群来


気乗りのしない小樽行きだった。
雨の薄野を午前に出る。
琴似の街を過ぎ銭函にさしかかると、もう札幌の面影はない。
浮足立つ気持ちも、華やかな色気もきえる。
千歳から札幌に向かう汽車とは真逆の感情が胸に広がる。

小樽の駅を少し歩くと、札幌には無かった栄華の跡と旧い色の匂いが坂道を噴き上がってくる。
悲しげで淋しげな下町情緒が土産屋の他国訛りにかき消されてしまうが、それくらいがちょうどよろしい。


一年に数度、小樽の海が白く濁る。
鯡の群れが日本海の荒波を白くする。

恋しい街、小樽。 







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