見出し画像

異常巻きアンモナイト「ニッポニテス」をかぎ針編みでモデリングしました

みんなー! 異常巻きアンモナイト好きですよねー! 私も大好きですー! 中でももっともわけの分からない形のニッポニテス! 長すぎる洗濯機の排水ホースをむりやりトレーに押し込んだみたいでかっこいいですよねー!

さて、というわけでいつものように三笠市立博物館のニッポニテス・ミラビリスの3Dモデルをぐりぐりしていたそのとき、電流走る。

ニッポニテスのこの形、かぎ針編みで簡単に再現できるのでは?

次の瞬間、毛糸とかぎ針を掴んでいる自分がいました。
プロトタイピングを数回重ね、第1号が一応完成したので、経過を報告します(誰に?)。
※今回はかぎ針編みの技術については説明していません。散漫になったので諦めました。

 あみぐるみとモデリングの違い

ここで作ろうとしているのは、あみぐるみではありません。あみぐるみは、かぎ針編みで円柱や球、半球のパーツを作り、縫い合わせて動物などのキャラクターに仕立てるものです。なぜかあみぐるみのコンテンツが極めて充実しているヤマハ発動機のページを紹介しておきます。

あみぐるみは、カリカチュアライズされた動物の姿を模しているだけで、体の仕組みや発生を再現しているわけではありません。それに対し、ここでは、ニッポニテスの殻の成長を追って編み地を形成していきます※1。シミュレーションに近い考え方です。成長過程を再現するので、パーツに分けたり、縫い合わせたりの工程も発生しません。

※1隔壁は再現しません。

初期の平面巻き

1段目。まず歪んだ丸型?を編みます。画像向かって右の半径が長く、左が短い丸です。

右の径が長く、左の径が短い

1段目だとほとんど誤差のうちですが、これを繰り返すと径の短い方に傾き、鍵爪のような形になっていきます。
2段目以降は「立ち上げず、ぐるぐる」(←かぎ針編み用語)編み進んでいきます。

4段ほど編んだところ。写真手前に向かって屈曲している

肋模様を出すために、稜線の目立つ「すじ編み」という技法で編んでいます。

螺旋状の稜線が見えてくる

あみぐるみの場合は最後にわたを詰めますが、今回は長く、しかも屈曲した筒を作るので、作成中に詰め物をしていきます。編み地をくっきりと目立たせるために、濃い色の毛糸を詰め物にしています。

もはやアンモナイトと言って過言でないであろう

屈曲させつつ、筒を太くしつつ編み進みます。全体が渦巻を形成しはじめます。1周巻くと、かなりアンモナイトっぽくなってきます。

ここで止めれば正常巻きアンモナイトだ

平面を離れはじめる

さて、かぎ針編みで筒を編むと、編み目が左から右へ傾きます。これを「斜行」と言います。そのまま編むと、ねじれる力がかかっているので渦巻が平面を離れはじめます。

画像の上に向かってずれはじめる

今回はやりませんが、このまま同一方向に巻き続ければ、バネ状の異常巻きアンモナイト、ユーボストリコセラスを作れるはずです。

かぎ針編みで再現する限り、異常巻きの方が自然なのです。平面状の渦巻、つまり正常巻きアンモナイトを編む方が、細かい調整を入れなければならないので不自然なつくりなのです。

Uターン

さて、平面を脱落してしまったので、このままいくとバランスが取れなくなってしまいます。

やばい

あわててねじれの方向に成長します。

戻れ戻れ
戻りすぎ

ここでまたうっかり成長しすぎ、突出してバランスを崩します。

逆方向にUターン

そこで戻ります。もとの平面が左巻きだったのに対して、右巻きになります。

突端が見えづらいので全体をひっくり返します。

ピンクのマーカーは裏に隠れて見えない

しばらく進むとはみ出します。

また突出しそう

今度は左巻きに、戻ろうとします。

写真はまたひっくり返している

はみ出しては向きを変え、右巻きと左巻きを繰り返します。

それっぽくなってきた

理屈では、この調子でいくらでも大きくしていくことができます。
それっぽい見かけになってきたので、この辺で完成に持っていきます。ニッポニテスは大きくなると肋が大きくなり、フレアードリブ(襟状肋)になってくるとのことなので、すじ編みよりさらに稜線がはっきり出る引き上げ編みに技法を変えます。

線をバキッと出す

写真では見えませんが、最後だけは詰め物を固定するために隔壁を編みつけています。ちょっと奥につけて、住房とします。

殻ができた

殻ができたので、別途軟体部をあみぐるみで作ります。
軟体部は発生をシミュレーションしていないので詳しく説明しません。かぎ針編みはこういう造形が得意だと理解していただくくらいで大丈夫です。

ぐろかわいい

ここでは、以下の動画を参考に、アンモナイトの軟体部がオウムガイよりイカやタコに近いという説を採ります。

すなわち、
・頭巾を持たない
・触手は10本
とします……あ、間違えちゃった。触手を8本で作っちゃった。気が向いたら編み直します。

殻に入れます。

→イン→

ニッポニテスは殻の造形のおもしろさでなんぼだと思っていましたが、軟体部を入れるとぐっと生き物らしくなりますね。

できあがり

できました。思った通り、技法と作る対象が噛み合っています。全然難しくない。自然に形作っていくことができます。

当初は茶色のメタリックな糸で殻を、ベージュの糸で軟体部を編みたかったのですが、茶色の糸は全体が光って肋の線が目立たなかったため、逆になりました。

探せば宝石化したアンモイトに似た色の糸もありそうだし、実際にはあり得ない原色で縞模様に編んだら逆に構造が分かりやすいかもしれません。展開はいろいろ考えられます。

楽しいので、これからも試行錯誤しながら作っていくつもりです。ちょっと巻きがあやしいので、もうちょっと資料を読み込んで、正確なモデルにしていきたい。もともと生き物に詳しいというわけでなく、論文には当たっていますが数式が読めないので巻き方の間違いは多々あると思います。ご指摘歓迎です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?