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【Vペン】エーデルシュタイン イヤー・オブ・ジ・インク2024「ゴールデンラピス」を万年筆に入れるたった一つの冴えたやり方【全裸で】



3行まとめ

  • ゴールデンラピスを持ち歩くならVペン

  • 風呂場で全裸になり、ペン先をペンチで引き抜く

  • 洗浄1〜2日、乾燥1〜2日、スポイトでインク注入後ペン先を押し込む


祝!ゴールデンラピス発売!

ついに日本でも発売になりましたね、ペリカンの万年筆インク「エーデルシュタイン」のイヤー・オブ・ジ・インク2024年版。今年の「ゴールデンラピス」は青インクにゴールドラメの素敵すぎる色。ペリカンのインクは4001/76(普及ライン)のロイヤルブルーで満足していてエーデルシュタインは持っていなかったのですが、インクに限らず青と金の組み合わせがもともと大好きなので早々に手に入れてしまいました。

沈殿しているゴールドラメがすごい
筆で描くとこんな。きれーい!
日本画の雰囲気も感じる。青と金というより、瑠璃と金泥と呼びたい。

ゴールデンラピスをペンに入れて持ち歩きたい!

さて、ここにきて再燃するのがずっと議論されている「万年筆にラメ入りインクを入れていいのか」問題です。ゴールデンラピスに関しては万年筆メーカー純正の万年筆インクなわけで、これを万年筆に入れていいのかというのも変な話ですが、一般には「万年筆の構造から考えれば危険」ということになっているようです。同シリーズ2021年限定の「ゴールデンベリル」についても万年筆に入れて使っている話を聞かないし、私自身も自分のM800に吸わせる気には到底ならない。なので付けペンやガラスペンで使おうね、みたいな話になるわけです。なるわけですが、本当は、みなさん、ラメ入りインクをインク瓶でなく、ペンで持ち歩きたいと思っていませんか? 外出先でも気軽にラメ入りインクを使いたい、それもできれば万年筆のあの柔らかくヌラヌラな書き味で。

そんなご要望に私が勝手にお応えします。ズバリ(昭和の死語)

ラメ入りインクはVペンに入れて持ち運ぶべし!

です!

メーカー非推奨です!自己責任で!

Vペンとは何か

まず、そのVペンってなんなのよという話です。
Vペンとは、パイロットが販売している筆記具です。実勢価格は¥200程度。現在ではインク色は黒のみ、細字と中字の種別があります。

実際にはこんなに軸の色は違いません。買うときよく確かめる必要がある

Vペンは金ペンのような書き味

キャップを開けるとこんな感じ

キャップを開けてみましょう。見たとおり、Vペンのペン先はニブです。このニブが、うっとりするような柔らかさ。同じパイロット製であっても、たとえば今大人気のエントリー級万年筆「カクノ」とは良くも悪くも全く別の書き味です。カクノはスチールのいわゆる「ガチニブ」で、精度の高い線で漢字も潰れず書けるのが特色です。一方Vペンはふわふわと柔らかく、筆圧ゼロで永遠に書いていられます。いわゆるヌラヌラ系、ヨーロッパ製の金ペンに近い書き心地です。

※柔らかいと言っても、パイロットのファルカンやエラボー、セーラーのふでdeまんねんなどのいわゆる変態ニブとは違い、筆圧で太さを極端に変えられるペン先ではありません。ペリカンなどが近いです(個人の感想です)。

なんとこのVペンのニブ、ペンポイントも付いているんです。

ニブの先にペンポイントが見える

昔はついてなかったような気がする。公式サイトに「新ペン先で書き味アップ!!」とあるから最近つけたのかな。

ここでみる限り、ペンポイントを自社で作っているのは世界でもパイロットだけらしい。Vペンのペンポイントが万年筆のそれと同じものとは限らないですが、それでも自社ニブ自社ペンポイント付きニブのペンが200円で使い放題。世界に冠たるパイロットの面目躍如! 全然宣伝できてないのもパイロットらしい! そこも好き。

Vペンは万年筆なのか

さて、先に書き味を説明してしまいましたが、このVペンって結局なんなんでしょうか。

先ほど見ていただいたパイロットの公式ページを読めば、一言も「万年筆」と明記していないのが分かるかと思います。売り場ではどうでしょう。大きめの文房具屋などでは、筆記具の什器に「簡易万年筆」のコーナーがあり、そこに刺さっています。大抵隣にはぺんてるのプラマンがあります。簡易とは……?

