食の未来を語る

食の未来を考えるきっかけになったのは、
2018年(夏頃だったかな?)に
森枝幹くんが声をかけてくれたプロジェクトからだった。

渋谷のIT企業の社員食堂。
社員食堂といえば、安くて早くて〇〇いもの。というイメージ。
幹くんは社員食堂でしかできないことをやろうと言った。

一般的な飲食店は、継続するために利益が必要。
来るか来ないかわからないお客さんのために
食材を用意して、仕込みをして待っている。
時には準備が無駄になることもあったりなかったり。
そして、お客さんは何回来るか。週に何回?月に何回?年に何回?

一方、社員食堂は、まず利益がいらない!
(これは言い過ぎ。ほんとはちょっといる。)
多少の増減はあったとしても、毎日一定数の来店がある。
そして、その大半がほぼ毎日来てくれる。

社員食堂と一般的な飲食店では、何もかもが違う。

利益がいらない(※ほんとはいる)から、とにかく食材に拘ることができる。
社員食堂なのに、放牧の豚、オーガニックなチキン、ASC.MSC認証の魚介類、米も雑穀も無農薬、塩は上五島の工業化されていない塩、味噌は千葉の伝統的な製法の味噌、野菜も半分くらいはオーガニック、あとは過剰生産や流通できなかったものの引き受け、など。

オープン準備中は未来的な飲食店の形ができるとワクワクした。
社内向けのプレオープンは2018年の11月。
しかし、現実は思ったよりちょっと厳しかった。
我々がそれまで対面していたお客さんは、食のリテラシーが高い人が多かったみたいで、社員食堂としては、理想の形はなかなか思ったように受け入れてもらえなかった。
それでも形を変えながら、社員の人たちにも喜んでもらえる状況ができた。
2019年3月のグランドオープン以降は一般のお客さんからも好評を得た。
(新型コロナウイルス感染症により、社員の方々が基本週一出社のリモートワークとなり、2020年5月に閉店)

この取り組みを一回やってしまうと、
これ以上のことができるんじゃないかと期待してしまった。

他でも画策してみたけど、なかなかうまく進めなかったところ、
2019年2月、
今回のパートナーであるユーハイムの河本社長からお声がかかった。

当初は別の方向性の相談だったが、進めていくうちにいろんなしがらみに負けて断念することになった。
ただ、違った形でご一緒できることになり、本格的にスタートしたのが
2019年の12月頃。

テーマは「食の未来」
普通、未来というと新しいことやテクノロジーを想像する。
おおよそ現在を起点として先のことを考えることになると思う。
しかし、今回はスタートを過去に置くことで、未来を考えることにした。

人類の最初の料理は多分「スープ」。
世界中にスープ料理があり、日本でも歴史上長らくスープ(鍋とか汁物)が主食だったはず。
レストランの語源になった、体調の悪い人のための消化の良い料理「元気になる食べ物」も「スープ」だった。

奇しくも、新型コロナウイルス感染症が流行し、
健康であることが非常に重要な状況になり、消化によくたくさんの食材が摂取できるスープをシグネチャーメニューにすることした。

シグネチャーメニューである「無農薬野菜のスープ」
最近ではスープ屋さんもたくさんできているけど、これは全く違うアプローチで作り上げた。
派手さは0。むしろ見た目は非常に野暮ったい。
基本は無農薬無科学肥料の野菜を使い、90℃で1時間以上低温でじっくり火を入れ、野菜の繊維を溶かしてうまみを引き出した野菜のベース。

日本昔ばなしに出てきそうな、野菜が溶けかかったような汁物。
昔は家庭で時間をかけて作っていたものが、今では時短簡単の流れに押されて時間をかけた料理が少なくなってきている。
家で無理して作らなくていいように、この店で作ることにした。
スープは、3-4種類から選べる形に。
定番は、昆布のみの無塩スープ。これは病気や宗教、食習慣を超えてほとんど全ての人が食べられるスープになっている。
(一部、甲状腺に疾患がある方は除く。ごめんなさい。)
あとは八丁味噌汁やアーモンドミルク、火鍋風、トマトベース、豆乳、チキンジンジャーなど、日替わり。

