She's Always in My Hairの感想
THURSDAY, DECEMBER 29, 1983
Duane Tudahl “PRINCE AND THE PURPLE RAIN ERA STUDIO SESSIONS”
Sex Shooter
「She’s Always in My Hair」に使われている「Sex Shooter」のパーツについて確認。Tudahl さんの本でも触れられています。
シャシャシャシャという上って下りる音階の繰り返し
| × チャチャ チャー チャ | チャチャ チャー チャ × | のキーボードフレーズ
「She’s Always in My Hair」では、1. は上り下りのサイクルが短くなりますが、ずっとなっています。2. は、2小節フレーズのうち1小節目だけが短く入ります。特に、2. は、繰り返さないだけで全く別物になります。「Sex Shooter」のフレーズだとぜんぜん気づきませんでしたが、言われるとどちらも確かに入っています。
「Sex Shooter」は、この時期のプリンス作品の中で比べると、ランキングは少し低めです(独断)。少なくとも、アルバム『Apollonia 6』に入れる構想もあったのに結局は別のアルバムに持って行かれた「The Glamorous Life 」「Manic Monday」「Take Me With U」と比べてしまうと、ヒット要素では負けてます。
ただ、ランキングでは振るわなくとも「Sex Shooter」は、映画『パープル・レイン』で非常に重要な曲なのだと、最近やっと分かりました。劇中、この曲は、アポロニアを売り出すためにモーリスがプロデュースする曲で、演奏もThe Time ということになります。
倉庫でブレンダとスーザンがダンスの練習をするシーンでは、The Time が演奏しています。モーリスと演技をするために演奏から抜けているジェロームに代わり、ジェシーがギターを持ったままパーカッションを担当して演奏をまとめている様子がときどき映り、映画の中だけではなく実際にもそういう役割だったのではないかと想像してしまいます。ジェロームはモーリスと話しながらもランプ・カバーのふさをパシッと叩いてパーカッショニストとしてアピールしています。
この場面(や The Taste)で Apolloni 6 が歌う曲という設定に完璧にはまるように作ったのが「Sex Shooter」という曲だったのだと感じます。プリンスの曲ではなく、完璧に The Time の曲になっています。
Vanity 6 の「Sex Shooter」もYouTubeで聴きました。Vanity 6 の2枚目のアルバムのためにこの曲を最初に録音したのは1983年4月30日ですが、ヴァニティのヴォーカルを録音したのは、後日とのこと。1. のシャシャシャはありますが、2.とは異なるメロディーが入り、少しドラムの音も違っているようで、ヴァニティに合うアレンジだと感じます。歌詞はおおかた同じで、後半に8つ数えて、という掛け合いが入るのが、Apollonia 6 ヴァージョンにはない箇所です。アレンジが完全にヴァニティのイメージになっています。アポロニアの振り付けの中にも銃を構える動作がありますが、ヴァニティの銃は破壊力が段違いにあります。
1982年から1983年の Vanity 6、The Time、そしてプリンスが行ったツアーはトリプル・スレット・ツアー(Triple Threat Tour/3つの脅威のツアー)というものだったということを、WDPDTW読書会で叩き込まれました。1999ツアー(公式にはこちら)じゃないんです。3つのグループがお互いに競っていたということを、Vanity 6 の「Sex Shooter」を聴いたときにすごく思い出しました。アポロニアは、プリンスに力を貸してくれる?と素直に言えますし、モーリスの絶大なる健全な下心を嫌味なく良い意味でうまく利用できるキャラでした。寅さんのマドンナみたいです。ヴァニティが映画に出ていたら、こういうストーリーにはならなかったしょう。Vanity 6 はThe Time、プリンスと張り合う存在でしたから。わずかなアレンジの違いだと思うのですが、こうも曲のイメージが変わるのは、プリンスがすごいのでしょうか。それとも意外と簡単にできることなのでしょうか。アレンジのすごさというのは簡単には分からないのですが、映画『Purple Rain』の中の「Sex Shooter」のアレンジは、きっと最高なのだと思います。そういうところの完成度は映画のヒットに貢献するものじゃないのでしょうか(たぶん)。
アルバム『Originals』に入っている「Sex Shooter」は、アポロニア用に作られたものなのか、2. のメロディーになっています。いつの録音だったのでしょう。アポロニアのヴォーカルを録ったのが1983年の10月中頃のようなので、それに近かったのでしょうか。
映画撮影開始の直前でヴァニティが去り、プリンスは公私ともに大打撃だったはずですが、アポロニアというヴァニティとはまったく違う魅力を持つ代役がやってきて、映画のストーリーも変わり、曲も変わっていくとてもダイナミックな状況だったと思います。そんな中、大変身したのが「Sex Shooter」だと考えると、どんな状況でもプリンスは音楽を大事にしていたんだろうと感じます。封印したり、完全に捨てた(テープの録音を消した)曲もあったようですが、「Sex Shooter」は大事に作り直して完成させました。
