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青い鳥を見つける人生の旅

働き続けてきて心がカラカラに乾いてしまっていたという辛玉順さん。そんなときにコーチングと出会って水を与えられて潤いを得て、自分らしさを表現するようになったそうです。潤いのある自分から同僚や家族と関係を創り始める中で、求めていた幸せは自分の中にあると気づいていく。自分のストーリーを本当に楽しそうに語る姿はまさに潤いあるあり方でした。

Co -Active Story vol.14  辛 玉順(シン オッスン)さん
プロフィール:在日コリアン3世。2002年、カリフォルニア州立大学チコ校を卒業後、日本オラクルへ新卒で入社。東日本大震災をきっかけに転職を決意し、2011年9月よりグーグル合同会社にて勤務。会社の中の「縁の下の力持ち」であるオペレーション部門に所属し、新製品・サービス立ち上げ、グローバルプロジェクトへの参画や、CX推進プロジェクトを推進。2019年、参加したトレーニングでのエグゼクティブ・コーチとのセッションをきっかけに自らもコーチを目指し学び、2021年8月にプロコーチ資格であるCPCCを取得し、同年10月ICF認定ACCを取得。「会社員 x コーチ」のパラレルキャリアとしてコーチとしての活動の幅を広げながらのチャレンジを継続中。


―今日はよろしくお願いします。まずはコーチングを受ける前はどんな人で、どんなきっかけで受けたのか、ぜひ聴かせてください。

私は、仕事に没頭して生きてきた気がするのですが、ちょうどその頃は管理職を自分から辞めて「一からまた違う仕事をしたい」と上司に伝えて、それで新しい仕事を始めたあたりでした。


―そうだったんですね。

そうなんです。それで「私の次のキャリアのステップって何なんだろう?」と考えていた時に、上司との1on1で「オッスン、この研修あるんだけど行ってみる?」と声をかけてもらいました。

それがロンドンで実施される『take the lead』というもので、「ロンドンへ行けるなら、もちろん行きたいです!」と手を挙げました。女性だし、アジアだしっていうことで、選考基準はあったもののOKが出ましてその研修に参加したんですね。

そうしたら、同じくらいのレベル感のグローバルの同僚がいました。その研修で「5年後、10年後オッスンはどうなっていたい?」と直球・核心で聞かれたんですよね。今思うと恥ずかしいんですけど、その時に何も浮かばない。ただただ「早く引退したい」とか、そんなことしか浮かばなくて、そんな自分がすごく残念だったし、悲しかったんですよね。


―そういう風に言ってしまった自分に「どうしてそういうことしか出てこないんだろう」と?

そうなんですよ。「私、情熱をどこに置いてきたんだっけ?」って感じもあるし、周りがすごく羨ましくもありました。「ダイレクターになって50人のチームを育てたい」とか「自分でビジネスを始めてこうなりたい」とかそんな夢をみんな持っていたのに、私だけ小さくまとまっているなって、そんな淋しさがすごくありました。


―持っていた肩書きを手放したいとか、10年後を思いつかないことに対して自分への淋しさを感じるとか、あまりご自分に対して可能性を感じていなかったように聞こえるのですが。

本当にそうですね。あの当時はもしかしたら、暗黒まではいかないけど、迷子になっていた時期なのかなと思います。管理職を手放したことも「本当によかったのかな、私」っていう迷いみたいなものがありましたし、一生懸命やってはいたんですけど、会社員20年目くらいで疲れ切って、伸び切って、ふんばりが効かないゴムみたいにゆるーってしちゃって、弾力がない感じの自分だったんだろうなって思います。


―なるほど。今思うとすごく疲弊していたような時期なんですね。

はい、そうです。

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―そんな時に、コーチングに出合っていくのですか?

そうなんです。その研修の後に、会社がコーチをつけてくれました。あわせて「スポンサー」という別の部署のダイレクターの方が6ヶ月間私に伴走してくれるという機会がありました。



―スポンサーというのは、メンターのような感じですか?

はい、メンターみたいな感じですね。それで6ヶ月間、月に1回、コーチ・スポンサーの2人と1on1させてもらって、何でも話せる場があったんですよね。



―それはどんな経験だったんですか?

その時間は「何でも持ってきていいよ」と言ってもらっていて「何でも話していいんだ」っていう、すごくおもしろい経験でした。最初は、日々忙しいので、事前にはあまり考えないままコーチングの時間になり「ヤバイな」と思いながら行ったりしていたんです。

でも、その場へ行くと話したいことがいっぱい出てきて、脈略もなく話したこともありました。それでも、コーチのおかげで自分の考えがとてもまとまったり、コーチング後にふと「あっ」と点と点がつながる瞬間がすごく増えました。

あと、仕事をしながら「価値を出さなきゃ」と自己犠牲的な自分が多かったように思うのですが、コーチが私を客観的に見てくれました。コーチングって守秘義務あってこそなので、社内のパフォーマンスレビューとか周りからどんなことを言われているのかとか評価の内容も全てお見せしてさらけ出したんです。

