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自身にも組織にもTransformative Change(本質的な変化)を起こす


「結果を出すためにこだわってきたのは事柄で、そこには人がいなかった」と過去の自分を振り返る番野さん。結果を出すための自身のアプローチに行き詰まりを感じた時に学び始めたコーアクティブ・コーチングで「人に焦点」を実践し、自身も組織もより良い方向へ進化を遂げていくストーリーです。

Co-Active Story vol.6 番野智行さん

プロフィール:
NPO法人ETIC. ソーシャルイノベーション事業部 マネージャー 株式会社番野企画事務所 代表取締役 1977年京都府亀岡市生まれ。東京大学法学部卒業。2000年よりNPO法人ETIC.にて社会課題の解決に取り組むリーダー(社会起業家)の育成に取り組む。2005年に異文化間マーケティング/コミュニケーションを専門とするコンサルティング会社に転職。同社取締役を経て、2010年に独立し現職。より良い社会の実現に向けて、組織・個人がどう力を合わせることができるかがテーマ。仕事とお酒をこよなく愛する。米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブコーチ(CPCC)。米国CRR Global認定 組織と関係性のためのシステムコーチ(ORSCC) 。

Q:今日はよろしくお願いします。以前、番野さんの組織にCTI基礎コースを導入されていましたね。参加された方の反応はいかがでしたか?

今まで受けた研修で一番良かったなど、良い反応が山ほどきましたよ。

Q:山ほどですか!

ええ。NPOである私たちの組織の周りに集まる人たちって、自分の想いを大切に仕事にしたいという人が多いんです。少なくともお金を稼ぐことが主目的ではありません。ただ、そうした人が集まると意見の違いもはっきり出てしまいます。多様な価値観を持った相手、そして自分自身の思いを大切にしながら、良い協働関係を作るかということが仕事の上で大事なことの一つです。受講後に皆さんが現場で活用してくれている様子を見て、改めて、コーチングはそのためのパワフルなツールだと感じました!

実は、僕が基礎コースを受けた瞬間「これは自組織のみんなに受けて欲しい!」と思いました。しかし、強制的に参加してもらうものではないなと思っていました。組織としてそんなにお金に余裕があるわけではありませんし。ただ、私の仕事ぶりやインパクトが変わったことが社内に伝わったのもあり、多くのメンバーが関心を持つに至りました。タイミングがようやく来た感じです。

Q:なるほど周りの人たちが番野さんの変化を感じ取っていたのですね。もともと番野さんが基礎コースを受講されたきっかけは何ですか?

もともとコーチングはぼんやりとした関心がある程度でした。2002年ごろに知人からコーチングを紹介してもらう機会があって。なるほど、相手から答えを引き出しながら一緒に考えたり決めたりするのを促す関わりがあるのか、そういうのも仕事の役にたつかな。いずれどこかで学ぼうかなと、その程度でした。

ただ、2012年6月に基礎コースを受講したのですが、このころ仕事の中で人と意見が対立し、衝突することが増えていました。

Q:(今の様子から)意外な感じがしますけど。それまでも人と衝突することはあったんですか?

そうですね、よい社会を実現することが我々の存在目的ですので基本「どうすれば結果につながるか」が圧倒的に大切で、メンバーの感情やプロセスはどうでもいいと考えていました。結果が出ないのは自己満足です。自分たちの感情は二の次で、何をどうするかを皆で突き詰めるようにしていました。

ただ、意見が合う人とは上手くいくのですけど、副作用として合わない人とは議論の末に衝突するということを繰り返していました。気がつくと、苦しくなった部下が涙を流しているということも時々ありました。

Q:え、ほんとに!?

はい。昔の上司に「番野さんの言っていることは正しいけど、相手の出口を全部ふさいで追い詰めている感じがあって、それはきついかもしれない」って言われたことがあります。

複数の人に「番野さんの言っていることは正しいんですけど、私にはそこまで考えるのは無理です」と言われたりもしました。正しいゆえに反論できないみたいなインパクト(影響)を与えていましたね。

いま振り返ると、コンサルタントやフリーランスの時代が長かったので「価値を出してなんぼ」というプレッシャーがあったのだと思います。

ただ、このアプローチはお互い消耗します。ある人との衝突をきっかけに、そのやり方は改めて限界だと感じました。その時に、ふとコーチングのことを思い出したんです。

いつかは行こうと思っていたし、人の話を聞く訓練をしながら少し頭を冷やそうというぐらいの軽い気持ちでした。勉強するのは嫌いじゃないんで。コーチになろうとか、仕事でバリバリ使おうとかそこまで考えて申し込んだわけではありません。

Q:他のコーチングも調べたのですか?