そういえば、Tudahl さんの本に書かれたヴァニティとの別れの場面は、喧嘩して別れたという話ではなかったのですよね。正確には、ヴァニティがミネアポリスを発つ前に最後にプリンスと会ったときのことが書かれていましたが、少なくともそのときに喧嘩していたという話ではありませんでした。喧嘩もしたでしょうが、最後は笑って泣いて別れたでしょうか。
前にnoteにメモしたものがありました。
もしかすると、プリンスとヴァニティの別れは、お互いの道を進みましょうと納得した発展的な別れだったのでしょうか。ヴァニティ色の強い「Sex Shooter」を原曲の要素も残しつつ見事に Apollonia 6 の曲として仕上げていたプリンスは、心の中では優しくヴァニティのことを思いながら自分の大仕事をがんばっていたのだろうかと、また妄想してしまいます。
She’s Always in My Hair
サンセット・サウンドの YouTube にアップされた「She’s Always in My Hair」は、1983年12月29日にベーシックトラッキングされた時のものということらしいです。
スタジオの Work Order(作業票)も丹念に調べて書かれた Tudahl 本によると、プリンスの作業は午後6時30分から午前4時00分まで。トラック・タイトルは「Sex Shooter」になっていますが、実際は「She’s Always in My Hair」。
年が明けた1984年1月8日にオーバーダビングされたものが、12インチシングルのB面のNex Mix。シングルは持っていないので、『Ultimate』で聴きました。『Ultimate』ありがたいです。
はせともさん解説でもあったNew Mixに加えられた音ではドドドドが大好きです。マラカス風は自分では見つけられませんでしたが、分かりました!
ほかに、YAMAHA DX7 の「Gotcha」というプリセットが使われたことが GuitarCloud というサイトに書かれていました。
New Mixやエディットでもイントロ2、3秒のところで入るギューイーーン・ギュインギュインです。
She’s Always in My Hair の歌詞
読書会では、手書き歌詞を見ながら、プリンスが歌詞を推敲して変えていった内容を確認しました。普段、読書会主催の De Angela さんは、歌詞にはあまり踏み込まないのですが、今回は珍しくどんな書き換えがあったのかをじっくり見ていきました。
歌詞は、Le Parc ホテルの便箋に書かれています。ジルが怒った「結婚するかも、しないかも」の部分も大幅に変更されていました。Verse 3 にとくに注目でした。消された歌詞と比べながら、読書会常連の C. Leigh さんによる解説も入りました。非常に簡単にまとめてしまうと、この人(歌っている人)は、結婚にあまり価値を見出していないので、結婚なんてしなくていいと思っている。でもジルは、自分との結婚を真剣に考えてくれないひどい歌詞ととらえて怒った、という解釈でした。
私も当時、なんとなくしかプリンスを聴いていませんでしたが、プリンスは結婚しない人だろうと勝手に想像していました。
ジルとの関係は、もっといろいろあるのでしょう。はせともさんの note の続きでジルについて読むのが楽しみです。
3rdEyeGirl とのライブ
サンセット・サウンドがデモヴァージョンを公開する少し前に、私はこのツイートに心奪われていました。むちゃくちゃいいタイミングであげてくださったとーますさん、ありがとうございます。
New Mix バージョンでは、シンセの音が重なって、ミックスでたぶん音量を下げて埋もれてしまったベースが 3rdEyeGirl のライブでは常に前面に出てきます。デモヴァージョンではシンセとぶつかって汚くさえ聴こえていたベースを、イダががっつり弾いて復活させたように感じました。あと、New Mix のイントロのDX 7のギュイーンギュインギュインのシンセ音は、プリンスが最高にかっこよくギターでギュインギュインします。シャシャシャシャ音階のシンセ音がなくなり、ハンナのドラムが華麗に鳴っています。
このライブもよかったです。途中でプリンスは他の音を抑えて、ベースのグルーヴを聴いて、と言うところがあって、それはもう聴き入ってしまいます。
モントルーもありますし、3rdEyeGirl との「She’s Always in My Hair」はしばらくじっくり聴きたいです。最高に大好きです。
その他、消えたシンセの音(の一部)は、後半でフーフーとファルセット的に歌っている声になっているなと思ってます。80年代には最高に心地よかったシンセ音が、10年代には最高に心地よいフーフーになり、進化が止まりません。文章にならなくなりましたのでメモと感想おしまいです。
No computers here. Real Music by Real Musicians.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?