Takashi Watanabe / 渡邊貴志

Project Design / STITCH INC. / music / man-made objects / Yamagata Dantsu / living in Hayama https://stitch-inc.jp/

Takashi Watanabe / 渡邊貴志

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    マガジン

    • 続続 (zoku zoku)

      音楽の「つづく」を考え、それを支える側としての思考と実践を重ねる連載です。

    記事一覧

    キュレーションからオーガニックへ:音楽市場における元本と利回り|続続 (zoku zoku) #1

    今年2月にスタートさせた「続続 (zoku zoku)」のプロローグを公開してから、9ヶ月が経った。「続く、続ける」をテーマにはじめた連載なのに、当の自分が中断させてしまって…

    風景としての音。

    先日、待ちに待った「sonihouse」の14面体スピーカー「sight」が自宅に到着してからというもの、音楽を聴くのが楽しくてたまらない。 空間にじんわりと溶け込む、…

    葉山に移住して2ヶ月経った。

    葉山に移住して2ヶ月。今こんな時代に、この町に住み暮らすことになったのも、なにかの縁なのだろうと思う。  真名瀬海岸のバス停の裏に、お気に入りのちいさな広…

    覚えておこう。

    世界がこんな事態になってしまうちょっと前に、古いフィルムのライカを買った。ちょうど結婚して葉山に引っ越したこともあって、これから続くあたらしい日々を、手元に残し…

    それでも光を。

    暗闇からでも光を見つめる。世界の様々なことを知っても尚、明るい方を信じて歩む。コロナウイルスを発端とした今の殺伐なる社会で、せめて自分はどうありたいか、どんな人…

    静けさを。

    早朝から夜まで付きっきりだったパリでの展示会を終え、久々に穏やかな昼下がり。展示場で、夥しい数の「もの」に囲まれていた日々を振り返る。  まったくもって、世界…

    まっとうに。 (2019年、暮れのごあいさつ)

    毎年恒例、年末の長文。今年1年を振り返ってみる。2019年のこの大晦日ほど、年の瀬の実感が沸かない日は、今までなかった。 それがこの1年の慌ただしさを物語るようであ…

    華やかよりも、健やかに。

    7ヶ月振りのロンドン出張が終わり、東京に戻ってきた。前回訪れた際には1人も知り合いがいなかった地に、今は日夜やり取りを重ねる仲間たちがいる。その環境の変化が、なに…

    村井邦彦のLA日記

    翼をください、荒井由実、細野晴臣(ティン・パン・アレー)、YMO。日本ポップス史において、途方もなく大きな足跡を残すアルファレコードの創業者、村井邦彦。実の息子で…

    旧井上房一郎

    先日ようやく訪れることのできたアントニン・レーモンド建築、旧井上房一郎がとにかく素晴らしかった。自分は江戸東京たてもの園にある前川國男邸の大ファンなのだが、前川…

    ほんやくコンニャクはまだないけれど。

    藤子・F・不二雄の国民的漫画『ドラえもん』に、「ほんやくコンニャク」というひみつ道具が登場する。 あらためて説明するまでもないと思うのだが、あのコンニャクっぽい…

    そんな未来はどこへ行ったんだろう?

    出張で4日間ほどシンガポールだった。チャンギ空港からフライト前にすこし時間があったので、この日記のような文章をしたためている。 滞在を通じて、あらためて確認した…

    バウハウスを訪ねて

    フランクフルト出張期間、すこし自由時間があったので、ICEに4時間ほどゆられ、念願であったデッサウの「Bauhaus」とその関連施設を訪ねることができた。 これがもう本当…

    そこに席があったんですか

    フランクフルトで開催されていた「ハイムテキスタイル2019」が、昨日無事に終わった。自分は会場と山形緞通のブースに出たり入ったりしながら計4日間の展示期間を過ごした…

    それは西洋のまがいものではなく(続編)

    今回、ロンドンの音楽レーベルや関係者を回りながら、日本のインディペンデントな音楽をプレゼンするということをやった。どんな反応があるものか少々不安な部分もあったの…

    それは西洋のまがいものではなく

    ロンドン出張の終盤、とびきり背伸びをして『The Savoy』に宿泊した。1889年創業、近代ホテル史のはじまりと言われる、元祖ラグジュアリーホテル。 テムズ川のほとりに…

