本「ソラミツ 世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ」

世界初のCBDC

カンボジアは、2020年10月28日、世界初のCBDC(Central Bank Digital Currency)であるバコンを正式に稼働開始した国であり、その技術を担っているのは、日本のスタートアップであるソラミツです。カンボジア中銀がどういうビジョンを持ってバコンを発行することになったのか、バコンの成立要件はどういうものか、それをソラミツの技術がどう解決したか、というストーリーが描かれています。

CBDCは電子マネーとはどう異なるものでなぜ求められているのか、デジタル人民元の動きをどう捉えれば良いのか、どうやってブロックチェーン技術で成立させるのか、といったことに興味がある人にはおすすめの本です。

また、カンボジア中銀のメンバーの未来を見据えた先進的な考え方とそれを実行する力は、本当に尊敬できるものです。さらに、出自も経営方法もユニークなソラミツという企業も本当に魅力的です。どちらもなかなか真似できないですが、世界初を成し遂げた人たちのドラマとしても面白い本です。

学んだことその1: CBDCの要件

CBDCとしてどういう要件が必要か、というのは、本当に面白い論点です。バコンの場合は、一般のエンジニアが開発、運用、メンテナンスできるように、PythonやJavaScriptなどの広く知られたプログラミング言語で開発可能になっています。世界の多くのブロックチェーンは特殊な言語が必要で、そういった言語に習熟した高給なエンジニアを必要としないというのは、CBDCの運用上、重要な観点です。

学んだことその2: パブリックブロックチェーンvsパーミッションドブロックチェーン

ブロックチェーンは、ビットコインだと10分とかトランザクションに時間がかかって遅いし、proof of workをするために大量の電気を使う、というイメージがありました。ただこれは、暗号通貨で使われている技術がパブリックブロックチェーンだからであり、信用できる主体だけがブロックチェーンに管理者として参加できるパーミッションドブロックチェーンではこの問題は起こらないというのは、勉強になった点です。

#書評 #ブロックチェーン

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