私の知っている人(コーチングを学んだ人)がみんなCPCC(CTI認定資格)を持っていいてみんな私と違っていい人だったんですね笑。それでCTIのホームページをさっと見て、何かよさそうだなと思い申し込みました。深くは考えていません。

ただ、その直感は正しかったと思います。感情を扱うこととか、プロセスを大切にすることとかが必要だと薄々気づき始めていたのだと思います。この時は自覚的ではありませんでしたけど。

Q:それで基礎コース学んでみての感想や印象はどんなものだったのですか?

パラダイムシフトが起きました。価値観が変わりました。

Q:どんな変化ですか?

「事柄」ではなく「人」に焦点を当てるという考えがまず衝撃でした。僕の仕事の中に「人」はいませんでした。結果が全てみたいな。結果が出ていれば、それはやる気の証だし、頑張ったということ。逆に、結果が出ていないということはやる気がないことだ、みたいな。

それまで本当に「人」の話を聞いてなかったなと。相手の話の「事柄」についてはめちゃめちゃ聞いているんですけど、全く相手の感情には焦点を当てずに聞いていたということが自覚できて「そりゃあ、相手も大変だ…本当に申し訳ない…」ということをすごく思いました。

Doing(行動など)だけではなく、Being(感情、あり方など)を大切にするというのも驚きでした。僕は基本Doingのみでしたから。でも良いDoingのためにも、Beingは確かに必要だということが急に腹落ちしました。

これは、自分のためにも周りのメンバーのためにも、そして結果を実現するためにも大切な学びだと確信し、1日目を終えた段階で応用コースを全て申し込みました。その後、さらに筋トレが必要だと思って、上級コースに進み、資格を取得するに至ります。

Q:学びながら変化は感じていましたか?

フルフィルメントコース受講後にコーチをつけました。コーチングを学ぶからには自分も受けてみようと。自分自身の感情やBeingを大切にすることで、パフォーマンスが上がることを実感できて凄くよかったですね。ということは、こういう関わりができると、周りの人のパフォーマンスも上がっていくだろうという確信につながりました。「なるほどこういう関わりをするとこうなるんだ」、「視点を変えるとこんなに変わるんだ」、プロセスコースでも最初はわからなかったけど「まあ確かにこの関わり大事だよな」と実感しながらかなり前のめりで学びました。

コアコースの間は正直自分が上手くできるようになる感覚はなかったんですけど、コミュニケーションについて、僕が全くみていなかった可能性であり真実を知る感じの旅でした。マネジメントという側面でも、クライアントである社会起業家やリーダーを支援する時にも、物凄く役に立つ確信があった。

これまでに相手のやる気を引き出し、変容を支援できる素晴らしいリーダーやメンターの方々と一緒に仕事をする機会があったのですが、彼らの関わりの謎も解けました。まさに「事柄」だけではなく「人」に焦点を当てていたし、相手の気持ちを大切にしていたのだなと。自分のやり方の限界を突破する鍵がいくつも見つかって、ただただ楽しく学んでいた記憶があります。

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Q:自分自身にコーチをつけてどんなパフォーマンスが上がったんですか?

基本仕事が好きで、いろいろと引き受けるのですが、忙しくなりすぎて仕事を気合と根性でやっつけるという感じになっていました。

そんな中、定期的に2週間に1回、落ち着いた場所に移動し、対面でコーチのサポートを受けながら、いつもの仕事とは違うモードで自分の考えとか、してきたこと振り返ったり、これからどうするっていうことをちゃんと考えることで、仕事のパフォーマンスは変わりました。難しかった相手とも少しづつ関係が作れるようになったり、これまでできなかったことに挑戦できたり。

