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バンデラス映画を2本見た

よく来たな。あたしはクエルボ9。MEXICO語でカラスの九番だ。あたしはふだん140字以上の文を他人に見せることはない。しかしあたしは運命に導かれ、アントニオ・バンデラス主演の映画を3日で2本見たので、特別におまえにバンデラスの真の男としてのあり方、パルプと非パルプの違い、そしてりょうさhがどのように対照的なのかについて教えてやることにした。

「13ウォーリアーズ」と「グローリー・アンド・ペイン」

「どうせみたのは『エル・マリアッチ』と『フロム・ダスク・ティル・ドーン』だろう」などと余計なことを言ったおまえの口にはすでにダニー・トレホのマチェ〜テが突っ込まれている。あたしが見たのは「13ウォーリアーズ」と「グローリー・アンド・ペイン」だ。おまえはこの3本を見たか? 短期間に全部見ているやつはそういないと思う。「2本じゃないか」などと茶茶を入れたおまえの口に突っ込まれたダニートレホのGUNは即座に火を吹き、お前はMEXICOの道の上に無惨な死体を晒すが、巧みな編集で0.5秒しか映らないだろう。四天王が四人でなければならないと考えているやつは惰弱だし、「13ウォーリアーズ」「デスぺラード」「グローリー・アンド・ペイン」で3本だ。さらにいえば『フロム・ダスク・ティル・ドーン』にバンデラスは出ていない。「デスペラード」とおなじ真の男ロバート・ロドリゲスが監督しているが、こっちに出ているモヤシはジョージ・クルーニーだ。

13ウォーリア〜ズ(1999年、バンデラス39歳)


「バイキングって、イスラム圏まで行ってたらしいぜ〜」

スマッホンで仕入れた最新のにわか知識を相棒に披露した次の瞬間、あたしは灼熱のMEXICOの土を喰むことになった。「そういう映画は既にある」相棒はディズニー+をモニタに投影した。口にコロナビールとドリトスを流し込まれながら、るどヴィゴ療法よろしく見させられたのがこの13ウォーリア〜ズだ。

西暦922年。アラブのもやし野郎であるバンデラスは女絡みでやらかし、いろいろあってバイキングの船に乗せられ、彼らの故郷へ同行することになる。ドワーフ集団に強制的に組み込まれるビルボと思ってよい。
アラブ系をスペイン人が「なんか浅黒いから」という理由で今演じたら大変なことになるが、この映画発表されたのは1999年。全ての大陸がMEXICOであり、全ての人類が互いにMEXICO人である野蛮な時代だ。
ちなみに、あたしは今の方がいいと思う。誰かの雇用を奪わなければ面白い映画が撮れないのは腰抜け野郎だ。
それはともかく、「13ウォーリアーズ」の公開は「デスぺラード」の4年後だ。ということは「デスぺラード」の時点でバンデラスは35歳。意外に歳がいっている。童顔なのだ。バンデラスはバンデラスで、俳優として虚無の暗黒に囚われ、「自分もそのうちにサルーンで管を巻くようになり、行きずりのベイブと恋に落ちて・・・・子供ができ・・・・・年老いて・・・・・・・オレンジ農園を運営しながら、家族に囲まれて死ぬのだろうか」と悩んでいたのかもしれない。

洗練されたアラブ文化出身のモヤシから見るバイキングたちは不潔で好戦的だ。未開人というか、熊に近いなんかに見える。過酷な船旅の中で、バンデラスは彼らを観察し続け・・・・そしてついに、MEXICO語(バイキング語)で喋り始める! 驚くバイキング。ずっと隅っこで体育座りをしていたモヤシがいきなり自国語で喋り、名前を呼んできたのだ。バンデラスも、言葉を習得するにつれ、バイキングも彼らなりに種族の秩序を重んじ、プライドを持つ真の男たちだということに気づいていた。あたしは「真の男は、人種も文化も超えて仲良くなれるんだな」とおもった。そして「真の男たちが友情を育むのに、酒はいらないんだな」ともおもった。アラブ(あだ名)はイスラム教徒だから、バイキングのテキーラを飲めないのだ。
あとはなんやかんやあって、アラブ・バンデラス含む13人のウォーリア〜ズは村を侵略してくる謎のタルサドぃ〜むと戦い、敵本拠地に潜入する。モヤシ文官のバンデラスは戦いを通じて真の男として覚醒する。特訓! 武器の精錬! 地下湖! ホットなベイブの名前くらい出してほしい! アラブ人としての一線を越える瞬間! バンデラスがそのデコラティブなまつ毛を伏せて沈思黙考する横顔のアップももちろんある!
(後半雑になった。あたしは冒険の旅の序盤が好きなのだ。指輪物語も「旅の仲間」がフェイバ率トで、全然退屈に感じない。デブが風呂をこぼす場面も気に入っている。なおおまえに強調しておきたいが、ピピンはデブではない。ホビットとしては標準体型だ)

ただし、おまえは重厚な映像体験を期待して「13ウォーリア〜ズ」を見るべきではない。
「13ウォーリアーズ」は215まんえんで作った映画だからだ。
その内訳は

  • バンデラス料 100まんえん

  • オマーシャリフ料 0円(友情出演ではないだろうか?)