そうしたら、コーチから「オッスン、結構いい感じじゃないの?なんでそんなに自信がないの?」とそう言われて。「あれ、客観的に見たら確かにできていることもあるし、周りからも結構評価されているんだな。」っていう気づきをたくさんもらいました。そういう中で、自分のやりたいことや私ってこういう人間だったんだなって、少しずつ気持ちが開いていく感じがありました。

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―「気持ちが開いていく」と表現してくれましたが、やりたいことが自然と出てくる。そんな経験だったんですね。

そうですね。植物でいえば、カラカラだった自分の体に少しずつ水をもらって潤いが入って、生きている実感やこんな自分でもいいんだと、そんな当たり前のことを思い出させてもらった感覚があります。


―なるほど。そんな経験をしたことが、今度は自分も学んでみたいとなっていくのですね。

そうなんですよ。管理職としての自分は、もちろん学びもあったし、一生懸命やって悔いはないものの、私がもう少しこうできていればというちょっと苦い思い出でもありました。

上司と部下のような上下の関係だと、いろいろなチャレンジがあったのかと思うのですが、コーチングという関わりを自分が経験したことでコーチとクライアントのような関わり方もあるんだということに気づきました。自分が体験してすごく実感できたことだったので、私も誰かのそういう存在でありたい、私みたいな人って意外といるんじゃないかなって。

だから、コーチングを学んでみることが私の後半の人生に潤いやオアシスのような楽しみをもたらしてくれるんじゃないかって期待があったんですよね。


―そうですか。上司部下という上下の関係よりも、コーチとクライアントのような対等な関係の方が自分も周りのことも活かせて、自分も周りも潤うような。

そうです。刺激し合える。エンパワーメントに可能性を引き出せる。上から上司としてやるよりも、横から仲間としてそういうことができるのは素晴らしいことだな、と。


―それで、CTIの基礎コースに参加されたわけですけど、コーチングを学んでみての印象や感想はどんなものだったんですか?

まず、その場がすごくあったかくて、居心地がよかったことを覚えています。その時、がくさんとなべゆきさんの二人がリードで、今でも本当に覚えているのはまず、そのあり方に圧倒された感じがしました。

加えて、アシスタントの方も含めて「こんな風に場を創っていけるんだ」ってじんわりと「うわぁ。うわぁ」という強烈な気づきというか。そして、「自分はこういう場にいたいし、自分もそれを創れる人でありたい」という両方のことを基礎コースで感じて、ただひたすら楽しかったんですよね、2日半。

受講生のみんなも面白い人が集っていて。「△△会社の○○です」っていう役割とか会社とかを外して、「シン・オッスンです」っていう風に関われることがとても新鮮だったし、ありのままでいても否定もされなくて、見守られている感じがしてポンって開いちゃう。基礎コースで虜になった感じはありますね。



―そうですか。じゃあ、場があったかくて、所属や役割などとは関係なく人としてその場にいられるということで居心地がよかったんですね。

そう!そうです!そうだったんです。とってもよかったんですよね。


―その後、応用コース・上級コースと進んでいかれましたよね。その中で、オッスンさんが一番自分に学びや気づきを得たなというのはどんなことですか?

そうですね。コーアクティブの学びの旅は「自分再発見」の旅だなと思います。私は40代なんですけど、40代にしてまだ新しい自分がいることに気づかされたり、仲間やファカルティ(トレーナー)の皆さんに支えられて、嫌な自分もいい自分も全部まるっと向き合って、全部の自分をまた見つけ直しました。

あとは、自分の中にあったものを取り出すみたいな感覚です。上級コース中に感じたものを比喩で表現すると、コーチングって私にとって幸せの青い鳥みたいだなって。みんな自分の幸せとか持っているリソースとかあるんだけど、生きていく中でいろんなところへ置いて行っちゃって、ないって思っているんですよね。

私も「ない、ない」「どっか行っちゃったな」って探していました。『青い鳥』の物語でもチルチルとミチルがいろんな所へ探しに行ったけど、鳥は家にいましたよね。なんかそんな感じだなって思っています。幸せでいることを外に向いて探していたんだけど、中にあったんだなって。そんなことを2年間のコーアクティブの旅で、すごく腹に落とし込んだ感じがあります。

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―「自分の中にあった!」と気づいた時ってどんな気持ちだったんですか?

「私、結構最強なんじゃないか(笑)」っていうようで「へ〜」って素直にうれしいし、力がみなぎってくるんですよね。コーアクティブでいう「アーライ」(注:在り方に名前をつけて自覚的にする仕組み)っていう自分の中の力強い応援者みたいなのがいて、その中の1人が「無敵マリオ」なんですけど、星を取って、七色に輝いて、ワーっと力強く走る、そんな自分が確かにいるかもって。



―実感がしたんですね。

実感がしました。でも、そうじゃない柳みたいな自分もいて。いつも無敵なわけじゃなくて、コーアクティブで言うコー(注:つながり、静的などの意味合い)の静かな自分とか…いろんな自分がいる。それを旅の中で自分で宝箱を開けたり、仲間に「こんなところもあるよ〜」とパカっと箱を開けてもらったりして発見する時間でした。


―へぇ。本当に楽しそうに話しますね。

ひたすら楽しかったんですよねぇ。


―そうやって自分のことを再発見してどんどんと自分自身が変化すると、同時に職場や家族や身近な人など周りへも影響を与えたと思うんですよね。その辺の変化を感じたことはありますか?