しっかりしたコーチにお願いすると確かに安くはありません。ただ、月に数万円を払ってアルバイトを雇うことで上がるパフォーマンスと、同じ金額を払って自分を整えることで上がるパフォーマンスを比較すると、私にとっては後者の方が費用対効果は高いと感じています。そして、自分も相手にそういう関わりができるといいなと思っています。

仕事柄、人と話す機会、相談を受ける機会は多いのですけど、アドバイスって結構役に立たない。こっちはこうしたほうがいいのにって確信を持って助言しても、向こうは腑に落ちないとやれないんですよね。強制する権限も何もないので。その関わりの限界は感じていました。

そこが完全に変わりました。相手を起点に、一緒にベストの選択肢や行動を見出していく関わりができるようになりました。自身の知識や経験を活かして、こちらから提案・助言もしますが、あくまで相手側が自分で考えて自分で選んでいくことを尊重した上でのことです。

Q:リーダーや起業家の人たちも納得して行動することでより結果を出すようになった番野さんの関わりの変化は周りの人も気づいていたんではないでしょうか。

最近会った人は、昔の話をしても想像がつかないと言われます。私自身もコーチングを学ぶ前、いったいどうやって人と関わっていたか覚えていません。そのぐらい変わりました。

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Q:先ほど話されていた組織内導入はそのような番野さんの変化を周りが実感していたタイミングだったのですね。導入後の皆さんの変化はいかがでしたか?

抽象的ですが、まずは社内のお互いの関わりが優しくなったと思います。「何のために」とか自分の想いを大事にして仕事がしたいと思ってNPOに転職する人が多いのですが、それを扱うスキルがなかったのが組織の課題でした。

中途入社の人が多いのですが、民間企業で十分安定した暮らしとか、良い稼ぎが得られただろう人があえて飛び込んできてくれるケースが大半です。そうやってリスクを取るからこそ、結果へのこだわりも強い。ミッションに共感する人を採用していたとしても、価値観や関心は人によって異なります。そんな中で、自分の想いを大切にしながらどう他人と一緒に仕事をしていくかとなると時々衝突が起きる。そこに対処するための共通のOSでありツールがインストールされた感じはありますね。

Q:想いがあるからこその課題ですね。

はい。その意味では、NPOの仕事とコーチングはとても相性がいいと思っています。


Q:ところで番野さんは何でNPOで働こうと思ったんですか?

他人のためというより、まずは自分や家族が幸せに暮らすために、良い社会を作りたいと思っています。昔はお金持ちになりたいって思っていたんですけど、それって幸せじゃないんじゃないかって思ったんです。

Q:それはいつ頃思っていたのですか?

薄々気づいたのは中学生くらい。いい会社に入ってお金を稼ぐことを目標に勉強していたんですが、周りにいる人が幸せでないのに自分がお金持ちっているのは幸せなんだろうかと。

極端に言えば、お金を持っていたって社会に格差が広がっていたら、いつ後ろから強盗に刺されるか分からない。自分の子供が誘拐されるかもしれない。バブルも崩壊し、これから高齢化が進む中で、世の中の課題は増えていくだろうなと漠然と思っていました。

Q:幸せとはを考えるきっかけはなんですか?

偉そうなことを言っておきながら全く恥ずかしい話なのですが、大学に真面目に通っていなかったため、4年生の時点で、2年留年して卒業に6年生かかることが決まっていました。すると同級生は先に就職することになります。でも全然楽しそうじゃない人がたくさんいて。そういうのを目の当たりにして、改めて何のために仕事をするのかをちゃんと考えようと思いました。

とはいえ、何に興味があるのかが分からない。法学部だったこともあり、司法試験の勉強をしていたのですが、興味を持てず途中で断念。公務員は性格的に向いていなさそうで、役に立つイメージがなかった。かといってピンと来る民間企業もない。完全に行き詰っていました。

そんな中、幸運なことにNPOという選択肢と出会うことになります。今の私のメインの職場であるNPO法人ETIC.(エティック)です。


当時NPOはまだまだマイナーな選択肢でしたが、プロフェッショナルとして、ビジネスとして、よい社会の実現を一番の目的に仕事をできる。また、そうした選択肢を社会につくっていく。これは面白そうだなと思いました。早速インターン生として採用してもらい、そのまま新卒で就職することになりました。

直感で選んだというのが正直なところですが、人生の数ある決断の中で最も良い決断だったと思います。こうした選択を許してくれた両親にも感謝しています。

Q:そういう想いがあってNPOを選ばれたのですね。良い社会を実現するために働くというのはまさに番野さんの働く目的であり、生きる目的だと思うのですがそれを見出すためにはリーダーシッププログラムに参加されたことが影響していると思いますけど受講された理由は何だったのですか?