    キュレーションからオーガニックへ:音楽市場における元本と利回り|続続 (zoku zoku) #1

    キュレーションからオーガニックへ:音楽市場における元本と利回り|続続 (zoku zoku) #1

    今年2月にスタートさせた「続続 (zoku zoku)」のプロローグを公開してから、9ヶ月が経った。「続く、続ける」をテーマにはじめた連載なのに、当の自分が中断させてしまって、非常に不甲斐ない。

    初回記事に様々な反応をいただいた読者のみなさん、連載をご一緒してくださっていた beipana さんにも、不義理をしてしまった。

    同記事を公開した後、すぐに次回記事の用意を進めていた。以降の連載で取り

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    風景としての音。

    風景としての音。

    先日、待ちに待った「sonihouse」の14面体スピーカー「sight」が自宅に到着してからというもの、音楽を聴くのが楽しくてたまらない。

    空間にじんわりと溶け込む、優しい音の響き。風景の一部をなす、朴訥とした民芸品のような佇まい。音が鳴るスピーカーとしてそこに存在しているという主張がなく、日常性の道具として、生活空間に馴染んでくれる。

    なによりの変化は、そんな音と空間を融和

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    葉山に移住して2ヶ月経った。

    葉山に移住して2ヶ月経った。

    葉山に移住して2ヶ月。今こんな時代に、この町に住み暮らすことになったのも、なにかの縁なのだろうと思う。
    
    真名瀬海岸のバス停の裏に、お気に入りのちいさな広場がある。そこには、なんの変哲もない椅子が数脚、海岸線と富士山が望む特等席に並んでいて、誰でも自由に座ることができる。

    毎日、毎時刻、色んな人が入れ替わり立ち替わり来ては、思い思いの時間を過ごしている。そのおだやか

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    覚えておこう。

    覚えておこう。

    世界がこんな事態になってしまうちょっと前に、古いフィルムのライカを買った。ちょうど結婚して葉山に引っ越したこともあって、これから続くあたらしい日々を、手元に残しておきたいと思ったのだ。

    背伸びして買ったはじめてのライカで、フィルムで、レンジファインダーで。散歩がてらに持ち出してはカメラに振り回されてばかりいたのだが、そうこうしている間に、世界は外出すらままならない状況になった。

    自分は3月後半

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    それでも光を。

    それでも光を。

    暗闇からでも光を見つめる。世界の様々なことを知っても尚、明るい方を信じて歩む。コロナウイルスを発端とした今の殺伐なる社会で、せめて自分はどうありたいか、どんな人間の在り方を美しく思うのか、その輪郭がよりはっきりとしてきた。

    やるせのない買い占め、過度な自粛、パンデミックを超えたインフォデミック、SNSを開けば否応なしに流れてくる負や怒りの言葉の洪水。心底うんざりとするし、今起きている様々な出来事

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    静けさを。

    静けさを。

    早朝から夜まで付きっきりだったパリでの展示会を終え、久々に穏やかな昼下がり。展示場で、夥しい数の「もの」に囲まれていた日々を振り返る。
    
    まったくもって、世界は華美なものに満ち溢れている。右を見ても、左を見ても、どこを見ても、購買意欲を掻き立てんとする華やかなデザインに、豪華なデコレーション、空間演出として鳴る爆音の音楽。
    
    ものそれ自体のデザインや、そこに込められた想いや意図はもちろんそ

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    まっとうに。 (2019年、暮れのごあいさつ)

    まっとうに。 (2019年、暮れのごあいさつ)

    毎年恒例、年末の長文。今年1年を振り返ってみる。2019年のこの大晦日ほど、年の瀬の実感が沸かない日は、今までなかった。

    それがこの1年の慌ただしさを物語るようであって、いちばん大切なのは毎日の過ごし方以外にないのだなと自覚した今を、よく表しているようにも思う。

    とにかく、働いた1年間だった。よく働いた。働きながら、好きなことに心身を注げている幸せを噛み締める日々だった。

    これか

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    華やかよりも、健やかに。

    華やかよりも、健やかに。

    7ヶ月振りのロンドン出張が終わり、東京に戻ってきた。前回訪れた際には1人も知り合いがいなかった地に、今は日夜やり取りを重ねる仲間たちがいる。その環境の変化が、なによりうれしかった。

    友人との夕食を終え、夜の9時を過ぎても太陽が照りつけるご機嫌な夜空の下、ひとりぶらりと歩く。地下鉄に潜ったところで電波は途絶え、様々な人種の入り混じった車両に身を任せていると、たくさんの考えが浮かんでは消えを繰り返し