そうですね。私がオープンでいることで、周りからも「オッスン、パワーアップしたね」とか「いいエネルギー感だね」「幸せそうだね」とかそんなことを言われることがすごく多くなったような気がします。

ちょうど今年の9月5日が今の会社での勤務10周年で、これまで一緒に働いた仲間や関わりをもった方からもいろんなメッセージをいただいたんですけど、「オッスンのおかげで、すごくいい影響をもらったよ」と言ってもらったりしたんです。そういうことを言ってもらう機会が増えた気がします。

昔だったら「いえいえいえ」と言っていたと思うんですけど、今はそういうのもありがたく受け取れるようになった感じもしています。



―「いえいえ」と言うのか「言ってくれてありがとう」と受け取るのか、その違いはだいぶ大きいですよね。

はい、今は「そっか」って笑顔で受け取っています。
あとは、家族との関係もいろいろ変わってきました。私がコーアクティブを学ぶ中で、ひとつ大きな変化があったのが、上級コース中に父が闘病生活をすることになったんですね。お父さんが病気になったことで、家族との関係性も「支え合う」とか「ひとりでがんばらない」ようになりました。

これまでの自分は助けを求めることが下手だったんですけど、一人で生きているわけではないから、大変な時はみんなで支え合って、弱みを見せてもいいんだよっていう関わり合いをコーアクティブを学ぶ中で気づかされた感じがあります。



―支え合う関係―それはお父さんとも他の家族ともということですか?

はい、そうですね。父が闘病する中でも私はコーアクティブを学んでいたからこそ響く自分、本当に大切なものを大切にするっていうことを大事に最優先して、いろいろな決断をしていたんです。でも、そんな中で、家族と想いや考えがすれ違うこともあって「さぁ、私どうする?」という局面がたくさんあったんですけど、そういうことにも、コーアクティブがあったからこそ、恐れず正直に向き合えた気がしています。

残念ながら、父は亡くなったんですけど、家族とともに父との最期の時間を過ごせたことは、私にとってすごく意味のあることで、コーアクティブをそんな中で学んでいたという奇跡、というか、運命みたいなことを正直感じています。



―家族のように身近な人だからこそ、意見の違いがあった時にお互いにこだわったり、衝突したり、もしくは我慢や遠慮をすることもあると思うのですが、そこをオープンで率直でいる術を知っていたことが家族、お父さん、オッスンさんにとっていい時間を過ごすことにつながったんですね。

はい、そうですね。


―聴いていると、オッスンさんのお父さんへ想いがすごく伝わってきます。

ありがとうございます。そうですね。お父さんは、私がコーチングを学ぶことを「そういうのが見つかってよかったな。結構向いているんじゃないか」って応援してくれていたんです。

自営業だった父からは会社員でいることに対して「お前たち夫婦は、会社員で大丈夫なのか」って常々言われていたんです(笑)でも、コーチングっていう私情熱を傾けられるものがあるということが、父にも嬉しいということも聞けていたので、これからどんな形であれ、コーチとして生きていくことは大事にしたいなって思っています。



―お父さんにすごく応援してもらって、進めてこられたっていうのもあるんですね。

はい、ありますね。

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―そんな周りの人の応援もあって資格を取るというひとつの区切りを迎えましたけど、この先はどんな風に生かしていきたいとかどんなことに使っていきたいかをぜひ聴かせてください。

そうですね。コーチングを私のライフワークととらえて「会社員 x コーチ」として様々な挑戦を続けていきたいです。今も会社の中で社内コーチとして活動させてもらっているんですけど、それは会社員として私が貢献できる部分として当たり前のようにやる。

それをやりながら、私は在日コリアンで女性でもあり社会的にはマイノリティであるので、そんな私のようなマイノリティの方々や、私のように「管理職はどうかな。縦のコーポレートの軸だけではなく横のつながりを大事にしながら生きていきたい」そんなことを模索する人に何らかの役に立っている、そんなコーチでありたいと思っています。

あとは、私の大好きな言葉で「pay it forward」があるんですけど、コーチングを通して私も社会や自分が属するコミュニティへの恩返しがしたいと思っています。これから私が恩返しをするために、コーチングというスキルとコーアクティブという生き方を自分が体現することで、より生きやすい社会だったり、会社員であってもなくても、自分の中の幸せの青い鳥のような存在をみんなが見つけて「私の中にあるね」っていうコーアクティブで言うNCRW(注:コーアクティブ・コーチングの4つの礎の一つ『人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である』)の関わりをしながらいろんな人に影響を与えることができる自分でありたいなという風に思っています。

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―「こういうところで使いたい!」という溢れるエネルギーが伝わってくる、力強くそして温かい言葉でした。ありがとうございました。

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