最初にコーチングのコース内でプログラムを紹介された時は、100万円は高いし、内容も良く分からないし、時間もかなり取られるプログラムに行く人がいるんだ、変わった人もいるなぁと思いました。自分は行くはずがないって感じでした。

しかし、2年後にはあっさり申し込むことになります。理由は二つ。

一つは上級コースの学びを進めて行く中で、担当ファカルティの人に勧めてもらったこと。自分らしさをどう活かしていいかがわからず、教科書通り、いや教科書の劣化コピーのような40点~50点のコーチングを抜けだせなかった。これは本当にもったいないし、何とかしたいと思ったときに勧められました。

もう一つは、30代も半ばになって「自分自身が何者で何をやりたいのか」を、まとまった時間をとってちゃんと考えた方がいいんじゃないかと考えたことです。コーチングを受ける経験を通して、自分自身に時間とお金を投資することがパフォーマンスに良い影響を与えるということを知っていたことも大きいですね。

ずっと仕事ばかりやってきてアウトプット、アウトプットってやってきてダーっと走ってきた。ここからも走りたい。でも、この先の人生は長い。だからこそこのタイミングで自分のためにお金と時間をかけるというのは意味がありそうだと思って申し込みました。プログラムの中身はよく分からなかったのですが、CTIのプログラムで受けて後悔したものは一つもなかったので。

Q:リーダーシップを学んで一番得られたこと、気づいたことはどんなものですか?

4回のリトリートがあるのですが、最初のリトリートで受講費分は回収したと思いました。自分のタイプの理解ですね。他者から見た自分の魅力が何なのか、完全に誤解をしていました。自分のインパクトがエキセントリック(人が話しているいないに関わらず周りに与えているインパクト(影響)タイプの一つ。)だったなんて思ってもみませんでした笑。

もっとスマートに、ロジカルに分かりやく話せるようになりたいと思って必死で努力したんですけど、自分の強みを踏まえない、無駄で痛々しい努力だったんだなと笑。自分らしさを活かしたほうが楽だし、周りにも良いインパクトがあることが腹落ちしました。

Q:それは大きいですね。

あとは、難しい状況や未知の状況でもリーダーシップを取って何かを進めていくことができるようになりました。やり甲斐があるが難度も高いプロジェクトや、人前で話す仕事を積極的に引き受けるようになりました。黒子に徹した人生を送ってきたため、このプログラムを受けていなかったら全く実現していないことです。とても充実しています。

人前で話すのは本当に苦手だったのですが、昨年は社会変革に関する海外のカンファレンスでパネリストとしてお話をさせて頂くまでになりました。人生の目的にむけて、仕事で自分を表現することで共鳴するように良い仕事が舞い込んでくる。いい意味でフィールドが広がっており、やりたい仕事が多すぎて選べないのが今の贅沢な悩みです。

Q:学んだことを使いこなしているし何より楽しそうですね。

はい、基本楽しいです。


Q:相当学んだことを実践しているのですね。自らミッションを掲げて周りを巻き込んで進んでいる姿が目に浮かびます。

コレクテイィブ・インパクトという考え方があります。NPOや政府だけでなく、企業や市民も含め、自分たちの手で、良い社会や地域をつくっていこうというものです。

自分のパフォーマンスを上げると報酬は増えるかもしれませんが、社会的なインパクトとしては非常に小さい。私は、あらゆる人や組織が、より良い社会の実現に貢献したいという願いを持っていると思っています。しかし、何らかの事情でそれを十分に発揮できていない。その状況が変わっていけば、大きく社会は変わっていくと思います。

まだまだ、先行きは明るくありませんが、そこに自分の人生を使っていくことが、子ども時代に描いた幸せへの道なのだと今は確信しています。そうした仕事をする上で、コーチングやリーダーシップで得た考え方やスキルはかなり役に立っています。

Q:今日はありがとうございました。


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