この奥歯に物が詰まったような物言いから分かるとおり、Vペンは正式には万年筆ではありません。
Vペンが万年筆の要件を満たさない点としてまず、ペン先へのインク供給機構に繊維を使っていることがあります。万年筆のニブはハート穴から切り込みが入っており、毛細管現象でペン先までインクを伝わらせていくのですが、Vペンのニブの裏にはフェルトの芯が通っています。

Vペンのペン芯からニブを引き抜くと高確率で壊れます。これも下のニブは先が潰れている

つまり、インク供給機構から言えばVペンはサインペンです。公式ページのURLもhttps://www.pilot.co.jp/products/pen/sign_marker/sign_pen/vpen/ なので、パイロット自身もサインペンと見ている。
これを念頭に置いて再び公式ページを見ると

「万年筆の書き味と、サインペンの手軽さを実現しました。」

Vペン | 製品情報 | PILOT

というキャッチコピーはよくできている。確かにこうとしか言えません。

もう一点の万年筆でない点として、インク補充機構を持たないことが挙げられます。軸の中に直接インクが入っており(直液式)、インクがなくなったら買い換える使い捨てのペンです。「万年」筆ではないわけです。そして逆に、200円のVペンが1000円のカクノより書き味において金ペンに近いのもここに秘密があります。

カクノは正式な万年筆。インクを補充しながら何年も使い続けるものです。ニブにもそのための耐久度が求められ、したがってあのガチニブになる。水性ボールペンなどの書き味から離れたくない意図もあると思いますが、まあとにかく万年筆のニブは簡単に劣化してはいけないわけです。
一方、Vペンは使い切りのペンなので、ニブはインク切れまでもてばよい。なので耐久度のない柔らかい合金を使うことができる。結果スチールニブの万年筆より金ペンっぽい書き味になるのだと思います。

下手くそ文字ですみません

Vペンの弱点

というわけで、厳密には万年筆でないものの、200円で金ペンの書き味が得られるVペン。私はこのペンが大好き。もしかしたら世の中で一番好きな筆記具かもしれない。何十本と使ってきています、が……。Vペンには重大な弱点があります。

小学4年生男子がドラゴンを卒業した直後はまりそうな軸デザイン

見てのとおり……この、極めてパイロットらしい……し、シャープな……軸のプリントが……。パイロット万年筆伝統の雨だれクリップ調のキャップがついてるのが余計腹立つ。

このデザインに耐えられる人のみに、Vペンをお勧めします。ちなみに、製品写真では分かりづらいですがこの部分は窓になっていて、インク残量が見えます。実用性のあるデザインではあるわけです。

インクが見えるよう、窓になっています。

Vペンの買い方

さて、このクソダサデザイン(ゆっちゃった)に萎えずに、Vペンにゴールデンラピスを入れたい方の中で、今現在Vペンを持っている方は少ないと思います。新たに購入するところからになるでしょう。そんな人のために買い方をお教えします。

※Vペン、別に不人気というわけではないのです。私のみならずファンがいるから長年販売し続けられているわけで(一説によると1988発売)。廃盤になってしまった赤はデッドストックが人気で、どうも教育関係者がテストの採点に使っているっぽい。疲れないからねVペン。

実はVペンって、安定供給です。どこにでも売っています。ロフトなどの趣味的な文房具店にも置いていますし、町の小さな事務用品店にもあります。

物理店舗で買う場合は、試筆をお勧めします。安価な筆記具なので、たいていサンプルを置かず売り物で試筆していい売り場構成になっています。Vペンは個体差が大きいので全部試してみましょう。選定の基準は、まずキャップがちゃんとはまることです。万年筆ではないとはいえニブにインクを伝わらせる方式ですから、カバンの中でキャップが外れたら大事故です。次にフローが渋いことです。Vペンは書いていくうちにどんどん柔らかくへたれていきます。買った時が一番硬いので、ここは好みに関わらず一番かりかりのものを選びます。

