禍話リライト「お手玉の子」

 (この話)全然、怖くもなんともねえから。

 かぁなっき氏が、「俺(かぁなっき氏)と同い年ぐらい」で長崎県在住のRさんから聞いた、彼が子供の頃に体験した出来事である。

 非常に短いながらも前提状況が少々特殊な話なので、昭和と平成の合間、今より非常に緩い時代に起きた出来事である、ということを前以て記しておく。

・・・

 Rさんが住んでいた家の庭は近辺の住宅のそれよりも若干広く、そのせいで近所の子供が勝手に入ってきて遊んでいることが多々あった。
 しかしRさん一家は非常におおらかな性格だったため、これも一種のご近所付き合いになるだろう…という理由で、子供たちが庭で勝手に遊ぶのを基本的に許容していた。
 そのため、見知らぬ子供たちが庭で遊んでいるのを見かけても、一家全員「あ~また子供が遊んでるなあ。まあ、いっか」と軽く流していたという。

 ただ、この緩い方針のせい…かどうかはわからないが、Rさんは一度だけ、とても怖い体験をしたことがあるそうだ。

 ある日の夜。
 Rさんは不意に目を覚ました。
 …トイレに行きたい。
 ぼんやりとした頭で時計を見て時刻を確認する。だいたい二十三時頃だった、という。

 ふらついた足取りで部屋を出る。
 トイレに向かいがてら、何気なく窓の外に広がる庭を見やる。
 誰かが立っている。

(ん?)
 先ほど部屋で確認した時刻が脳裏に過ぎり、寝ぼけていた頭が一瞬で冴えた。
(こんな真夜中に…誰だ?)

 この家の庭には近所の子供たちがよく遊びに来る。だから、この近所にいる子供の顔はだいたい把握している。その筈なのだが―

 目の焦点が合ってくる。

 全く見覚えのない知らない子供が、真っ暗な庭で一人でお手玉をしているのが、はっきりと見えた。

 普段どんな遊びをしている奴でも緩く許容していたRさんも流石にこれには恐れ戦き、慌てて親を起こしに行った。
 しかし、親を連れて戻ってきた時には、くだんの子供はもう既にいなくなっていたという。

・・・

「…いやあ、流石にあれはヤバかったね。それにさあ、あとで気付いたんだけど、うちの庭、電灯なんてなかったのよ」
「電灯?」
「そ。当時のうちの庭、電灯というか…ライトなんてないから、夜は真っ暗でなんにも見えないはずなの。だけど俺、そいつが持ってたお手玉が青色だったのをすっごい鮮明に覚えてるんだよね。それがめっちゃ怖くてさあ…」

 Rさんは最後にそう言い添えて話を結んだという。

加藤よしき「それ普通に怖い話じゃないですか(怒)」


◇この文章は猟奇ユニット・FEAR飯のツイキャス放送「禍話」にて語られた怪談に、筆者独自の編集や聞き取りからの解釈に基づいた補完表現、及び構成を加えて文章化したものです。
語り手:かぁなっき
聞き手:加藤よしき
出典:"THE禍話 第7夜"(https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/565369093)より
禍話 公式twitter https://twitter.com/magabanasi

☆高橋知秋の執筆した禍話リライトの二次使用についてはこちらの記事をご参照ください。