで1発やられた。分かりきっていた形だがやられてしまった。これがヴィニシウスだ。これから対戦するときも必ず苦しめられることになるがやはり重要なのはSBの守備力なのか。ヴィニシウスを帰陣せざるを得ない状況に追い込むほどの攻撃力なのか。

こちらは1月のクラシコの記事です。良ければご覧ください。

唯一見えた希望とシャビのこれから

この試合で返した1点の起点となったアンスはTwitterのマドリディスタの方々の意見を見ると、1番脅威だった選手だという。あの縦への抜け方は久しぶりに見た光景であった。少しずつパフォーマンスを取り戻してきている証拠なのだろうか。今シーズンは途中出場が多く、フル出場はまだまだかもしれないが、近いうちにスタメンの常連になるだろう。また、この試合でハフィーニャの起用法にも疑問符が浮上し、これからのWGの人選も気になるところ。

さて、今回のクラシコで1番の問題点として浮上したのがまさかのシャビだった。マドリーのレベルが高すぎたのもあるが、戦術面で大きく劣っていた印象を抱いた。インテルには2戦通して勝利できず、暗い雰囲気を吹き飛ばしたかったクラシコでも内容とスコアともに完敗だった。戦術面での心配はクラシコだけではなくここ数試合で現れており、改善が見られなかった。そろそろシャビの首が危うくなってきそうな気がするが、ラポルタは「何が起こってもシャビを信じ続ける」的なことを言ってたからシャビの解任については全く考えていないのか、それともあまりにひどい結果を受けてもう動き始めているのかは全く分からないが、とりあえずシャビにはいろいろ変えてもらわないといけないのは事実だ。

今回はここまで。かなり長くなってしまいましたが、この試合に対して感じたことは書ききれたと思います。力を入れて書いたので、より多くの方に読んでいただきたいので拡散をお願いします。感想なんかを教えていただけるとよりうれしいです。


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