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グローバル・ヒストリーについて

グローバル・ヒストリーということが近年いろんな方面で注目されている。
これは歴史を従来よりもっと広く柔軟な視点から考えるもの。
例えば、日本の歴史教育で言えば、長く日本史と世界史で分けて教えられてきたが、日本史は多くの変化を国内の事象から説明する傾向が強い。これは多くの弊害が指摘されている。
例えば信長が戦国末期大きく飛躍した背景には鉄砲の導入があったが、鉄砲の生産だけでなく火薬の生産には原料の硝石が必要だ。当時国内では十分取れず、フィリピンを抑えていたスペイン帝国からの輸入に頼っていた。多量な硝石を輸入しようとすれば、西欧諸国と仲良くするが必要がある。
信長が南蛮人やキリシタンに接近した背景にはこうした事情がある。別に信長は異人が好きだとか、新しもの好きだからキリシタンを優遇した訳ではない。
硝石に限らず、戦国末期には、スペイン帝国など西欧諸国との交流が国内の帰趨を決める大きな影響があったことがわかっている。大坂冬の陣の英国製の大砲も休戦に大きく影響したが、異国との交流が大きく関わった事例だ。
これらのことは、ヨーロッパの宣教師の文書などの研究が進んだ成果だ。
一方、もう一つの歴史教育、世界史だが、これは古代の4大文明を別にすれば、その後はほぼ西ヨーロッパの歴史が中心で時々アジアやアメリカがでてくるだけだ。これを西欧中心主義という。
このような一国内に閉じた歴史や西欧中心主義を乗り超えて歴史を語るのがグローバル・ヒストリーということだろう。
民主主義の始まりは一般にフランスや英国からと言われてきたが実はそうではなくて、当時植民地だったアメリカと西欧諸国の交流から選挙とか民主主義が生まれたという仮説がある。
実際民主主義がヨーロッパで始まったのは新大陸と交流ある港町からだったという事実がある。
これを唱えたのは、デヴィット・グレーバーというアナーキストの学者だが。少し前に記事にあげた話だが。
本書はグローバル・ヒストリーを紹介しつつ、論点を検討する本だ。

グローバル・ヒストリー セバスティアン・コンラート

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