Vペンはもちろん通販でも買えます。Amazonでも扱っていますがモノタロウで買うと安いです。記事執筆時点で189円でした。他のものを買う際の送料無料にする調整に使うのもいいと思います。

https://www.monotaro.com/g/04554856/?t.q=v%E3%81%BA%E3%83%B3

※ちなみに、モノタロウは万年筆関連商品が結構安いです。扱っているのは国産だけですが、定価で買うのがバカらしくなります。

字幅については、今回はラメの輝きがわかりやすい中字がおすすめです。ただし、手帳に使うには厳しくなります。試筆すると分かりますが、Vペンは太いです。Vペンの細字が国産万年筆の中字相当、中字が国産万年筆の太字よりちょっと細いくらいの感じです。これもヨーロッパの万年筆と似ているなあと思う部分です。まあ200円ですから、両方買っちゃってもいいかと思います。

Vペンにゴールデンラピスを入れる

さあVペンを手に入れました。ついに本題、ゴールデンラピスを入れていきます。
Vペン以外に用意するもの

  • ペンチ

  • ウェス(汚してよい当て布)

  • 汚してよい容器(私はペットボトルを切った底を使っています)

  • スポイト

  • 耳かき(新品)

まずVペンを分解し、今入っているインクを捨てなければなりません。全裸になり、ペンチ、ウェスを持ち、風呂場に行きます。

Vペンのニブにウェスを巻き、ペンチで引き抜きます。
ペン先がペン軸に刺さっている固さには個体差がありますが必ず抜けるので、回しながら思い切って引き抜きます。
抜ける瞬間インクが飛び散るのでシャワーを浴びます。水性染料インクなので洗えば落ちますが、すぐに染み込むので急ぎます。とんでもないところにインクがついているのを見逃すと次の日一日恥ずかしいことになるので、鏡をよく確認します。
風呂場もインクまみれなので掃除します。

あとは通常の万年筆の洗浄と同じです。軸とペン先をよく洗い、容器に水を入れて漬けたのち、乾燥させます。万年筆の洗浄の場合水漬け1日乾燥1日くらいで十分ですが、Vペンの場合繊維の芯が洗いにくく乾きにくいので、完璧主義な人はそれぞれ2日かけてもよいでしょう。あ、服を着るのを忘れないでください。

軸とペン先が乾燥したら、ゴールデンラピスを注入します。
ラメが瓶の底に沈んでいるので耳かきですくい、軸に入れます。液体部分はスポイトで軸に注入しましょう。ここでもラメを拾いたいので、シリンジより吸い口の太いスポイトがいいでしょう。吸い口を底に当てながら吸入します。

あとはペン先を押し込んで戻せば完成です。ここでもインクが漏れる可能性がありますが、飛び散るほどではないのでシンク等で行えばいいでしょう。ペン先がしっかり戻せていないと、キャップが閉まりません。キャップをつけてチェックしながら押し込んでいきましょう。

万年筆の場合は1分もあればインクが降りてきますが、Vペンはサインペンなので試し書きしながら1日くらい待ちましょう。フェルトのペン芯にラメが通るかはインク次第ですが、既成のラメ入りサインペンはたくさん出回っているわけですから、心配するほどのこともないと思います。

ゴールデンラピス in Vペンで書いてみる

1日待ったので試筆してみます。

つけペンだともっとギラギラするのですが、まあまあ金ラメのニュアンスが出ていると思います。ベースの青も透明感があっていいですね。可読性も高いし、この感じだと、ビジネスシーンでも自分用メモなら使えそう。
今後ラメが詰まってペンが壊れることがないとは言い切れませんが、そこはVペン、買い換えて詰め直せばいいことです。

これで、エーデルシュタインゴールデンラピスを持ってお出かけすることができるようになりました。2024年のイヤー・オブ・ジ・インクを楽しみましょう!

Vペンにはもちろんゴールデンラピスだけでなく、さまざまなラメインクを入れることができます。私はほかに、寺西化学工業のギタースパークルインキ「ダスティゴールド」を入れたりしていますが、これなんかはもっとはっきりラメが出てギラギラです。ラメがペン芯を通るかはインク次第ですが、なにしろ200円のペンなので、失敗を恐れずいろいろ試すと楽しいです。
ただしペン芯を引き抜くときは、全裸になるのを忘れずに!

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