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    村井邦彦のLA日記

    村井邦彦のLA日記

    翼をください、荒井由実、細野晴臣(ティン・パン・アレー)、YMO。日本ポップス史において、途方もなく大きな足跡を残すアルファレコードの創業者、村井邦彦。実の息子であるヒロ・ムライがグラミー賞を受賞したことも記憶に新しい同氏による、初のエッセイ集「村井邦彦のLA日記」。

    あんまりおもしろかったので、書こう書こうと思っていた読書録を、ずいぶんと後回しにしてしまった。本著を読み終えてからというもの、し

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    旧井上房一郎

    旧井上房一郎

    先日ようやく訪れることのできたアントニン・レーモンド建築、旧井上房一郎がとにかく素晴らしかった。自分は江戸東京たてもの園にある前川國男邸の大ファンなのだが、前川邸のお父さんのような存在、脊髄へ深く染みたインスピレーションの元に出逢った気がした。

    華美ではなく、豪華でもなく、インターネット時代になにか特別に映えるような主張を持つわけでもない。ただ、そこにはひたすらに美しい調和があり、それ以上に絶妙

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    ほんやくコンニャクはまだないけれど。

    ほんやくコンニャクはまだないけれど。

    藤子・F・不二雄の国民的漫画『ドラえもん』に、「ほんやくコンニャク」というひみつ道具が登場する。

    あらためて説明するまでもないと思うのだが、あのコンニャクっぽい外観をした長方形のやつで、食べるとたちまちにあらゆる言語を理解できるようになり、自分の話す言葉も自動的に相手の言語に翻訳されるという大変便利な代物だ。

    これさえあれば、世界中の自国語の通じない相手とも自由自在に会話ができるようになり、意

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    そんな未来はどこへ行ったんだろう?

    そんな未来はどこへ行ったんだろう?

    出張で4日間ほどシンガポールだった。チャンギ空港からフライト前にすこし時間があったので、この日記のような文章をしたためている。

    滞在を通じて、あらためて確認したことがある。前回訪れたときにも薄々感じていたのだが、自分はシンガポールが非常に苦手だ。特に中心部の市街地を歩き回っていると、明らかに気分が冷めて、シラけていくのに気付く。まるで画一化された巨大なショッピングモールの中に捕らわれているよう

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    バウハウスを訪ねて

    バウハウスを訪ねて

    フランクフルト出張期間、すこし自由時間があったので、ICEに4時間ほどゆられ、念願であったデッサウの「Bauhaus」とその関連施設を訪ねることができた。

    これがもう本当に素晴らしい体験で、深く深く心を揺さぶられた。バウハウスが残した偉大さについては、わざわざ自分が説明するまでもないのだが、その場で受けた感動を言語化して残しておきたい。

    足を踏み入れてまず感じるのが、校舎全体、空間全体にピンっ

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    そこに席があったんですか

    そこに席があったんですか

    フランクフルトで開催されていた「ハイムテキスタイル2019」が、昨日無事に終わった。自分は会場と山形緞通のブースに出たり入ったりしながら計4日間の展示期間を過ごしたのだが、はるばるドイツまで来たに相応する、様々なフィードバックを得ることができた。

    まず、身内だからというわけではないのだが、展示会場全体も、出展されていた他メーカーのプロダクトも、ひととおりぐるりと周って感じたことがある。それはやは

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    それは西洋のまがいものではなく(続編)

    それは西洋のまがいものではなく(続編)

    今回、ロンドンの音楽レーベルや関係者を回りながら、日本のインディペンデントな音楽をプレゼンするということをやった。どんな反応があるものか少々不安な部分もあったのだが、その反応はおおむね、想像していたよりも良かった。

    向こうがどんなふうに面白がってくれたかというとまず、「日本のインディペンデントな音楽」ってものに対して、今までふれたことがなかったという感想が大きい。日本の某大手メジャーレーベルや、

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    それは西洋のまがいものではなく

    それは西洋のまがいものではなく

    ロンドン出張の終盤、とびきり背伸びをして『The Savoy』に宿泊した。1889年創業、近代ホテル史のはじまりと言われる、元祖ラグジュアリーホテル。

    テムズ川のほとりに優雅に佇むこの歴史的建造物は、チャップリンやマリリン・モンローのような世界的エンターテイナー、エリザベス女王やウィストン・チャーチルなどの王族・財政界からも永く愛され続けてきた、まさに世界を代表するホテルだ。

    身の丈に合っ

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