オーガニックの野菜を使う理由は、健康面はもちろんのこと、
地球環境へのダメージに着目している。
化学肥料や農薬は(大小は別として)間違いなく、
地球環境に対して影響を与えている。
それらを使用しない野菜は、地球環境へのダメージが少ない食材で、
それを使い、作る量が増えれば、環境にも少なからず貢献することができる。
SDGsやサスティナブルという言葉が先行しているが、さまざまな無理や無駄、負担をいかになくしていくかが大切だと考えている。
SDGsもサスティナブルも関係なく、ただ食べるだけで地球が良くなる。
そして、健康で元気になる、そんなスープを毎日食べて欲しい。
さまざまなトッピングも用意しているので、それぞれのライフスタイルや食習慣に合わせて楽しんで欲しい。

そして、お昼は日替わりのランチボックス。
それは社員食堂でチャレンジした形を引き継がせてもらおうと思う。
仕入れ状況に合わせて、日々変わるメニュー。
同じものが毎日並ぶなんてことは、自然の世界では考えられない矛盾であり
当たり前じゃないことが当たり前になっていることに気づいて欲しい。
一つ進化したポイントは、
「発酵」「スパイス」「ハーブ」は必ず取り入れる。
西洋にも東洋にも共通する医食同源。
ただ美味しい料理ではなく、健康と元気になる食べ物を提供したい。

もう一つのシグネチャーは「ジビエホットドッグ」
広島の「.comm(ドットコミュ)」に協力してもらい、
オリジナルの形状でソーセージを作ってもらうことになった。
「ジビエ」も最近の流行りもののように伝わっているかもしれないけど、
狩猟採取の時代はもちろん野生動物しかいなかった。
そして、日本でも食用の家畜の生産が始まったのは明治以降。
それまでは肉といえば野生動物(ジビエ)だった。
つまり、日本人に一番馴染みがある肉は実はジビエということになる。

ジビエを選んだ理由はいくつかあり、一つは獣害問題。
獣害対策として、猟が行われているが、まだまだ多くの命がそのまま山に残されたままになっている。
統計によると、駆除された野生動物のうち、食肉として流通されているのはやく7%らしい。さらにそのうち人用は80%程度。
食べることで、命が無駄にならないように、環境が整備されていく一役になればと思っている。
また、一方で家畜の生産による地球環境への負荷についても目を向けると、
食肉用の家畜を育てるために餌や水や土地で、人の食料が作られるようになった方が環境負荷は減る。
食肉用の家畜は殺すために育て増やすのに、自然に増える野生動物は無駄に殺す。
このジビエホットドッグで、そんな矛盾した環境が変わることを願う。

また、ホットドッグはもう一種「プラントベースホットドッグ」
世界の食料問や題環境負荷の観点からも、肉以外のタンパク質が重要になる。
色々なメーカーや製品を試した結果、当初デンマーク発のサスティナブルプラントベースミートブランド「ナチューリ(Naturli’)」のソーセージを採用した。大豆ではなくえんどう豆を使用しているので、独特の匂いが少なく、とても食べやすい。
だがしかし!オープン直前にメーカー終売のお知らせが入り、泣く泣く断念。さらにいろんなメーカーのものを試食し続け、日本アクセスの100%植物性にこだわったプラントベースドフード「MALdeMEAT」(マルデミート)に辿り着いた。
肉好きでも美味しく食べられるプラントベースとして、広まって欲しい。

パンにもこだわり、隣に出店しているドンクさんと共同で開発。
粉の配合から、サイズ、形状まで何度も試作した上で辿り着いた。
ジビエにもプラントベースにも合うパン。

野菜も豚も鶏肉も卵も米も雑穀も塩も醤油もみりんも塩麹も味噌もジュースもクラフトビールもあらゆるアイテムに拘っているので、順番に紹介していこうと思います。


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