  • 衣装・大道具 5まんえん

  • 馬などどうぶつ料 5万円

  • その他スタフ料 まとめて5万円

  • バンデラスのまつ毛横顔オプション 100万円

あたしはマンサツを同時に20枚触ったことがある。そのあたしが言うのだから、だいたいこんなもので間違い無いだろう。

このような低予算のパルプ映画を見るとき、おまえはぼーっとしていてはならない。90年代のビデオカメラ特有の、ペカペカしているのにざらついた明部と、黒がぬるまったい暗部の映像から、お前は自分の力でパルプ成分を見つけ出し、真の男たちに寄り添っていかねばならないのだ。気を緩めると、おまえはゆるい編集で残った不必要なカットの間に「そういえば、3つやっているソシャゲのうち一つに今日はログインしてないな・・・・」などどスマッホンを取り出し、パルプを忘れ・・・・オレンジ農園で死ぬ。パルプ映画の鑑賞には、ある種の克己が必要なのだ。

自分を律し、安さが爆発四散する映像から油断なくパルプを絞り吸収できたなら、おまえは真の男として立ったアラブ・バンデラスが親友と別離し、去ってゆく最高のラストシーンを見るだろう。ナレーションだが。

ペイン・アンド・グローリー(2019年、バンデラス60歳)

さてこの3日後、あたしはとある老婆を訪ねていた。この老婆、とにかく映画を見る。あたしを産む前はキネ旬のベストテンとアカデミー賞各受賞作を全部見ていた。いまでも近所の元青線地帯にある映画館に月1回は通っているような真の女だ。

ただしこの老婆、パルプ志向がまったくない。GUNやバイオレンス、友情の物語に老婆の興味は向かないのだ。パルプ受容体のない人間にパルプをるどヴィゴ療法するのはクソ野郎だ。そこであたしは、非パルプ映画がもっとも充実している配信プラッtフォームU-NEXTを老婆のテレビ受像機に仕込んだ。
テストを兼ねて1ぽん見ようと言うことになり、老婆が選んだのがこのペイン・アンド・グローリーだ。

かくして、あたしは別々の人間と、バンデラス映画を3日で2本見ることになった。さっきあたしはデすぺラード以前のバンデラスが俳優を続けるか、故郷に帰るか悩んでいたと言ったが、あれはうそだ。
バンデラスはペドロ・アルモドバルのオム・ファタールで、ずっと巨匠の映画の主演をしてきている。パルプでのブレイクが「エル・マリアッチ」というだけで、非パルプ映画出身なのだ。
そして老境に差し掛かった有戻張るが、再びバンデラスを主演に迎えて撮った自伝的映画がこのペイン・アンド・グローリーだ。バンデラスは60歳だが、70歳のアルモドバルを演じるので、老け役ということになる。

アルモドバンデラスは世界的巨匠監督だが、次の脚本が書けない。背中の痛みが原因なのか? 母との関係が問題なのか? あたしは「バンデラス、おまえはカッシーナのユトレヒトチェアで脚本を書かず、ハーマンミラーのセイルチェアを買え」とおもった。

ともあれ一言で言えば、過去がバンデラスを収穫しに来たというのが本当のところだろう。過去と現在を行き来しながら、バンデラスの抱える苦痛(ペインだ)と過去の栄光(グローリーだ)が語られる。あたしは「母親がペネロペ・クルスなのに大人になれたバンデラスは、それだけでえらいな」と思った。バンデラスは、ヤク中の恋人の介護日記で世に出たにも関わらず、ヘロイン中毒にまで追い込まれる。果たしてバンデラスは次の脚本を書けるのか。功成り名を遂げた後にやってきた第二の虚無の暗黒に打ち勝つことができるのか。

さてここで、おまえに試練が与えられる。非パルプ映画の鑑賞にはパルプ映画とはまた別の資質が問われるのだ。

パルプは再起の物語だ。たとえ主人公が道半ばで倒れようとも、おまえの胸には、家族に囲まれる甘やかな人生をふり捨て、それぞれの夢に向かう炎が灯る。仮にこの映画がパルプであるならば、ラストは二つに決まる。バンデラスが次作を撮っておわるか、あるいはバンデラスは映画を撮れずに、おまえに「バンデラスの意思は俺が引き継ぐ」と思わせて終わるかだ。

しかし非パルプ映画にはそんな制約はない。非パルプ映画はある意味で自由だ。おまえを絶望のどん底に叩き落としたまま終わっても良いし、オレンジ農園へ誘惑しても良い。おまえが感じているのが希望か、絶望か、混乱させたまま放り出しても構わない。なんなら、おまえはバカだと煽って終わることもあり得る。非パルプ映画の作り手はやりたい放題なのだ。結論は保証されていない。
「ペイン・アンド・グローリー」はパルプ映画ではない。アルモドバル・バンデラスが、再び真の男として立ち、映画を撮るか、それともへろインに溺れ、オレンジ色の豪華な屋敷で死んでゆくか、そしてそのどちらがが幸せなのかずんどこなのかさえ、おまえには最後までわからないのだ。

つまり、実は非パルプ映画を見るときでさえ、おまえは真にタフであらねばならないのだ。

とはいえ、おまえはかしこまって「ペイン・アンド・グローリー」を見るべきではない。
「ペイン・アンド・グローリー」は201000まんえん(131000まんえん)で作った映画だからだ。
その内訳は

  • バンデラス料 10000まんえん

  • ペネロペ・クルス料 10000まんえん

  • アルモドバル料 20000まんえん

  • 衣装 1000まんえん

  • 大道具 7おくえん=ぜろ円(インテリア・絵画が監督の私物であるため)

  • ロケ 1おくえん

  • その他スタフ料 8おくえん

あたしはマンサツを同時に20枚触ったことがある。そのあたしが言うのだから、だいたいこんなもので間違い無いだろう。

アルモドバル映画はあたしがいまさら言うまでもないが、色がすごい。赤とオレンジとエンジ。潤沢な予算で贅沢に演出された鮮やかな色彩がMEXICO(スペイン)の強烈な光にギラギラと映え、背景だけで元気が出てくる。見るガスパチョだ。おまえはアルモドバル映画を見ながらスマッホンに手を伸ばすことはない。おまえは口をあんぐりと開けてただ色彩の狂乱に酔うだろう。幼少期に育ったという、白亜の採掘跡も素晴らしい。ギャグも満載だ。アルモドバンデラスが嫌っている過去の主演俳優の演技の演技が、最悪で最高だ。なにしろ悲しいセリフを言うときに泣くのだ。あたしは「これはバンデラスも怒るわ」とおもった。バンデラスが「俺には子供ができ・・・・・オレンジ農園を運営しながら・・・・家族に囲まれて死ぬことはできない。ゲイの孤独・・・・」と感傷に浸っているときに、ヤク中を克服し、子供ができ、レストランを経営しながら家族に囲まれて幸せに暮らしているかつての恋人が訪ねてくるのも爆笑だ。デスペラードで彼を知ったおまえは、ギターケースからロケット弾をbっ放していたあのバンデラスが、背中の痛みでへっぴり腰になりながら冷蔵庫の下段の扉をそーっと開ける様を見て愕然とするだろう。バンデラスがそのデコラティブなまつ毛を伏せて沈思黙考する横顔のアップも(驚くべきことに)もちろんある! あるので、上の内訳にバンデラスのまつ毛横顔オプション10000まんえんを追加しておいてほしい。

しかしこの色彩と憂鬱と笑いの映画を見ている間、おまえはアルモドバンデラスが真の男として立つかどうか、分からない。映画を見終わった後勇気を得て、自分が真の男になれるかどうかかも、もちろん最後まで分からないのだ。
そうして非パルプ映画のわからなさに耐え、ラストにたどり着いたおまえは、医者に「これからどうなさるおつもりですか」と聞かれたバンデラスの返答に、膝から崩れ落ち、泣き笑いするだろう。

というわけで、あたしは3日間でまったく違うバンデラス映画を2本みた。パルプ映画と非パルプ映画は、向き合う姿勢が逆になる。どちらかが優れている、どちらかが多くのタフネスを必要とすると言う意味ではない。おまえは映画によって、力の入れどころ、抜きどころを油断なく状況判断して臨まねばならない。そしてそのどちらかをフィルモグラフィから排除することなく、両方の映画でかがやくバンデラスは真の男だなとあたしは思った。

あたしのいいたいことは以上だ。おまえも3日で両方見ろ。片方だけ見た相棒と老婆はニッコニコだったが、あたしは死ぬほど疲弊した。脳のパルプ野と非パルプ野、両方が追い込まれたからだ。だから疲弊はしたが、3にんの中であたしが一番真の女として成長したはずだ。筋トレはローテーションが基本だ。同じ部位に連続で孵化をかけると怪我につながる。映画脳もそういうものだと、あたしは思う。パルプと非パルプ、どちらかに偏らず見ていくことで、映画脳は超回復し、パンプアップしていく。脳がパンプアップすることがいいことかどうかはこの際問題にせず、お前も3日で両方見ろ。


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